mv-icon
税理士法人
TAPブログ

mv

Latest Posts

【本】レビュー『ユニクロの仕組み化』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユニクロの仕組み化』SBICreative 宇佐美潤祐

特定の人に頼らない仕組みをつくって、事業をまわす。それがユニクロの最大の強みであり、柳井さんが長年かけて取り組んできたらことなのです。
仕組みの柱①グローバルワン
世界で一番良い方法を全員で実行する、それを通じて世界一を目指す最強の集団になる。世界中の全店舗の販売在庫状況、お客様の声をいつでもどこでも確認できます。ひとりひとりが経営者マインドを持ち、ひとりひとりが自営業者のように主体的に自律して働く、自分で考えて結論を出し、自分で実行する。
仕組みの柱②全員経営
「現場の知恵を生かしながら、全員で最も良い方法を見つけて実行する」柳井さんは志を自らの言葉で語り続けることで、求心力を高め、リーダーシップを発揮し続けてきました。志を達成するために、ミッション=使命、ビジョン=どうありたいか、を明確に掲げることで、賛同する人々の集合体としてのなり会社をつくろうとしていました
経営理念とマニュアルの間にある(耳に残りやすい)原理原則をつくり浸透させていく、ローカルに根付き世界に広がる、whatだけでなくwhyを明示することで、働いている人は「自分の店舗を自分たちの手で最もお客様に喜んでもらえる地域の1番店を作り上げたい」という共通目的とそれに挑む覚悟が醸成されます。ユニクロは現状維持を良しとしない「CHANGE OR DIE」、現状にとどまるくらいならば、失敗してもいいからチャレンジしろと推奨する風土があります。
教育の原理原則では研修プログラムを作る座学に重きを置かず、上司や本部が現場と一緒になって現場の課題解決の役に立つ事こそが教育なのではないかという考えが浸透しています。上司は部下がどのような志を持っているか、そのためにどのような能力を備えさせてあげるべきか一緒に話合い、自分事にしてそれを上司の評価とします。ユニクロでは「キャリアは無限大」と働く人に言い続けています。
次世代のリーダー・後継者を育成する仕組みとしてFGL(futures global leader)プログラムがあり、30代のマネージャーを3年間で経営者に育成するため志をベースにした試練が与えられます。対象者個々人に役員クラスのメンターが指名され、成果を上げるための相談相手、時には成果が上がらない場合にいったんFGLを外れる事をアドバイスもします。3ヶ月に一度FGLセッションを実施して、柳井社長をはじめとした経営者との直接対話、現場の深い理解(中国生産工場訪問など)、ユニクロが抱える経営課題を見つけ解決案を柳井社長への提案し実践する事です。成果が出れば卒業のうえ昇格という成長を後押しする仕組みです。
人を育てたくなる仕組みとしてユニクロでは、人事評価のうちマネージャークラスだと30%、役員クラスだと50%が「どれだけ人を育てたか」で評価されるほど割合が高い点にあります。「スタッフの◯◯さんの評価グレードを上げる」「あるグレードのスタッフを◯人にする」など目標が具体的なため評価もしやすく、働いている人は部下を必死に育て自分の後継者作りをする方向に動きます。人材育成は共感と信頼関係を土台に置くため、上司から自分のことを開示することが有効です。自分の反省や弱い部分と会社で何を成し遂げたいかを部下にまず伝えてから、同じように部下に自己開示をしてもらい部下の価値観も知ることです。
柳井さんは「当社は結果としての終身雇用という言い方をたまにしますが、理念や価値観に共感してくれる人は、同じ船に乗りたいと思う人は乗り続けてくださいという考え方です。ユニクロでなくても「入社してみたら価値観が合わない」と感じる人は絶対にいます。
柳井さんは「人間25歳ピーク説」を唱えその年齢以降はどんなことに挑戦しても成果を出せるとして若手の抜擢をします。欧米企業も実際にそうでGEのジャック・ウェルチやジェフリー・イメルト等は45歳でCEOに就任して、20年スパンの経営が企業価値向上に有効という考え方もあります
ユニクロでは「大きい服を着せる」という今の能力よりかなり大きなチャレンジを与えられ飛躍的な成長につながりますそんな無謀なチャレンジを課してもユニクロには敗者復活の仕組みがあり、失敗した人をどう処遇するかで企業の士気は大きく変わります。かつて食品事業を大失敗した柚木治さんは辞表を忍ばせて柳井さんに報告に向かうと柳井さんは開口一番に「会社を辞めようなんて思わないで、損失分をちゃんと返してからにしてください」と言われ退職を思いとどまり、その後2010年にGU社長に就きGU中興の祖となりました。今のユニクロチャイナCEO潘寧さんも2001年からの中国事業責任者として撤退までなりましたが、2005年から再び声が掛かり中国事業を大成功させました。
成長を促す仕組みに数字をしっかり見る「週次PDCAがあります。どんなに遅くても週単位で、どのような部門や店舗でもPDCAサイクルを回しています。ユニクロがすごいのは、全社レベルで週次PDCAを回し毎週、徹底的な評価(Cチェック)とそれに基づくAアクションが行われている点です。ユニクロの重要事項は月曜日朝8時からの全役員が参加して重要トピック議論から始まります。その後9時から10時までの部長会議でPDCAサイクルが回され、前週の売上共有、部門ごとの対前年比実績、年度計画進捗率、お客様の声が共有され、10時に会議が終わると即実行です。このスピードで回しているので、当然、現場も非常に機動的に動けます。
月曜日の10時に会議が終わると、各本部からメールで、全店舗に月曜の部長会議の内容が通知され、ブロックごとに各店舗で実践できているかスーパーバイザーが店舗を巡ってチェックします。これにより会議に参加していない現場レベルのスタッフの動きも、機動的に修正と実行を繰り返す「仕組み」と機能します。成長しない人はいません、成長できる環境な身を置けるか、どのくらいのスピードで成長できるかが大切です。「何が重要か」を起点にすることで、過去や経験しがらみに縛られずに変わっていけますし、即断・即決・即実行できるのです。

