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レビュー『渋沢栄一 君は何のために「働く」のか』
『渋沢栄一 君は何のために「働く」のか』三笠書房 竹内均
今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公-渋沢栄一の言葉として、昭和5年に出版された『渋沢栄一全集』を現代語訳にて出版されたもの。
第一章「何のために、どう働くのか」
・『論語』の中にあるように、「内に省みてやましからずんば、それ何をか憂い何をかおそれんや」との教訓に従い、責任を重んじ、誠心誠意をもってことに当たれば、たとえ失敗をしても良心が咎めたりせず、そのために信用を失うようなこともない。
・いつも社会の進歩に遅れないように智力を磨き、勤勉努力し、人格を高潔に保ち、修養の工夫を怠らず、それによって世の中の役に立つ人物となっていくという心がけが必要。
・中庸を得るとすべてが面白いほどスムーズにいく道が見える。何によらず偏るというのはいけない。悲観、楽観を超越したところに自分の進むべき道はあるはずである。
第二章「どんな仕事でも成功でできる7つの心得」
・入社一年目の心構え。そもそも社会人として仕事をするうえでは何事も実地の経験が第一であり、学校で学んだことはすぐには役立たない。したがって、この世界で重要な地位を占めるようになるまでには、多年の経験と忍耐を要するということを覚悟しなければならない。
・健康でなくてはならない。体が弱く元気の足りない人は、自然と勇気も乏しくなり、活動も鈍っていくからである。
・7つの心得①実直であること②勤勉精励であること③着実であること④スピーディーであること⑤温厚であること⑥規律を重んじること⑦忍耐力があること。
第三章「どんどん仕事が面白くなる 人間関係の育て方」
・部下や協力者にはどんな態度で接するか。広く愛し、厚く労をねぎらい、相手を自分の親戚や子弟のように遇し、道理を説いて心から自分の仕事に打ち込ませる。全員が力一杯働けるように心がけさせること。
・物事はあまり清くてもいけない。水清ければ魚が棲まないようなものであり、事に当たって自ら責任をもってやるのはいいが、それが厳格すぎてもまずいし、と言ってもあまり穏やかにすぎてもしまりがなくなるから、そのへんを良く考えなくてはいけない。
・世代の違いを超えて先輩後輩がうまくやっていくには、人道を重んじ年上と年下の序列を忘れず、自分の仕事を誠心誠意はたしてこそ、円満平和に暮らしていける。その結果、先輩はいくぶんかずつ後輩に劣るようになりたい(親より立派な子が育つ)ものである。
第四章「一流の仕事をする人の、創造的日常生活」
・生活はいかにも大切ではあるけれども、自分の生活のためにだけ働いてもいられない。どんな人でも自分一人dえ世渡りはできないので、自分の事を考えると共に、他人の身の上にも気を配らなければならない。
・相手と自分の間に壁と作らず、話すだけは十分に話し、聞くところも十分に聞いて、お互いの間に誤解の無いように努めている。
・儒教では、自分の身を修めることのできる者は家をととのえる力があり、家をととのえられる者は国家を治めるだけの知能があり、国家を治められる者はさらに天下も平らげられる、と説いている。
第五章「自分をランクアップさせるための修養」
・最後に必ず物を言うのは「忍耐」。孔子も「怒る心の生じるときは、艱難をもって(試練であると受けとめて)忍耐せよ」と言っているが、人間は己を捨て、我を通さないようにしなければならない。
・元来人間は裸で生まれてきたのだから、いつも無私を心がければけっして不満足のあるはずがない。私は絶えずこの心境を忘れないように修養を心がけた。
・自我に固執しないことを心がけていれば、つねに正しい道理のうえに立って物事を判断することができ、忍耐の習慣を身につけるられるようになる。
- 内田
- 2021年7月31日
- 本
- 0
レビュー『MBAマーケティング 必読書50冊を1冊にまとめてみた』後半
『MBAマーケティング 必読書50冊を1冊にまとめてみた』 永井孝尚 KADOKAWA
税理士法人TAPのスタッフに薦められて読んでみました。
50冊の後半から何冊か抜粋して書いていこうかと思います。(2週間前の前半の続きです。)
〇第4章 マーケティング・コミュニケーション
「「売る」広告』(海と月社)デヴィッド・オグルヴィ
「広告の父」と称されるオグルヴィが歯に衣を着せずに広告の本質を語る一冊。
「結果にコミットする、RIZAP」という広告は、効能を約束している。このような約束ができない広告ではモノは売れない。
