レビュー『任せるコツ』
- 内田
- 2024年7月13日
- 本
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『任せるコツ』すばる舎 山本渉
・相手の意欲を作り出す
「仕事を受ける側は全ての仕事を面倒と思っている」 という前提からスタートし、 やってみようという意欲を依頼する側が作りましょう。 そのために、「感謝される」「褒められる」「 自分にしかできない特別感」の3つがポイントです。
・断れる余白を作っておく
頼む時に余力がない前提で断りにくくしない工夫が必要です。「 難しいようでしたら、気にせず言ってください」というように。
「これは仕事なんだから、できる/できないじゃなくて、 やるんだよ」という昔ながらのスタンスでは通用しません。 メンバーの健康管理は、 マネージャーとしてとても重要なことです。
・好意を伝える
「去年の面談で●●って言ってたから〜」「 仕事ぶりを見ていると●●だから、 この仕事をお願いしても良いかな?」など、「 自分のことを覚えてくれている」 ということはお互いの好意として捉えられ、 依頼を受け入れやすくします。社会心理学者が提唱し、 人を動かす原則として有名な『チャルディーニの法則』にも、 好意は要求を通りやすくする重要なファクターとして紹介されてい ます。
・頼む際は威張ったり謝ったりしない
上司は偉い、マネージャーが上でメンバーが下、 という認識の人はもう絶滅していると信じたいですが、「 あれをやれ」というように命令口調で言ったり、 無理やりやらせるのは今の時代にマッチしません。
また、感謝は必要ですが、謝る必要はありません。 依頼された側としては「謝るぐらいなら自分でやってよ」 と思われ、モチベーションアップにはつながりません。
・重要な相談に導くための雑談と冗談
コツは聞いて、そして聞くこと。 感覚的には2割話して8割聞くぐらいのイメージ。 話してもらうことで、 メンバーのバックグラウンドや夢や悩みなど、 人となりが見えてきます。人がわかると、 その後仕事がしやすくなり、適したアサインができ、 パフォーマンスも上がっていきます。 面談で得たメンバーのプロフィールは、 忘れないように記憶しましょう。記憶力に自信がなければ、 メモ機能を使ってファイル化しましょう。 それはマネジメントとしての人を活かす資産となります。
・フィードバック、感謝、評価
仕事を依頼したらそれがどう役だったかを伝えてください、 そのことで、やってよかった、 またやろうという気持ちが芽生えます、 それが次につながるフィードバックです。 それとセットで感謝を伝えましょう。 感謝をするとストレスが軽減されるという研究結果があるそうです 。日々の業務でストレス過多のマネジメントの皆さんは、 ぜひ感謝を伝えることを習慣にしてみてください。
そして評価。冷静に、客観的に、フェアに行いましょう。 基準に沿ってブレない評価をすることで、 メンバーの次からのパフォーマンスに良い影響を及ぼします。
・Z世代の伸ばし方
Z世代が会社や仕事に求めることは昔と変わっています。 昇給や出世へのガツガツした意欲はさほどなく、 代わりに成長意欲が強まり、パーパス(存在意義) を重視する傾向があります。だから「なぜその仕事をするのか、 どのように社会に役立つか」という目的を伝えましょう。 そのほかにもZ世代は「話をしっかり聞いてもらいたい」「 頻繁な承認を求める」「多様性の尊重、 上司のやり方を押し付けられたくない」 といった要望がより強い世代です。
・今ではなくチームの将来を考える
一つの営業部の新規契約の例。マネージャーは能力が高く10件、10人のメンバーはそれぞれ1件。
これだけ能力に開きがあれば任せたり育成に時間を費やしたりするより、自分で動きたくなります。数字化すると10+10×1=20
次はマネージャーが現場に費やす時間を半分に減らしてその分メンバーの育成に力を入れた場合、本人の契約が5になったとしても、仮にメンバー1人につき2件となれば、契約数は増えることになります。数字化すると5+10×2=25
長い目で見ればメンバーの能力は「2」が上限ではなく、「3」「4」と増え、「10」になり、マネージャーを超える可能性すらあるのです。
「チームに任せられる人がいない」というのは、「私はマネージャーとして無能です」と言っているのと同義語です。「自分でやったほうが早い」というのは、育成を無視し組織を弱体化させる罪です。
・正しい丸投げと間違った丸投げ
正しい:相手の身になって考える。その依頼がどのように役に立つか目的を伝えている。相手の余力の配慮がある。断ることができる余白がある。相手にとって適度なチャレンジがある。プレッシャーと期待が過剰でない。感謝の気持ちがある。
間違い:自分が楽になることだけを考える。目的や意義を伝えずただ作業だけさせる。相手のやる気や忙しさなどの状況を確認しない。命令として押し付ける。誰に任せるかを吟味せずやってくれれば誰でも良いと思い思っている。相手の動機づけをしない。感謝や評価などのフォローをしない。