 

 

  • user 内田
  • time 2025年3月1日
  • tag
  • comment 1

【本】レビュー『経営中毒~社長はつらい、だから楽しい~』

 

 

 

 

 

 

 

 

経営中毒~社長はつらい、だから楽しい~』PHP 徳谷智史

社長や経営者視点はとても孤独で大変でツラいが、サラリーマン視点だと得がたい「やりがい」、表現しがたいほどの「充実感」を享受できるのは紛れもない事実です。絶対ムリと思われていた大きな山を必死で乗り越えて、目指し続けていた絶景を共有する経験は何事にも代えられません。
最初は一人もいなかったお客様が増え、「なくてはならない」と心から感謝されることもあります。苦難をともにして喜びを分かち合った仲間たちの笑顔を見て頑張ってきてよかったな」と自分自身を全肯定したくなる気持ちに浸れる機会もたくさんあります。

●人徳が問われる「カネのマネジメント」
最悪なのは、目先のお金をかき集めることばかりに忙殺されて、本来社長がしなければいけないことに時間を割けなくなることです。創業時に掲げたビジョンも明日のご飯に困ってくるとどこかに行ってしまい、ビジョンもうやむやになり人も離反します。
経営の中で会社のカネを正確に把握するには、P/L・B/S・C/Sすべてをチェックしないといけず、上手くいかないと資金ショートを起こすこともあります。カネがあってこそ会社が成り立ちますから、人を雇えて給料を払えること、自分や自社への未来を信じてくれる金融機関等の存在、支払いができることへの感謝をしましょう。

●会社の未来を左右する「ヒトのマネジメント」
会社99.9%、「人の問題」で崩壊します。筆者の体感では、二人で共同創業すると、十中八九ケンカ別れします。社長は自分と同じぐらいコミットすることを社員に求めてしまいがちで、それゆえ社員が社長とのギャップが開きついてこれなくなり離職するケースもよく見られます。だから、社長は「この会社は何のためにやっているのか」「そのために我々はどういうことを大事にするのか」という価値基準をメンバー同士がお互い人生のバックグラウンドを開示して、腹を割って話しておくことは大切です。
会社の規模が大きくなり始めたら(どのようなスキルを持ったメンバーで会社を構成するか」計画を立て、それに沿って今いるメンバーとは異なるスキルを持った人を意識的に採用すると環境変化に強い組織となります。マインドは共通、スキルは異質がポイントです。
社長やエースをどこに配置するかは組織として悩ましい所ですが中長期的な事業や組織の柱を育てるため、社長のリソースは少なくとも常に2〜3割は「次の手」に割き、それでも事業が回る仕組みを確立したいものです。

