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お客様事例

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金融機関との直接やりとりをして頂いて
ありがたかったです。

佐々木洋輔様

北海道浦幌町にて2020年まで和牛繁殖農家をやって来られた佐々木洋輔様。ご縁があり牧場をM&Aで譲り渡しましたが、2021年からはTAPの一員として農業コンサルティングやM&A支援の分野で活躍をしております。 10年以上、TAPのお客様としてお付き合いをさせていただいた中での、ご自身の経験やTAPへのお話を代表社員の内田勇介がインタビューしました。

和牛繫殖農家のはじまりと安愚楽牧場の破たん

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    佐々木さんは札幌のご出身ですが、そこから十勝浦幌町の和牛繁殖農家さんのお仕事をはじめられたきっかけを教えてください。

  • case-man

    妻の実家が安愚楽牧場の預託農家さんをやっていた関係で、まずはそこに従業員として入ることになりました。そして、安愚楽牧場さんが倒産をしたために、結果的にそれらの牛も自分自身が引き継いだという流れがあります。実は、もともと事業承継するつもりはなく将来的には独立してやってほしいというお話でした。

  • case-man

    なるほど、最初は完全にお義父さん牧場から分離をして独立できれば、というお話だったのですね。しかし、それが2010年の安愚楽牧場さんの倒産から、お義父さんの牛も引き継いで個人事業を開始するという流れになりましたね。

  • case-man

    そうですね、いったん2010年10月に独立をして自分名義の牧場を新たに作ったのですが、2011年8月、私が28歳の時に安愚楽牧場が破たんをしたのです。その段階で収入預託料が入って来なくなったので、手元の牛が自分名義となりました。そこから安愚楽牧場さんに破産管財人が付き、同年12月まで預託料をもらっており、その時点で義父の牛も引き継ぐことになりました。

  • case-man

    なるほど、収入の頼りであった安愚楽牧場さんの破たんというのは、大きな出来事でしたね。その当時の佐々木さんの御気持ちはどのような感じだったでしょうか。

  • case-man

    やはり大変な状況だったので、その時は牧場をやめようと思っておりました。そのため、とにかく手元の牛をどんどん売っておりました。2010年10月の独立時に2000万円で牛舎も借金で建てていたため、自己破産も念頭にありましたね。

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自己破産を考えた所からの出発

  • case-man

    私もその時に関与をさせて頂いておりましたが、自己破産まで考えていたというのは初耳でした。そこからご自身の牧場を優良かつ大きくされていったわけですが、どのような転機があったのでしょうか。

  • case-man

    転機としましては、当時に一日も早く牛を売りたかったので他牧場にS畜産(別海)に売却をお願いしてお話しましたところ、哺育牛舎を見てもらったところ、二か月哺育後の牛を買ってくれる牧場(HM牧場)を見つけてくれたことがきっかけで、その運転資金が必要ということで、金融機関に交渉をしはじめました。決算書が一期分も無かったため、また若いという年齢と、実績も無いため、厳しい局面がありました。

  • case-man

    その金融機関との交渉の中で、ご自身で事業計画も作成していったのですよね。

  • case-man

    はい、2011年12月頃に預託で受けていた牛を自分名義にしようとするため、金融機関からの借入のための計画作成と交渉をはじめて、計4行からの借入が2012年2月頃に融資を受けられました。
    金融機関との交渉も最初は難航をしていたのですが、その間に4行をまわり、まずは公庫が融資を内諾し、続いて3行が内諾を頂きました。

  • case-man

    牛を買ってくれるという事になっていたHM牧場さんとのお話もうまく進んだのでしょうか。

  • case-man

    当初の一年は黒毛和牛にもかかわらず安愚楽牧場の血統が入っていると1頭10万円程でしか買ってもらえない約束で(現在では40万円程で売れている)、当初の一年は相当厳しかったですね。
    2年目以降に牛もよくなり、和牛子牛の相場も上がり、年々利益が出るようになりました。HM牧場さんには6年ほど初生牛を売っていきましたが、転機がおとずれ、素牛販売に少しずつ切り替えることになり、2014年が資金繰り的に厳しい中、2015年に利益が出るようになっていきました。そして、2016年2017年で完全な素牛販売に切り替えられました。

