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【本】レビュー『会社をつぶさない社長の選択』
『会社をつぶさない社長の選択』松岡靖浩 かんき出版
弊社-税理士法人TAPのスタッフは、社長様から経営での選択についての相談を受けることが多く、こちらの書籍の著者も税理士として多くの相談を受けるそうです。
社長様からは「右に行こうか左に行こうか・・・私は右に行こうと思っているけど松岡さんはどちらがいいと思いますか」というどちらが自分会社にとってメリットがあるのか、会計事務所の目から判断を仰ぎたいというものです。
経営者はあらゆる局面で「どちらにするか」という「選択」を迫られます。ほとんどの方は、心の中でどちらを選ぶか決めていますが、それが本当に正しいのか、背中を押してほしいのです。もし私が反対の事をすすめるのであればその理由を知り、自社にとってメリットの多い選択をしたいのです。本書は多くの経営者とお話をしてきた中から、ご相談の多かった53の「選択」をピックアップしております。
●会計事務所に丸投げするvs会計ソフトを使う
最近は様々なクラウド会計ソフトが出てきていて、非常に使いやすくなってきているので、会計事務所に丸投げするのではなく会社が自ら行うケースも増えてきています。但し、事業規模が大きくなれば経理は必要になりますが、現状そこまででなければ経理人材を雇うより会計事務所へ丸投げした方がメリットが大きいです。なぜなら融資相談にも必要な試算表を定期的に作成してくれて、今はほとんどオンラインでデータを送れますので、経営者としての時間が制限され利益が下がってしまっては本末転倒ですので、経理が雇えるまでは、会計事務所に丸投げしましょう。
●客単価を上げるvs客数を増やす
お店が広くない場合、限られたキャパの中でお客様が増えてもそれほど売上は上がりません。したがって、客数よりもまずは客単価を上げていくところから手をつけるべきなのです。値上げ以外で客単価を上げる方法も3つあります。松竹梅の3つの価格帯を作り真ん中を選んでいただく「松竹梅戦法」。お客様が購入する際に、おすすめ商品・上級商品を組合せて買ってもらう「クロスセル、アップセル」。滞在時間延長時やカラオケ使用時に課金をする「掛け算思考」。
●高利益率高単価vs薄利多売
お客様から相談される際、私は「高単価でしっかりと利益を取っていきましょう」とアドバイスするケースが多いです。なぜなら、薄利多売で商売をする場合、資本力がないと厳しいからです。一般的に仕入が先に出る事が多くある程度資金に余裕がないと商売として回すことがかなり厳しくなります。また薄利多売になると、単純に取引の数が増えることになります。つまり、取引の手間が増えるということです薄利多売をするとしても一つの入り口ステップとすることが良く、最初は無料だったり安くして、次から高利益率とすると効果的です。
●既存顧客を大事にするvs新規顧客を取りにいく
近年、企業はLTV(LifeTimeValue)といく新規顧客が取引終了までどれだけの利益をもたらすかを大切にするようになってきていますが、このとき既存顧客への注力が必要です。ではどの位の割合で新規顧客とのバランスを考えるかですが、私の顧問先ではおおよそ8割程度のリソースを既存顧客に注ぐのがいいというのが印象です。広告を打ちながら8割を新規に注ぐ会社もありますが、(新規獲得は既存引き止めより圧倒的に労力が掛かるため)コストパフォーマンスが非常に悪いです。既存顧客とは接触回数が増えれば増えるほど印象や好感度が高まるため(=ザイオンス効果)、接触回数を増やして提案を行う準備をしていくことは必要です。
●グレー経費をのせるvsグレー経費をのせる
税務調査をやると如実にわかるのですが、税務署は完全に黒と判断できるものしか指摘しません。黒でなくグレーな部分があれば裁判をやると勝てないので否認が出来ません。ただ、だからと言ってなんでも大丈夫というわけではありません。例えばハワイ旅行に行って経費には簡単には出来ず、特に1番ダメな例として挙げられるのは明細に「子ども1」などと書いてあるケースです。(夫婦両方役員でも子ども分は外しておくべき)。税務調査官も訓練をされているので嘘はつかない方が良く、費用計上するのであればしっかり事業使用の写真を撮るなど対策はとっておく必要があるのです。
●借入金を一括で繰上げ返済するvs借入金を残しておく
会社を経営するうえで借入金の一括繰上げ返済は、禁じ手に近い愚行です。何がマズいのかと言うと、銀行の売上がなくなってしまうことが問題なのです。銀行は会社に融資をする際に返済期間を設けて、利息と共に返済してもらうことで利益を出すビジネスモデルになっているのです。ですから、繰上げ返済をするということは、銀行の売上をすべて消してしまうということ。「この会社はいきなり何をしてくれるんだ」となるのです。もし仮に銀行に一括返済をして、その後業績が悪くなって銀行に改めて「融資をお願いします」と言っても、下手をすると貸してもらえないかもしれません。借入金の一括返済はNGなのです。
●税金を支払うvs家賃を支払う
まず大前提として知っておくべきなのは、税金を滞納すると融資は確実に断れるということです。そのため、資金繰りが厳しくなっているものの銀行から少しでも借りられる可能性がある場合には、税金の支払いはどの支払いよりも優先するようにしてください。
●税金を分納するvs税金を滞納する
分納も滞納も納税証明書を取りに行けば「未納」と記載されるので、会社の状況はあまり変わりません。しかし、税務署と話し合い換価の猶予申請をして計画書通りに分納とすれば、税務署が差し押さえ手続きをしてこない点が大きく異なります。業績が回復した場合の話ですが、税務署からこの分納の許可が出ていると、銀行がプロパー融資の対応をしてくれることもあります。これは融資したお金が税務署に差し押さえられないという前提があるため、銀行も融資ができるわけです。もし計画書通りに支払えなくなった場合には、すぐに税務署に連絡し「今月は支払えないので5万円だけ支払います」と事情を説明して、一部でも支払いをするようにしてください。必ずではないですが「誠意をもって対応する」ことで、払う意思があるとみなしてもらい、多めに見てくれることが多いです。
●ポテンシャルの高い人間を採用vsヘッドハンティング
これは私見も入ってしまうのですが、私の経験上、ヘッドハンティングされてやってきた人の中で、会社にとって本当に有益になる人を一度も見たことがありません。基本的に、ヘッドハンティングで来る方のほとんどはお金が目当てです。もちろん、普通の転職でもそういう方はいますが、ヘッドハンティング経由だと、これが非常に顕著です。お金目当ての人はお金で動きますので、もっと条件のいいところを紹介されると、居着くことなく次の職場へすぐに移ってしまうのです。ヘッドハンターは年収の一定割合の報酬形態のため、年収が高い人が優先的に紹介され退職リスクの高い人が持って来られます。最近はSNSを利用した採用などもありますから、ヘッドハンターからの照会一辺倒になるのではなく、自社でしっかりと力を発揮する人材を育てるということも意識しながら人材採用をしていってください。
- 内田
- 2024年11月2日
- 本
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