広告の基本は商品サービスの良い点を、事実に基づき説得力のある形で説明し、違いをクッキリ際立たせること(=ポジショニング)
そして、ブランドイメージを与え続け、繰り返すことで、世間で認知され続けることが大切である。
広告では自画自賛ではなく誰かの推薦が良く、ヘッドラインで売り込み、イラストよりも写真が信頼性があり人を惹きつける。
『ブランドは広告ではつくれない』(翔泳社)アル・ライズ
最強の強いブランドは広告ではなく、PR(パブリックリレーション)という、新聞・テレビなどのメディアを通じて第三者情報により消費者を信頼させるケースが多い。
現代は広告に大金をかけても強いブランドをつくれなくなった。
ZARAは年2回のセールを除き広告を使わない。ファッション業界で初めてトヨタと同じJIT方式を導入し廃棄ロスも削減したことがマスコミに報道され、来店客を増やした。
ただメディアに紹介されて喜んではダメで、「この会社が1番」と認める内容であることが必要。
『費用対効果が23%アップする 刺さる広告』(ダイヤモンド社)レックス・ブリッグス
米国では年間広告費30兆円のうち11兆円が無駄と言われている。
本書はその無駄を撲滅し、消費者に刺さる広告をつくる方法を教えてくれる。
広告はアートではなく、カイゼンでなくてはならない。
トヨタ自動車の生産現場では、1円以下のムダも許さず、カイゼンを徹底する。広告でやるべきことも同じだ。
チームで目標を共有して、顧客を理解し、テストで広告効果を検証すべきである。
〇第5章 チャネルと販売
『カスタマーサクセス』(英治出版)ニック・メータ
顧客離反防止の具体的な方法が本書で紹介するカスタマーサクセス。
セールスフォース社は「顧客が成果をあげるのを全力で支援しない限り、自社の未来はない」と身をもって学び、カスタマーサクセスの仕組みを創り出した。
ユーザーにサービスをもっと使ってもらって成果が出るように、高級旅館の中居さんのようにあの手この手でこと細かに世話を焼き面倒を見る。
サービスを使い倒すユーザーが少しずつ増えていけば、売上も次第に増えていく。
ダメなサブスクは、販売後の顧客は放置し、その結果、顧客は解約する。まさにザルから水が漏れた状態で、顧客が次々解約していることも知らずに新規顧客獲得に没頭する。
カスタマーサクセスは売った時がはじまりで、徹底的に顧客の面倒を見て、使い続けてもらうことに集中する。
営業部門⇒「売って売って売りまくる」という考え方から、「長期的に成功できる顧客生涯価値が高い顧客に売る」という考え方へ進化する。
製造部門⇒「競合に勝つ製品を開発しよう」という考え方から、「相談しやすさを追求し、既存顧客の維持を最優先にしよう」という考え方へ進化する。
サービス部門⇒「顧客が契約したらサービスを提供する」という考え方から、「顧客の問題解決を迅速化し、次の契約更新を実現しよう」という考え方に進化すべき
『サブクリプション』(ダイヤモンド社)ティエン・ツォ
既存事業を、顧客と直接つながる「サブスク化」は企業経営を劇的に変える。
サブスクとは、顧客が購入し続ける長期的な関係をつくるビジネスモデルのことで、最近のITの進化で個々の顧客ごとに最適化できるようになった。
アップルは時間を掛けてサブスク化をしており、クラウドやアプリ販売のサブスク売上を8年間で4倍(2020年売上5兆円)にした。
サブスクを成功させるには、①顧客にどうしても使いたいと思わせる顧客体験・利便性・お得感を提供すること②顧客体験を高め続けること③収益化により継続できること にある。
『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』(海と月社)ニール・ラッカム
BtoB営業には、小型商談と大型商談があり、両社の売り方は、まったく違う。
小型商談は少額なので損しても許容範囲だが、大型商談は複数名が関り商談が何カ月も続き顧客の課題解決が必要で下手な押しは出禁につながる。
特に大型商談は、SPIN質問①状況質問(Situation)②問題質問(Problem)③示唆質問(Inplication)④解決質(Need-Payoff)のうち、③により潜在ニーズを顕在ニーズに育てることが大切である。
示唆質問により、潜在ニーズがもつ問題の深刻さに焦点を当てながら、価値の方程式で解決コストと問題の深刻さのバランスをイメージしながら、他の関連する質問が無いか考えながら質問していくとよい。
〇第6章 市場と顧客
『大本営参謀の情報戦記』(文藝春秋)堀栄三
旧日本軍の情報戦の実態を、大本営情報参謀だった著者が明かし、日本の敗因は決定的な情報力の差にあり、それは現代日本企業にも引き継がれている。
