レビュー『方舟』
- 内田
- 2023年9月23日
- 本
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『方舟』 講談社 夕木春央
夕木春央さんは1993年生れの新進気鋭のミステリー小説作家さん
週刊文春ミステリーベスト10国内部門第1位、MRC大賞2022第1位、という事でおすすめされて読んでみました。
プロローグからなかなか怖い出だしで、人里離れた山中に埋められた地下建築に九人、ここから脱出するためにはだれか一人を犠牲にしないといけない、という記述。
学生時代の友人たちと、主人公の従兄、また見知らぬ家族3人が紛れ込んできている中で、地震や殺人が起こるという恐ろしい状況。
舞台となる方舟(はこぶね)はおそらく数十年前に地下に作られた、ゲリラ団体なのか宗教団体なのかが基地に使っていたであろう施設。
建物施設自体も古く、拷問器具が見つかるなど、不気味な雰囲気がただよいます。
そういった状況で一週間過ごす人の心情というのは想像しがたい一方で、日常の自分たちの心の焦燥も思い返したりします。
そして凄惨な形で起こる連続殺人。
見知らぬ家族3人からの告白。
地下建設の中でも発電機があり(電波はつながらなくても)スマホがずっと使えていることも2022年9月発刊ということもあり現代的なミステリー小説と感じました。
意外とそのようなところから事件の内容が判明していきます。
一週間のタイムリミットが迫っていく中で、主人公の従兄-翔太郎が真相に迫っていく姿にかたずを飲みます。
最後の犯人と主人公が通信で話す場面、恐ろしい最後に驚きます。