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【本】レビュー『ビジョナリーカンパニー』

  • user 内田
  • time 2024年11月9日
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ビジョナリーカンパニー』 ジム・コリンズ 日経BP

1995年発刊。「マネジメント」で有名なドラッカーの教え子で後継者と言われる世界的経営学者の最も有名な著作。

●建築家のような方法-時計をつくる
ビジョナリーカンパニー(業界で卓越し尊敬されCEOが変わりながら長く続く企業)の経営者は当初は組織志向が強かったが、時を告げる人でなく時計をつくる人であった。会社を築き経営する仕事に携わっているのであれば、カリスマ的指導者になろうと考える時間を減らし、サービスや製品についてすばらしいビジョンを考えたり、組織についてのビジョンを考え、自分たちやすべての未来の指導者が従うべき憲法をつくる時間をつくるべきである。

●基本理念を維持し、進歩を促す
世界は変化している。この難題に組織が対応するには、企業として前進しながら信念以外の組織のすべて(ルール・製品ライン・目標・能力・業務方針・組織構造・報酬体系ほか)を変える覚悟で臨まなければならない。組織にとっての聖域は、その基礎となる基本理念だけだと考えるべきである。「顧客の期待以上のことをする」というウォルマートの基本理念(文化・戦略・戦術・計画)はずっと変わらないが、入り口に挨拶係が立っているのは理念ではなく「慣行」であり変わることもある。基本理念以外を変えるという進歩の意欲は、探求し、創造し、発見し、達成し、変化し、向上しようとする人間の奥深い衝動から生まれる。この意欲を持っていない人間は入社させるべきではない。

●社運を賭けた大胆な目標-進歩を促す強力な仕組み
本物の目標は明確説得力があり、集団の力を結集するものになっている(ex.1960年迄に月に人間を着陸させる)。退屈な経営理念は終始聞かされているが月旅行のような明快な目標、聞いただけでわくわくさせられるよう大胆な目標は持っていないだろうか。「業界で最も利益額の大きい会社となる」「日本の製品は品質は悪いという外国での評判を変える」のような大胆な目標に何度も取り組むことを検討すべきである。

●働く意欲を高め会社への忠誠心のある文化
ビジョナリーとは、やさしさではなく、自由奔放を許すことでもなく、全く逆でありビジョナリーカンパニーは自分たちの性格、存在意義、達成すべきことをはっきりさせているので、自社の厳しい基準に合わない社員や合わせようとしない社員が働ける余地が少なくなる傾向がある。カルト的な理念への熱狂、教化への努力同質性の追求、エリート主義を持っている。入社後には顧客サービスの英雄の物語が話され、壁には標語を貼り、宣言を何度も唱えるよう教え、拍手と喝采で英雄を讃え、徹底した強化を続けていく。同質性を追求しその会社の流儀に合った社員は、給料・資格・表彰などで次々に励ましを受け、合っていない社員は取り残され罰を受け減点され、次々に嫌な思いをする。

●生え抜きの経営陣
ビジョナリーカンパニーは、社内の人材を育成し、昇進させ、経営者としての資質を持った人材を注意深く選択している。後継者の育成を、基本理念を維持する努力の柱にしている。社外から経営者を招いていては、先見性が際立つ企業になることも、その座を守ることも、きわめて難しいと言える。経営幹部育成のための制度を設け、長期的な後継計画をつくって、ひとつの世代から次の世代への移行が円滑に進むようにすべきだ。企業内で先見的な事業部門、グループをつくっているのであれば、スケールは小さくなるが、やはり幹部の育成と後継計画を考えることができる。最後に、自分にぴったり合っているビジョナリーカンパニーに勤めているのであれば、転職よりも、その企業の中で自分の能力を伸ばすことを考えてみるべきではないだろうか。ビジョナリーカンパニーを築くという観点に立つならば、問題はいまの世代で会社をどこまですばらしいものにするかだけでなく、決定的な点は次の世代で会社がどうなるか、その次の世代でどうなるか、そのまた次の世代でどうなるかである。

 

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