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飛躍のための牛の入れ替えと従業員雇用

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    ここで軌道に乗ってきたと思いますが、さらに投資をすすめ飛躍をされましたね。何か心の変化があったのでしょうか。

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    はい、初生売上は実質的な個人販売であり、いつ無くなってしまうのか分からない不安があったため、大きな投資をし、利益も出るようになりました。 安愚楽牧場の血統の入った繁殖牛の更新入れ替えは遅れていたという感覚がありましたが、年間40頭の外部購入と自家生産で更新をしていきました。 繁殖母牛の更新入れ替えはとても大切なものですが、最初は血統にこだわらず安くて若い牛を買えていきましたが、その中でも年間4,5頭は宮崎などで良い血統を買っていき、従業員を雇い、その牛から受精卵移植を2017年頃から良い血統の卵を広げていきました。

  • case-man

    この頃に従業員さんを雇えたことが大きかったと以前もお話をされていましたね。最初に従業員さんが来てくれるために、いろいろと動かれたのですよね。

  • case-man

    そうですね、従業員に入社してもらえるように、何回か声を掛けました。その後の人材育成という面では、基本的に会社負担で色々な資格を取ってもらったという点と、一般的な牧場の従業員より高めの給与にした点が良かったと思います。自分が嫌だったのは、ボーナスなどにすると査定などがあり、ボーナス時期に経営状況が考慮されるのでケチるのが嫌で年俸制にしておりました。

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牛の管理簿とTAP

  • case-man

    従業員さんについて給与面を含めてご配慮をされていたのですね。経営を良くしていくために管理面で工夫をしていた点について教えてください。

  • case-man

    最も大切にしていたのは、牛の管理簿です。それには私が作成したオリジナルの管理簿があり、こちらにすべての牛を記録し、安愚楽牧場の牧場状況表を参考に繁殖管理表(一目で空胎の日数や種付けをしていない牛が一目でわかり、繁殖検診に進める。分娩表から分娩の共有をできた。)を作成しました。その後に素牛をはじめるようになり、育成牛管理表(ワクチンプログラムにてワクチンの遅れが無いようにできる。)を作成しました。

  • case-man

    こちらの管理簿が金融機関からの借入に役立ったというのは本当ですか。

  • case-man

    はい、大きな投資をしたり増頭を掛けていく中で、気持ちのよりどころになりましたし、いつ何頭の出荷ができるかなどが「見える化」できたのが大きかったです。産まれた後の事故率は3%程度と相当低く、良い育成が出来たと思います。
    ご縁があって牧場を引き継いでもらう時も、価格算定等にも管理簿がとても役に立ちました。

  • case-man

    良い形で事業売却(M&A)が出来たことに、こちらの管理簿が役立っていたのですね。最後に弊社税理士法人TAPについてのコメントもお願いしても宜しいでしょうか。。

  • case-man

    税理士法人TAPさんは貸借対照表を作って頂き、何回か融資を受けるときにTAPさんの信頼があったおかげもあり、また金融機関との直接やりとりをして頂いてありがたかったです。

  • case-man

    どうもありがとうございます。今後、農業コンサルタントやM&Aの経験者としての展望をお教え頂きましても宜しいでしょうか。

  • case-man

    これまでの経験も踏まえて今感じるのは、融資を受けるときに繁殖管理簿(頭数)と育成管理簿(出荷予定)と貸借対照表があれば、計画が無くても借り入れがすんなりできた、ということです。融資を受けるとき、大規模化をするときにとても説得力があるため、この3点が必須だと思います。今後、この管理簿の良さであったり、事業計画の作成の支援をしていくことに尽力をしてまいりたいと思います。

  • case-man

    今までの経験をもとに、是非とも北海道内の和牛繁殖を中心とした農家さんをサポートしていって頂きたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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