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【本】レビュー『イーロン・ショック』

  • user 内田
  • time 2024年9月21日
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イーロン・ショック』笹本裕 文藝春秋

元Twitterジャパン社長が書いた、イーロンマスクによるTwitter買収における「破壊と創造」の215日について書かれた書籍。

●私が見たイーロンという男
イーロンの表と裏を見てきた私からすると、彼はすごく複雑。表に見ている彼のドラえもんに出てくる「ジャイアン」のような豪胆さ。そしての裏にある「のび太」。どちらも本物のイーロンなのです。イーロンの守護は常に「人類」、本当は何世代もかかることを生涯の中でやり遂げようとしていて、ものすごく時間に敏感、「なぜこの人はこんなに生き急いでいるのだろう」とよく思います。Twitterの社員を7800人から3000人に減らすのも通常半年ほどかかる所を、あっという間に3、4日で決断して執行してしまった。イーロンがつねに言っているのは「とにかく俺は、強いやつしか残したくないんだ」ということで、それはつまり「棚を壊しても、それをまた作っていこうとする人」を彼は望んでいるという事です。イーロンがTwitterの買収を完了したのが2022年10月28日、それ以降は毎週土曜日になんらかの指令があり、彼からまたは誰かを経由して来ることもありましたが、たいていは「明日からやろう」「今からやろう」「3時間後までにこれをやってくれ」という指示もよくあり、決断の早さには妥協を許さず、矢継ぎ早に指示が飛んできました。一方で解決方法について説明がついても、イーロンは自分で回答を出さず、「じゃあどうしたらいいんだ?」とまわりに意見を求めます、細かいところまで指示するトップダウンのイメージがありますが、大きな流れではそうなのですが、細かいところについては人の話を聞いてくれてけっこう任せてくれるのです。

●破壊-Twitter買収の一部始終
買収後イーロンから「すべての経費をいったん止めろ」という指示があり、立替経費精算が済んでも振り込まれない未払い状況となりました。責任者がプライベートジェット使ったり、キャリアと組んでショートメッセージを打ちTwitterに月8千万円を請求させていた事が発覚し500億円コスト削減しろという短期目標の中、コスト削減が実現しました。イーロンとは買収後週2回ぐらいビデオ会議をやりましたが、Slackで突拍子もない内容とタイミングで連絡が飛び交いカオス状況ではありましたが、直接ボンと質問が来るので自然と組織の壁が取り払われていっている良い面がありました。日本法人のボーナスや報酬内容も相当変わってしまい、そこに対してイーロンは「未来に期待してね。今は耐えてね。」と社員に言い続けるのですが、それは都合が良すぎると思い日本でのリストラや戦略に反対したところ、私は退職となりました。もし私がイーロンなら「横串」で組織を見ることのできるCOO(最高執行責任者)を入れます、ビジネスモデルがわかっていながら、イーロンの価値観に共感できる人を参謀として置かないと、組織が分断されて有機的に機能せず失敗すると思います。私はそのようなイーロンのビジョンに共感する参謀になりたい気持ちがありましたが、あまりにも破壊的で折り合いをつけられず2023年5月末という7か月で退職することになりました。

●イーロン・ショックは他人事ではない~AI時代に生き残る働き方
2年ほどシンガポールに住んで感じたこと、それはグローバルな激しい動きの中で、日本は経済が停滞しているわりに「平和」だということ、これはとても危険なことだと思っています。日本では「現状維持」や「前例踏襲」が重んじられる傾向にありますが、いまのような変革が求められる時代においては足かせになりますので、ぶち破るためには日本にも「イーロン的な存在」が必要なのかもしれません。リミットを外していけるような人物です。アメリカにはもともと「イーロン的な存在」が期待されている空気感があります。これまでイーロンがやってきたことは、それも「破壊と創造」です。スペースXではロケットを4機も5機も破壊して、結果的にその次のロケットで成功させました。テスラでは2019年くらいにお披露目したサイバートラックが壊れてしまいましたが、2023年に発表した時は壊れませんでした。破壊する一方で、創造していく力もその何倍もある。彼の場合は、そこでまわりの人間や世間を敵に回してでも戦って、そこから何かを作り上げていきます。但し、日本人に「出る杭になろう」と言っても、DNA的なところで合わないかもしれない。であれば日本人の「エコシステムを大切にする」「和を重んじる」とい部分をむしろ強みにしていくのもひとつの答えです。ドラスティック的な破壊と創造ではなく、その中間的な「破壊する部分は破壊しつつも、根本的な和は維持しつつ創造していく」。そのほうがサステナブルで、日本に合っているかもしれません。

 

 

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