●文明の衝突を起こさない「組織のマネジメント」
100人の壁」が見えてくると社長が現場マネジメントをできず中間管理職が業務指示をするようになり、営業vsエンジニア、中途vs古参、、、など組織の崩壊がとつぜん起きます。
組織崩壊を防ぐ方法は2つ。1つ目の方法は人事担当者だけに任せず社長一人がすべてを見ることを諦め、他の経営陣が本気になって組織運営にリソースを割くことです。CHRO(最高人事責任者)とも言われますが肩書にこだわらず、求心力と組織運営の知見がある役員であれば、その人にCHRO的な役割を兼務してもらうと良いでしょう。
2つ目の方法は、給料のものさしをつくるなどして組織運営の構造を整えることです。中長期的に組織を強くしたいなら、短期的な成果を出している人は賞与で還元し、価値基準や行動規範をしっかり体現している人を昇格させる構造が良いでしょう。まず役職や等級に応じたある程度の給与レンジを明確にし評価のやり方を定め、そのうえで基本給か賞与どちらで払うのかなどを設計していきます。
業務を社長以外に任せていくには、社長が「会社として絶対譲ってはいけないこと」「譲ってもいいこと」を仕分けてルール化すると良いでしょう。
また組織は社長の想い以上に大きく、良くなりません。目標は絶えず口に出し社長の想いの大きさ、思想の深さによって、組織の形はまったく変わるという意識を持ちましょう。

●会社の未来を左右する「社長の意思決定」
社長が意思決定をいたずらに先延ばしにしても良いことはほとんどありません。例えば事業のテコ入れのために、幹部候補の中途採用を検討したものの「他にも良い人がいるかもしれない」と思って決断を先延ばしにしていたら他社に取られてしまったら、後悔しても時すでに遅しなのです。そう考えると、失敗を恐れず、速やかに意思決定をすることが鉄則と言えるでしょう。
社長の意思決定は誰かに頼らず、社長自身で行うのが大原則です。しかし、誰もが自分の事は客観的に見れないものですので、意思決定の拠り所を取り戻すうえでもフラットな目を持つ第三者と話すことには大きな意味があります。社外に信用できる方がいるのなから、その方に「壁打ち役」をしてもらえば良いでしょう。
会社としての目標は社長や経営陣が「何のために会社を経営しているのか」「どんな規模感で、どんな価値をつくりたいのか」「どれくらいのペースで成長したいのか」を明確にして、皆が腹落ちする共感できる言葉で「目標を達成できた先に、いかに素晴らしい世界が待っているのか」を魅力的に伝えることが求められます。

 

  • user 内田
  • time 2025年2月22日
  • tag
  • comment 0

【本】レビュー『生成AIで世界はこう変わる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生成AIで世界はこう変わる』 今井翔太

生成AIは、人間が行うような新たなアイデアやコンテンツを作り出す能力を持人工知能で、文章の作成から音楽、絵画、デザイン、ゲームのレベル設計、科学的な仮説の設定まで人間の創造性が求められるほとんど全ての分野に及びます。(大量のデータから本質的な構造や表現を学習し、それをもとに新たな出力を作り出します。)
生成AI革命で、史上最速で社会変化がもたらされています。ChatGPTの発表直後、Google社は社内は厳戒警報を発令し、対抗するMicrosoft社はすぐに自社検索エンジンBingに ChatGPTを搭載しExcel・Word等にも生成AIを搭載すると発表、一つの技術が世界一の企業の地位を脅かすスピードです。
2023年にOpen AI社とペンシルベニア大学が発表した論文では、 AIの受けにくい職業はほとんど手足を動かす肉体労働を行うもの(ブルーカラー)、影響を受けにくい職業はエンジニアや研究者、税理士・会計士、デザイナーなど、高度な判断力や思考が必要とされるホワイトカラーの職種です。生成AIの影響が労働置換型でなく労働補完型であるならば、仕事を奪われるのではなくむしろ労働が効率化され、賃金が上昇する可能性があります。
将来的にはGoogle検索やChatGPTがパワーアップする形で「AIに聞けば何でもなり解決する」世界がやってくると思われます。これにより人間は「人間にしかできないこと」に集中する、ことになります。業務であれば、ルーチン的な事務作業や資料作成ではなく、根本的な事業改革のアイデアを生み出すことや、社会や人類の未来に対してどう貢献すべきかを考え直すことなどです。生活レベルで言えば、人付き合いに割く時間や、個人が「楽しめる」時間を増やすことでしょう。
これからAIと人間はどのように関わる世界となるのか。「人間の知能の相対化」が起こる。「人間の知能とはこういうものだ」とか「人間とはこういう存在だ」ということが、AI技術の発展により相対的に理解されるようになってくるはずです。その時に私たちは、「社会はどうあるべきか」という高次の問いと対峙することになります。そうして人間の感情や精神活動の仕組みがすべて相対化されたとき、人間は何を望むべきなのか。きっとそのさきには、もっと高次な、メタな問いが待っています。
これからの仕事に対する筆者の意見としては、今の労働者やビジネスパーソンは、基本的には上からの指示を忠実に実行する人がほとんどです。その中で、これから仕事の場にAIがどんどん入ってくるようになると、多くの人はいわばAIを雇用する立場になると予想します。そこで必要なのは、AIに対してうまく指示できるスキルではないでしょうか。
  • user 内田
  • time 2025年2月15日
  • tag
  • comment 1

