レビュー『MBAマーケティング 必読書50冊を1冊にまとめてみた』後半
- 内田
- 2021年7月17日
- 本
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『MBAマーケティング 必読書50冊を1冊にまとめてみた』 永井孝尚 KADOKAWA
税理士法人TAPのスタッフに薦められて読んでみました。
50冊の後半から何冊か抜粋して書いていこうかと思います。(2週間前の前半の続きです。)
〇第4章 マーケティング・コミュニケーション
「「売る」広告』(海と月社)デヴィッド・オグルヴィ
「広告の父」と称されるオグルヴィが歯に衣を着せずに広告の本質を語る一冊。
「結果にコミットする、RIZAP」という広告は、効能を約束している。このような約束ができない広告ではモノは売れない。
広告の基本は商品サービスの良い点を、事実に基づき説得力のある形で説明し、違いをクッキリ際立たせること(=ポジショニング)
そして、ブランドイメージを与え続け、繰り返すことで、世間で認知され続けることが大切である。
広告では自画自賛ではなく誰かの推薦が良く、ヘッドラインで売り込み、イラストよりも写真が信頼性があり人を惹きつける。
『ブランドは広告ではつくれない』(翔泳社)アル・ライズ
最強の強いブランドは広告ではなく、PR(パブリックリレーション)という、新聞・テレビなどのメディアを通じて第三者情報により消費者を信頼させるケースが多い。
現代は広告に大金をかけても強いブランドをつくれなくなった。
ZARAは年2回のセールを除き広告を使わない。ファッション業界で初めてトヨタと同じJIT方式を導入し廃棄ロスも削減したことがマスコミに報道され、来店客を増やした。
ただメディアに紹介されて喜んではダメで、「この会社が1番」と認める内容であることが必要。
『費用対効果が23%アップする 刺さる広告』(ダイヤモンド社)レックス・ブリッグス
米国では年間広告費30兆円のうち11兆円が無駄と言われている。
本書はその無駄を撲滅し、消費者に刺さる広告をつくる方法を教えてくれる。
広告はアートではなく、カイゼンでなくてはならない。
トヨタ自動車の生産現場では、1円以下のムダも許さず、カイゼンを徹底する。広告でやるべきことも同じだ。
チームで目標を共有して、顧客を理解し、テストで広告効果を検証すべきである。
〇第5章 チャネルと販売
『カスタマーサクセス』(英治出版)ニック・メータ
顧客離反防止の具体的な方法が本書で紹介するカスタマーサクセス。
セールスフォース社は「顧客が成果をあげるのを全力で支援しない限り、自社の未来はない」と身をもって学び、カスタマーサクセスの仕組みを創り出した。
ユーザーにサービスをもっと使ってもらって成果が出るように、高級旅館の中居さんのようにあの手この手でこと細かに世話を焼き面倒を見る。
サービスを使い倒すユーザーが少しずつ増えていけば、売上も次第に増えていく。
ダメなサブスクは、販売後の顧客は放置し、その結果、顧客は解約する。まさにザルから水が漏れた状態で、顧客が次々解約していることも知らずに新規顧客獲得に没頭する。
カスタマーサクセスは売った時がはじまりで、徹底的に顧客の面倒を見て、使い続けてもらうことに集中する。
営業部門⇒「売って売って売りまくる」という考え方から、「長期的に成功できる顧客生涯価値が高い顧客に売る」という考え方へ進化する。
製造部門⇒「競合に勝つ製品を開発しよう」という考え方から、「相談しやすさを追求し、既存顧客の維持を最優先にしよう」という考え方へ進化する。
サービス部門⇒「顧客が契約したらサービスを提供する」という考え方から、「顧客の問題解決を迅速化し、次の契約更新を実現しよう」という考え方に進化すべき
『サブクリプション』(ダイヤモンド社)ティエン・ツォ
既存事業を、顧客と直接つながる「サブスク化」は企業経営を劇的に変える。
サブスクとは、顧客が購入し続ける長期的な関係をつくるビジネスモデルのことで、最近のITの進化で個々の顧客ごとに最適化できるようになった。
