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レビュー『ひとり3000万円稼ぐ会計事務所の作り方』

  • user 内田
  • time 2023年10月7日
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ひとり3000万円稼ぐ会計事務所の作り方』㈱実務経営サービス 税理士法人コスモス 鈴木成美

税理士法人コスモス(本店名古屋)は、他人の稼ぎに頼るような職員はひとりもおらず、資格の有無に関係なく、全員が自分の売上を伸ばすという強い意識を持っています。その結果、2019年度は売上は11.5億円(正社員換算38名)、一人当たり売上3000万円という生産性を実現しました。

組織の生産性を高めるためには、経営理念の確立、人材育成、新規開拓・開発、業務改善など、多角的な取り組みが必要ですが、税理士1人が頑張るような状況ではだめで、所長の右腕を育て、職員が経営者になり、主体的に仕事ができれば生産性も上がっていきます。

この仕事は地域の名だたる経営者からお話を伺い、その人生観や価値観に触れられ、大変な刺激になります。だから、コスモスの職員は、少なくとも1日に2社、週に10社は顧問先を訪問し、必ずお客様に会う決まりになっています。経験の浅い職員にとっては、経営者と踏み込んだ会話をするのは簡単なことではありません。しかし、数をこなしていけば会話のレベルも上がり、頼られるようになります。何十人もの部下を従える会社のトップから頼りにされて嬉しくない人はまずいませんし、それを誇りに思うはずです。誇りが持てれば、おのずと仕事に愛着も生まれます。自分の仕事に愛着が持てて初めて、人は全力を尽くせるのではないでしょうか。会計事務所のトップは、職員がお客様と会って何をしたかを聞いて、きちんと評価することが大切です。

職員の成長を促すには、まずは仕事を増やすことです。職員はそこで今までのやり方では仕事がこなせなくなります。働き方を見直し、やり方を工夫する必要がありますが、それが成長の機会になります。人が辞めてもすぐに増やさないようにしましょう。
つまり残った職員がカバーをして、また成長のチャンスになります。仕事を増やすと同時に、職場に適度な厳しさを持たせることも必要です。所長が厳しいことを言うように心がけ、さらに厳しいことを言えるリーダーを育てます。これは厳しいことを言わなければ本質が伝わらないからです。当たり障りの無いことばかりを言っていて、そのような職場で働いている職員が、事業承継の案件で経営者に厳しいことを言えるでしょうか。企業経営は本質的に厳しいものです。そのお客様を相手にしている私たちが、馴れ合い体質で甘いことを言っていたら相手にしてもらえません。

職員に意識改革を促すにあたり、所長にはまず「自分だけが主役の事務所」から「職員も主役の事務所」に変えるという覚悟を決めて、4つの問いと向き合います。
①事務所を永続させる強い意志があるか(顧問先にとって、職員にとって未来永久に拠り所となれるか
②職員に高い給料を払う気があるか(せっかく職員が成果を上げたのに懐が潤うのは所長だけでは一生懸命働きたくありません。)
権限を委譲する気持ちがあるか(職員が何かを判断する度に所長の許可を得ているようでは業務が滞り成長もしません。)
経営をオープンにできるか(成果給の計算の仕組み・各人別売上・経常利益をオープンに)

所長は改革を含めたビジョン、目的を職員に何度も伝えるべきです。人に思いを伝えるのは、池に雪を積もらせるようなもので、話した端からその効果は消えていきます。しかし、何日も降り続く雪がいつの間にか池を覆い隠すように、話し続けていれば、いつかは人の心に刻み込まれます。日本や会計事務所を取り巻く厳しい状況。その中で自分たちの事務所が力を付けて、地域とお客様に貢献して、職員全員が豊かに暮らしていけるように何をしなければいけないかを話しましょう。プロとしての誇りを持てる、成果を上げた人が報われる仕組みなのだということを前向きに伝えましょう。これらと並行して、リーダーにする職員の目星を付けておきます。ここでいうリーダーとは、単なる部下のまとめ役ではなく、意識改革や人材育成、事務所の成長を先導する「所長の右腕」です。リーダーには所長に近い権限が与えられ、部下が付き、役職手当も支給されます。グループリーダーであるグループ長の手当は月額3万〜15万円、それはリーダーがそれだけ特別な役割を担っているからで、役職手当で報酬をある程度保証することで、組織のために時間を割いても損をささないようにしています。

人材育成の中では、顧問先企業の発展を願い、仲間と共に道を切り開いていこうとする心(人間性)が最も大切です。そのために所長は、職業人としての考え方や、生き方を示すことが大切です。なぜなら、会計事務所においては所長は大黒柱であり、職員は皆、その姿をある種の指針として働いているからです。所長が仕事に対する姿勢をはっきりと打ち出せば、職員の意識をひとつの方向に束ねていけます。所長はまず、ひとりでもよいのでリーダーを育てます。対象となる職員と話す機会を意識して設け、会計人として働くことの意味について伝えます。お客様である中小企業経営者の置かれた厳しい状況や、会計業界の現状など、所長が悩み考えていることを率直に伝えるとよいと思います。所長とリーダーが想いを共有することは、事務所を発展させていくうえで極めて重要です。こうした意思疎通が、全職員に対する人間教育にもつながっていきます

2008年にコスモスと統合した三好税理士事務所の三好税理士。
「コスモスは日本で一番ハードな、激務の事務所だと聞いていました。そんなところと一緒になって大丈夫かと周りから心配されましたが、私は逆に考えていました。私がコスモスのように丁寧に事務所を見て人を育て成果に報いる取り組みをしていれば、優秀な人が辞めることはなかったのです。仕事ができる人は独立しようと思えばできますが、コスモスは定着率が高くほとんど人が辞めません。給与もとてもよいですが、お金だけではない何かがあると感じたことも、コスモスと経営統合を選んだ理由です。」

最後に人を動かすのは「やりがい」です。人はお金だけで動くわけではないもいう当たり前のことです。具体的には仕事を通じて、人や社会の役に立っていると実感できることです。お客様の会社の発展・存続に貢献することができた、事務所の発展に貢献できた、地域経済に貢献できた、だから自分は役に立っている。そう感じられるのがやりがいです。少子高齢化が進展するなか、中小企業はその数を急速に減らしています。このままでは、日本の将来が危うい状況です。しかし、私たちコスモスはさまざまな方法で経営者を支援し、中小企業の減少にブレーキをかけることができます。担当者として経営者を直接支援するのも大切なことですが、日本全体のことを考えると、一社でも多くの中小企業を支援しなければなりません。

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