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【本】この国を出よ
『この国を出よ』 大前研一・柳井正 小学館
2010年発刊の書籍ですが、少子高齢化で沈む日本にとって非常に力強いメッセージが書かれた一冊。
今や世界では、 アジアを中心とした新興国が著しい経済成長を持続しています。 にもかかわらず日本では、 グローバル人材としての活躍が期待される若者の海外志向は弱まっ ています。こうした認識の甘さは、 競争を避ける日本の教育と無縁ではないと思います。しかし、 古今東西、競争のないところに進歩は生まれません。 北欧のような家族・地域貢献・ 地球環境への教育により世界のリーダーにもなれず、 韓国のような詰め込み教育を徹底するでもなく、 ぬるま湯の日本教育は劣っていきます。
借金増の日本のバラ撒き政策が日本の沈没を招くのは数の多い収入 平均以下の人の要望ばかりを聞いて高収入企業・ 人から高い税金を取り、さらに平均が下がっていくから。 そのような国は国際競争力を持ち得ないし、 国全体がますます貧乏人なっていくのは必然です。 天井を高める人、富を生み出す人々が元気でいて、 初めてバラ撒く資金が出てくるのです。国家レベルで「稼ぐ力」 をつけたよい例が、 1人当たりGDPで日本を抜いたシンガポールです。 税率を安くしたら、 世界中からマネーと優秀な人材が集まって繁栄し、 結果として国家財政も潤った。ところが、日本の税制はその逆に、 国民や事業の稼ぐ力を失わせ、 皮肉なことに日本の財政をも危機に立たせている。
ここ10数年、もてはやされているベンチャー企業を見ていると、 残念ながら、草創期の松下電器産業やソニーのような「 変化し続けようという姿勢」を感じる会社がほとんどありません。 そもそも「自分たちのビジネスや商品で世の中を良くしたい」「 社会を変えたい」 といった志があまりにも希薄に見えて仕方がないのです。 バブル前30年も前の1970年頃より若い人にとって「モノ」 に対する憧れが強くなり、 表面的な格好良さだけが重視され親や他人に甘えて買ってもらえれ ば満足し自立心が無くなりました。また、 戦後数十年が経ち安定した時代に生まれ育ち、 若者もハンガリー精神を無くしました。他人任せにするばかりで、 自ら答えを探したり行動する人もいません。
「企業は、社会の公器である」このドラッカーの言葉には、 企業のあるべき姿が集約されています。 顧客が望む新しい価値を提供し、社会に良い変革をもたらし、 雇用を創出し、従業員の自己実現を図る。ここから、 自分は何をしたいのか、 しなければいけないのかが見えてくるのではないかと思います。 僕(柳井)はいつも社員たちに「 未来は現在よりも必ず良くなると信じて、必死になれ」 とハッパをかけています。
今の日本は少子高齢化が進み年々人口が減少し経済も停滞していま す。であるならば、企業は日本には期待せず、 日本を飛び出して新しい市場を開拓するしかないでしょう。 重要なのは「慣れない海外は不安だ」という恐怖心を払拭して、 とにかく一歩を踏み出すことです。そのためには、 グローバル化に対応できる人材育成が不可欠、 外部に丸投げせずGEのように毎週社長がリーダー候補と会食した り、サムスンのように海外に1年間住まわせるなど、 時間と費用を掛けること。
教育の本質を「どの企業も欲しがるような人材」 を育成する方向へと転換すべきです。 これまでのような受験を念頭に置いた画一的な教育を行う高校や、 勉強をしなくても卒業できる大学は全く論外で、 実務経験がなく学者に過ぎない教授が自分の得意分野の話をするだ けの今の大学は無用の長物です。リーダーシップについては、 位が上がってからつければいい、 と考えている人がいますが違います。 育つ教育の過程で身につけるものなのです。 例えばヨーロッパのある有名企業では、 一流大学を出ているだけてば採用せず学業以外の特筆すべき経験が 大切で、 リーダーシップを取った経験が22歳までに5つないと採用しない のです。なぜなら、リーダーシップを取る傾向がある人は、 人生で必ずそれを反復するからです。日本も、 リーダーシップのある問題解決型の人材を育成する教育に力を入れ るべきです。
- 内田
- 2025年1月11日
- 本
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