「大戦中」ドイツやアメリカに対する国力判断の誤り⇒「現代ビジネス」日本の技術者は顧客に会わない者が多く、顧客から貪欲に学ぶアジアの新興メーカーに負け続けている。
「大戦中」日本は制空権を軽んじ、アメリカは上を見上げ「あの空を取らなければこの海はとれない」と考えた。⇒「現代ビジネス」日本はIT戦略を軽んじ、ITを作業効率化や情報収集手段くらいにしか捉えておらず、仕組み連動テクノロジーとしてとらえたGAFAなどに負け続けている。
「大戦中」日本軍は国家全体で情報を分析する体制がなかった。⇒「現代ビジネス」不祥事でトップが知らなかったと謝罪会見を開くのは見慣れた光景。全社で情報共有する仕組みと企業文化が必要。
「大戦中」著者が現地からの情報は信用できないと電報を打ったが無視された⇒会社の中で数字が改ざんされていき、都合の悪い事実を無視し隠ぺいする姿勢が変わらない。事実から逃げず、事実に基づいて考え抜くべきだ。
『思考 日本企業再生のためのビジネス認識論』(学研プラス)井関利明
GAFAに見られるような、各単体技術をつないで連動させる仕組み連動テクノロジーが重要。
仕組み連動テクノロジーが未熟な日本はビジネス面でも大きく遅れている。
イーロン・マスク率いるテスラは、車をネット経由でアップデートでき、グーグルは検索・Gmail・マップ・カレンダーが相互連動し、アマゾンは買い物・電子書籍・ビデオを連動させている。
アメリカのアポロ計画のように「1つのミッション=月に人を立たせる」成功のために既存の仕組みを連動させ、全体最適を実現する発想が日本では欠落している。
イノベーションを起こしてくれる新しい時代に担い手は次の三者、
若者たち⇒デジタルネイティブ。関係づくりに長けている。
女性たち⇒右脳思考にすぐれ、男性を操るマネジメント能力にも高い。
外国人たち⇒彼らが組織にダイバーシティ(多様性)をもたらし、イノベーションの源泉になる。
『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)ジェレミー・リフキン
限界費用とは、生産量を1単位増やした際の費用増加分のことだが、いまさまざまな世界で、この限界費用がゼロに近づいている。
例えば、ウェブサイトを立ち上げた場合、サイト制作と運営には費用が掛かるが、サイトのユーザー数が少々増えても費用はほとんど変わらない。
Youtubeは2005年にピザ販売店の2階にある小さなオフィスで創業したが回線コストが金食い虫で収益化のメドが立っていなかったが、翌年2006年にグーグルは1,700億円で買収。いまやグーグルの限界費用ゼロの収益源となっている。
今後、再生可能エネルギーや自動運転、テレワークフリーランスなども限界費用ゼロ社会を拡げていく可能性がある。
- 内田
- 2021年7月17日
- 本
- 0
レビュー『MBAマーケティング 必読書50冊を1冊にまとめてみた』前半
『MBAマーケティング 必読書50冊を1冊にまとめてみた』 永井孝尚 KADOKAWA
税理士法人TAPのスタッフに薦められて読んでみました。
50冊の前半から何冊か抜粋して書いていこうかと思います。(2週間後に後半のレビューも書かせて頂きます。)
〇第1章戦略
『T・レビット マーケティング論』(ダイヤモンド社)セオドア・レビット
あらゆる商品は必ず陳腐化する。
現在低迷する百貨店・アパレル・家電も、登場時は成長産業だった。
実は30年前から「コンビニ市場は、飽和した」と言われ続けてきたが、小売業に甘んじずに、公共料金支払・宅配便・ATM設置・おでん、など顧客ニーズを考え続けて、顧客を創り出し満足させてきたことで努力で成長し続けてきている。
『ポジショニング戦略』(海と月社)アル・ライズ
スターバックスは消費者の脳内に「自宅でも仕事場でもない、第三の場所」というポジションを築いて成功した。
相手の脳内に一番乗りすれば、ポジションは確保できる。
二番手企業は「リーダー企業よりも高品質の類似品を出せばいい」と考えるが、失敗する。
ルンバは過半のシェア。消費者は「お掃除ロボット=ルンバ」と刷り込まれており、他者は勝てないのだ。
『両利きの経営』(東洋経済新報社)チャールズ・Aオライリー
長い歴史の中で、新規事業に転身し続けて成長してきた老舗企業は多く、明治初期創業の任天堂は花札を製造していたし、1911年創業のIBMは肉秤を製造していた。
しかし新規事業と既存事業ではやり方が異なる。イノベーションのための新規事業では未知の分野への「探索」が必要で、既存事業では効率を追求して組織能力を活用する「深化」が必要だ。
老舗企業には、探索と深化を両立する「両利きの経営」ができるリーダーがいたのだ。
組織の理解⇒探索と深化が必要と意図を明確にし、新規事業を保護し、共通のビジョン文化を創る。
