レビュー『 跡継ぎがいなくても会社は残せる!』
- 内田
- 2023年1月28日
- 本
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『跡継ぎがいなくても会社は残せる!』吉川正明 アチーブメント出版
会計事務所の事業承継で、 税理士資格を持たない32歳の親族でない従業員が、 ある日突然経営方針発表会で後継者に指名されました。
その後継者が著者の吉川正明さんです。
静岡県の会計事務所で資産税(相続税ほか)しか携わらなかった吉川さんが、 後継者に指名されてからはとてつもなく大変だったということでし た。
昨今の中小企業は「子どもや親族に後継者がいない」「 子どもがいても、継ぐ意志がない」 といった跡継ぎ不在に悩んでおります。
この吉川さんのような従業員承継がもうひとつの事業承継の選択肢 です。
吉川さんも後継指名を受けてからの2年間苦しんだそうです。
もう後継指名を受けた会計事務祖y(イワサキ経営)には未来が無いと見限られ、 社員の退職や転籍が続き、吉川さんは夜も眠れなくなり、 夜中に涙が止まらないこともありました。
先代に「もう無理です。辞めさせてください。」と伝えても、 先代からは「ぼくは吉川くんに決めてから。 吉川くんをよう思わない奴がいれば、そんなの辞めればいいんだ。 事務所の人数が半分になっても構わない。」と言われて、 もう少し我慢することにしたそうです。
後継者として社内での人間関係に悩んでいる時に外部の人に相談し たところ
「その人は、きっと鬼の仮面を被ったあなたの応援者ですね。 足りないものを教えてくれているんです。だから、 逃げちゃダメですよ。逃げていたら、 いつまで経っても状況が変わりません。」
と言われて、 ハッとしました。
吉川さんの心に刺さる言葉でした。
これをきっかけに、自分に批判的な相手とも、 自分からコミュニケーションを取るように努め、 すると不思議なことに関係が良くなっていきました。 相手を変えるのではなく、自分が変わらなければならない、 そう気づいた時、ようやく経営者になる道筋が見えてきました。
と言われて、
吉川さんの心に刺さる言葉でした。
会計事務所業界では、 顧客を連れて退職することがよくありますが、 それ事務所が阻止する図式が昔からありました。
しかし、 吉川さんはその人が辞めてもトコトン応援しようと考えて、 辞める人に「起業するのだったら、協力するよ」と声をかけて、 その社員を誘って顧客周りをし、
しかし、
「今度、独立をすることになったので、 これからもぜひ彼に協力してください。 当社は相続や保険もやっているので、 そうした案件については引き続きサポートさせていただきます。」 と言って回りました、すると「 イワサキ経営は2代目も器が大きい」と株が上昇して、 独立した人も「 前の職場にはすごく感謝しているって言っていたよ」 という話も聞きました。
従業員承継では、個人保証をいかに引き継ぐかが、課題です。
吉川さんの場合も、しばらく先代と2人で保証をしていて、 社長に就任して4年後に先代の個人保証が全て抜けました。
銀行との関係を大切にするため、 先代が何度も銀行の支店長との飲み会を開いてくれました。
事業承継がスムーズに進まない原因は2つあり、「 先代と同じになろうとする」「 先代を否定して新しいものを生み出そうとする」パターンです。 先代と二代目のどちらが正しいという視点は捨てましょう。 先代の想いを引き継ぐのも大事、新しいことに挑戦するのも大事、 後継者にはこの両方のバランスが問われます。つまり、 変えてはいけないものと、変えるべきもの、「不易と流行」 を意識すべきなのです。
アチーブメント株式会社の「水槽理論」。
水槽内の水質を職場環境、魚を社員に例えたもので、 社員のパフォーマンスを引き出すためには環境を良くする必要があ るという考え方です。
この水槽理論を知って以来、 物事のひとつひとつに対処するより、 水質そのものを良くすることを大事にしています。
社員に問題があると、 経営者や幹部は原因をその社員に求めがちですが、 社員個人の言動ではなくて、 社員にそうした言動をさせてしまった組織風土に問題があるという 考え方を持つようにしています。
この水槽理論を知って以来、