アップルは時間を掛けてサブスク化をしており、クラウドやアプリ販売のサブスク売上を8年間で4倍(2020年売上5兆円)にした。
サブスクを成功させるには、①顧客にどうしても使いたいと思わせる顧客体験・利便性・お得感を提供すること②顧客体験を高め続けること③収益化により継続できること にある。
『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』(海と月社)ニール・ラッカム
BtoB営業には、小型商談と大型商談があり、両社の売り方は、まったく違う。
小型商談は少額なので損しても許容範囲だが、大型商談は複数名が関り商談が何カ月も続き顧客の課題解決が必要で下手な押しは出禁につながる。
特に大型商談は、SPIN質問①状況質問(Situation)②問題質問(Problem)③示唆質問(Inplication)④解決質(Need-Payoff)のうち、③により潜在ニーズを顕在ニーズに育てることが大切である。
示唆質問により、潜在ニーズがもつ問題の深刻さに焦点を当てながら、価値の方程式で解決コストと問題の深刻さのバランスをイメージしながら、他の関連する質問が無いか考えながら質問していくとよい。
〇第6章 市場と顧客
『大本営参謀の情報戦記』(文藝春秋)堀栄三
旧日本軍の情報戦の実態を、大本営情報参謀だった著者が明かし、日本の敗因は決定的な情報力の差にあり、それは現代日本企業にも引き継がれている。
「大戦中」ドイツやアメリカに対する国力判断の誤り⇒「現代ビジネス」日本の技術者は顧客に会わない者が多く、顧客から貪欲に学ぶアジアの新興メーカーに負け続けている。
「大戦中」日本は制空権を軽んじ、アメリカは上を見上げ「あの空を取らなければこの海はとれない」と考えた。⇒「現代ビジネス」日本はIT戦略を軽んじ、ITを作業効率化や情報収集手段くらいにしか捉えておらず、仕組み連動テクノロジーとしてとらえたGAFAなどに負け続けている。
「大戦中」日本軍は国家全体で情報を分析する体制がなかった。⇒「現代ビジネス」不祥事でトップが知らなかったと謝罪会見を開くのは見慣れた光景。全社で情報共有する仕組みと企業文化が必要。
「大戦中」著者が現地からの情報は信用できないと電報を打ったが無視された⇒会社の中で数字が改ざんされていき、都合の悪い事実を無視し隠ぺいする姿勢が変わらない。事実から逃げず、事実に基づいて考え抜くべきだ。
『思考 日本企業再生のためのビジネス認識論』(学研プラス)井関利明
GAFAに見られるような、各単体技術をつないで連動させる仕組み連動テクノロジーが重要。
仕組み連動テクノロジーが未熟な日本はビジネス面でも大きく遅れている。
イーロン・マスク率いるテスラは、車をネット経由でアップデートでき、グーグルは検索・Gmail・マップ・カレンダーが相互連動し、アマゾンは買い物・電子書籍・ビデオを連動させている。
アメリカのアポロ計画のように「1つのミッション=月に人を立たせる」成功のために既存の仕組みを連動させ、全体最適を実現する発想が日本では欠落している。
イノベーションを起こしてくれる新しい時代に担い手は次の三者、
若者たち⇒デジタルネイティブ。関係づくりに長けている。
女性たち⇒右脳思考にすぐれ、男性を操るマネジメント能力にも高い。
外国人たち⇒彼らが組織にダイバーシティ(多様性)をもたらし、イノベーションの源泉になる。
『限界費用ゼロ社会』(NHK出版)ジェレミー・リフキン
限界費用とは、生産量を1単位増やした際の費用増加分のことだが、いまさまざまな世界で、この限界費用がゼロに近づいている。
例えば、ウェブサイトを立ち上げた場合、サイト制作と運営には費用が掛かるが、サイトのユーザー数が少々増えても費用はほとんど変わらない。
Youtubeは2005年にピザ販売店の2階にある小さなオフィスで創業したが回線コストが金食い虫で収益化のメドが立っていなかったが、翌年2006年にグーグルは1,700億円で買収。いまやグーグルの限界費用ゼロの収益源となっている。
今後、再生可能エネルギーや自動運転、テレワークフリーランスなども限界費用ゼロ社会を拡げていく可能性がある。