【本】レビュー『税理士のためのプログラミング』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

税理士のためのプログラミング~Chat GPTで知識ゼロから始める本〜』

Chat GPTが書いたコードをコピペ!全ては学ばなくて良い、AI時代のプログラミング入門。
税理士事務所にとってプログラミングは、会計税務ソフトの基礎となるデータを整理したり、資料づくりお客様との連絡やご請求と、仕事効率化に繋がります。
ChatGPTには過度に丁寧に書く必要はありません。例えば、ExcelのセルA 1に100を入れる場合、
「Excelマクロ A1に100」と入力するだけです。使うプログラミングの種類(Excelマクロ、GAS、Python)です。
プログラミングで仕事を進めるために、それ以外の仕事を減らしましょう。
・まずifが入るもの、ルールが無いor自分がルールを決められない仕事は避けましょう。(お客様の方から数字を調整して欲しいような内容を避ける)
お客様の方でデータ化をしてもらえるように促しましょう。(使いやすいExcel入力も含みます)
・AI-OCRも出て来ていますが、そもそも紙で入手せず、データで入手できるようにしましょう。
業務上のステップ(工程)を減らす事が大切です。月次会計での通帳だけでいっても「通帳コピー受け取り→見ながら仕訳手入力→残高を合わせる→合わなくて見直す→コピーの漏れに気づく→再度連絡→追加コピー受け取り→手入力とチェックの繰り返し」とステップが多くなりがちです。
これがネットバンク取込みでは「連動後データチェック」のみだけで終わります。このステップこそ、プログラミングの考え方です。ステップが多いと、ChatGPTに入れる手間が掛かり、エラーの確率も上がります。
お客様からのレスポンス等が遅い時に、どこかで決断すべきときはあります。解約という事です。もちろん、解約の前にこちらで出来ることはありますが、できることをある程度やったら解約も辞さないくらいの覚悟が、効率化には必要です。仕事を依頼されて、やりとりが遅い、ステップが多いなら、やめることも覚悟しましょう。新規の紹介を受けても安易に受けるべきではありません。
効率化は、仕事量・道具・スキルがポイントです。そのスキルの一つとしてプログラミングをぜひ身につけていただければと思います。
  • user 内田
  • time 2025年2月8日
  • tag
  • comment 0

【本】レビュー『白洲次郎 一流の条件』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白洲次郎 一流の条件』 秋山圭男 宝島社

敗戦後日本において吉田茂と共にGHQや海外と交渉を行った白洲次郎さんについての書籍。
都合の悪い問題こそきちんと正視せよ
本当のことを言って初めて解決につながっていくし、自らのためになる。そのための第一歩が空気に流されず、誰に対しても言うべきことを伝える。
他人事にしない覚悟
他人様が起こした火事であろうが、自分のうちで始まった火事であろうが、燃えてしまえば只の灰になるだけで、なすり合いしても灰になってしまえば手のつけようが無い。責任の所在を自身の問題として覚悟を決めること。
煙たがられて本物
人に好かれようと思って仕事をするな、むしろ半分の人間に積極的に嫌われるように努力しないとちゃんと仕事はできねえぞ。ほんとに国家のことを考えて、ガムシャラに邁進する様な人々が指導者に就くべきではないだろうか。私心の無い人、大所、高所に立って、自分の考えや行動すらも客観的に捉えられる人、本当の愛情のある人。
物言う勇気
日本の若い人に一番足らんのは勇気だ。そう言ったら損をするとばかり考えている。
素朴な正義感を持ち、私心の無い相応の覚悟とともに、意見を翻さず堂々と物申し続けるからこそ、大きな相手からもある種の畏怖と共に尊敬も受けた。
  • user 内田
  • time 2025年2月1日
  • tag
  • comment 1

