【本】コロンブス2025年7月号-地域で稼ぐ年商100億円の中核企業を育てる
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内田
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2025年8月16日
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本
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2025年春に中小企業庁が地方創生のために制度を打ち出し、補助金も用意されている年商100億円の達成を目指す「100億円宣言」を行った企業が注目されております。
宣言のメリット①中小企業成長加速化補助金(工場や物流拠点の新設・増築といった建物費、イノベーション創出に向けた設備導入などの費用を支援。限度額5億円、補助率2分の1)②経営者ネットワークへの参加(宣言を行った企業の経営者同士が地域業種を超えてつながる)③宣言の公式ロゴマーク活用による自社PR
100億円企業は1万5千社ほどで帝国データバンクの保有データ149万社のわずか1%にとどまる。100億円企業は、10億円規模の企業と比べて経常利益率が1.6倍(4.6%⇔7.6%)、給料水準が1.3倍(480万円⇔660万円)という高い経済性を誇り、資金調達力・雇用力・信用力により「地域に根差す産業のコア」として、地方創生の要として期待される。
100億円企業となるためには、将来的に実現したいビジョンを明確化し、役職者の役割を明確にし、各部署の担当業務や責任範囲を定義して業務重複や責任の空白領域を排除したり、先を見据えた採用戦略を実践できる人事体制を整備する必要がある。将来の売上金額から逆算(バックキャスト)して、いつ何を行うべきかを「10年ロードマップ」にしてみることが重要。そうでないと創業者が持ち前の企画力や事業力で20億円~30億円にまで会社を大きくした後、利益率や生産性の低下、離職や不正増加などの壁にぶつかり、成長が停滞してしまう。
そして、100億円企業を目指すには「地域コングロマリット経営」による規模拡大の視点が不可欠。統計的に見て、全国を商圏としない場合、不動産事業、商社、自動車販売事業のような業種を除けば、単一の事業で年商100億円にまで成長できるケースは少ない。まして労働力不足・マーケット縮小のなかで単一業種で地域でトップを取っても意味が無く、地域で複数事業を展開するコングロマリット(複合企業体)となるべきだ。事実、ホールディングス化で複数事業シナジーを生み地域経済をけん引する企業が多い。
例えば、愛知県知多半島の㈱エネチタは石炭販売からガソリンスタンド・ガス事業、リフォーム・不動産、コインランドリー、フード事業などに進出、知多半島で8事業41拠点を置く年商135億円超の地域コングロマリット企業となっている。まもなく100億円企業になる㈱ミールケア(長野県長野市)給食委託事業からレストランやベーカリー事業を立て直しつつ地域の社会問題解決にも取り組む。
このように地域コングロマリット経営はむやみに多角化したり全国展開するのではなく、特定の商圏で複数事業を展開し、従来の本業の弱点を補ったり、時流に応じて各事業への投資を調整したりしながら着実に成長をしていく経営手法。地域内で存在感を高められれば事業承継やM&Aの相談を優先的に得られる可能性も高まる。高い給与水準の雇用を地元に増やすのはもちろん、地域限定で収益性の高いビジネスを展開しているので確実に大きな経済効果を地域にもたらす。さらに儲けは税収となって地域に還元され、公共サービスの充実や高齢者、子育て支援など暮らしやすく働きやすい地域づくり、まちの魅力化につながる。