リーダーシップ⇒感情に訴え情熱的に語り還付も巻き込む。誰が緊張関係に臨み、二枚舌的に動く。
〇第2章ブランドと価格
『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)ジョン・ムーア
スタバはコーヒー豆の品質を追求し、「どこにでもある一杯のコーヒー」を「他にないもの」にした。
スタバはブランドマネジメント=評判管理と考え、「口コミが最大の広告」と考え、誠実にお客さんに接し続け、約束したことを常に実行し続けいい評判を作り続けた。
スタバは値下げしない、だからこそ顧客体験に注力できる。
『戦略的ブランド・マネジメント』(東急エージェンシー)ケビン・レーン・ケラー
ブランド・エクイティー(=消費者に与える目には見えない価値)を生み出すには、顧客の脳内にブランドに対する良い感情を時間と労力をかけてつくり、顧客の理性と感情の両方に働きかけることだ。
消費者が他ブランドと異なることと分かるための特徴を携え、性能や機能で消費者ニーズを満たしながら差別化し、一流のものだと印象付けることが大切である。
『ザ・プロフィット』(ダイヤモンド社)エイドリアン・スライウォツキー
経営に関する世界の6賢人に選出されたスライウォツキーの著書でいくつかの利益モデルを紹介している。
スイッチボード利益モデル⇒あたかも電話交換機(スイッチボード)が電話を掛ける人と受ける人をつなげるように、ニーズがある人と仕事を求める人をつなげるモデル。
取引規模利益モデル⇒いったん関わった顧客との関係を絶やさず継続的に価値のある情報を提供し続け、顧客の要望に応え続け、徐々に顧客の信頼を獲得し、新しい案件を任されるようになる。
〇第3章サービス・マーケティング
『真実の瞬間』(ダイヤモンド社)ヤン・カールソン
価値(顧客が心を射止められる瞬間=真実の瞬間)を創り出すのは最前線の従業員であり、従業員が楽しくレベルアップできなくてはならない。
従業員に満足した顧客を生み出すためのビジョンを伝えた上で、責任と権限を徹底的に委譲する。
そして、中間管理職には現場の管理ではなく、現場のサポート(指導・情報伝達・教育)というミッションと情報を与え、能力を最大限発揮してもらう。
『ラブロック&ウィルツのサービス・マーケティング』(ピアソンエデュケーション)ラブロック&ウィルツ
サービス業は形を持たないため、製造業のマーケティングミックス4Pに、4つのPを追加して8Pで考える。
①サービス・プロダクト;競争が激化するとコアサービスが似てくるため、接客などの補完的サービスで差別化を図る。
②場所と時間:Place&Time。顧客の利便性を考えた場所。
③価格とコスト:Price&outlays。サービス提供のための間接費を集計したABC原価計算。
④プロモーションと教育:口コミで顧客に紹介してもらうのが効果的。
⑤サービス・プロセス:Process。申込書記入など顧客に付加価値がない作業は削減し、一部は自動化する。
⑥物理的環境:Physical service environment。スタバが居心地の良い空間を提供しているようにサービス環境も大切。インスタ・音楽・HP・アロマなども重要。
⑦人:People。ライバルも他は真似できても優秀な人材は模倣できないため、高い報酬と研修・権限移譲で従業員の高い満足度から顧客の高い満足度へつなげる。
⑧生産性とサービス品質。Proceutivity&Quality。サービス品質と生産性の両立は難しいものだが、それに取り組み相乗効果を生み出すべきだ。
『顧客体験の教科書』(東洋経済新報社)ジョン・グッドマン
著者は「トラブルを体験し苦情を言わない顧客よりも、苦情を言って解決した顧客の方が再購入率は高い」というグッドマンの法則を提唱した。
顧客からのクレームやトラブルを把握・対応し、顧客に当たり前の解決体験を生む仕組みを作るべきである。
またそのために、グッドマンは次の4つに継続的に取り組むべきだと提唱する。
①顧客に対して誠実で、顧客との最初の接点から最後まで顧客を不快にさせることなく、すぐれた顧客体験を提供する。
②顧客の苦情がないことは良い事ではないため、顧客に「私たちはトラブルについて真剣に知りたい」と伝え続け、苦情を伝えやすい環境を作り、謙虚に学ぶ。
③顧客をさりげなく教育する。例えば、いまは世の中にあるクラウドサービスを使えば、情報を共有することが簡単だということを教育する。
④社内に顧客体験生み出す組織文化を築くため、事例を挙げて従業員に具体的なトレーニングをする。
- 内田
- 2021年7月3日
- 本
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