【本】プロ経営者・CxOになる人の絶対法則

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロ経営者・CxOになる人の絶対法則』 荒井裕之 クロスメディア

社内で経営者的な目線を持つ人材(CFO,CIOなど含む)になるにはどうすればよいのか、について書かれた一冊。

もしも経営人材として活躍していきたいなら、20〜30代といった若いうちから社内でも居心地の良い場所ではなく、より厳しい環境に身を投じる経験が必要不可欠です。これは私たちが20年以上、人材紹介業を行ってきた中で必ずお伝えしたいアドバイスです。失敗が許される若いうちから厳しい環境でチャレンジする経験は、その後のキャリアに多大な影響を与える、正しい選択とだけは言い切れます。

何事も他責にしてしまうメンタリティの人がいます、これはプロ経営者やCxOの適正から、最も遠い人と言わざるを得ません。現在の戦力で戦うことを受け入れた上で自分の責任で会社を良くしていくことを丹念に考えられるか。「もっと優秀な社員がいれば」など、ないものねだりの思考ではプロ経営者は務まらないのです。また、経営者とは、会社という船の行き先を決める船長の役割を担います。経営理念は経営者が社員に対して行う約束、それを表明しなければ、社員は何を信じなければわからなくなる、経営理念が社員からの求心力を生むことになるのだ。

かつては会社の中でのトップとして振る舞い、強いリーダーシップを発揮するトップが主流でした。しかし、最近では、ハラスメントやコンプライアンスに対する世の中の風潮も受け、社員のことを十分に尊重しながら、協調して経営を行うリーダーが増えています。CEOがトップダウンで組織を動かしていくよりも、CEOとその他のCxOがチームを組成して会社を運営していく。そのためには、多様な人たちを束ね良好な人間関係を築ける人間性が問われています。また、IQだけではなく、「心の知能指数」EQが必要で、自分や他者の感情を知覚し、自分の感情をコントロールできる能力、傾聴力や共感力が高く、ストレス耐性にも強いといった特徴があります。成功した時は「君の手柄だよ」と言い、失敗したときは「私の責任だ」と言えるリーダーでなければなりません。
たとえエースストライカーが組織にいなかったとしても、現状の戦力での戦い方を考え、新たな仲間を集めていく、それが経営人材の腕の見せ所です。人間には、自分と異なる価値観を持つ人や相反する意見を持つ人を排除したいという本能があります。しかし、会社でその本能を出してしまうと組織が成り立たなくなるだけでなく、多角的な視点が排除され、経営に影響を与える危険な兆候や不正を見過ごしたり、間違った方向へ走ってしまうケースもあります。様々な経験を積んだ50代の経営者が、20代の若手から謙虚に話を聞く姿勢がまさに求められます。こうしたリーダーのいる会社の業績は、高い確率で好調なはずです。
CxOの中でも、CFOには3つのタイプがあり、資金調達やIPOを得意とする人、スーパー経理部長として迅速なレポーティングができる人、FP&Aを得意とし戦略を数値にして提案できる人。CFOという存在は社長にとってイエスマンでありつつ、強力な意見対立者であるべきです。CFOはつぶさに数字を見ている立場から、社長が見えていないことを参謀として議論を誘発していかなければならないのです。
経営人材として求心力を生み出すためには、組織としてのビジョン」を掲げて周りの人たちに伝え続けること、修羅場で逃げないこと、背中で見せること、常に納得感のある解を示し続けること、人間として寄り添うことなど、いろいろ方法があります。役員だからと肩書を持つ権限を求心力の源泉と勘違いしないで、ただの人気取りを求心力の醸成と勘違いしない、これが大切です。火中でも人がついてきてくれる存在であることここぞというときにだけ手を出すことが大切で、経営者とは基本はチームの仲間に仕事を任せていくものです。社内の優秀な人を見つけて抜擢し、自分で積極的に情報発信して社外から人材を引きつけるのもチームを作る上で大切です。
  • user 内田
  • time 2025年1月18日
  • tag
  • comment 0

【本】この国を出よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この国を出よ』 大前研一・柳井正 小学館

2010年発刊の書籍ですが、少子高齢化で沈む日本にとって非常に力強いメッセージが書かれた一冊。

今や世界では、アジアを中心とした新興国が著しい経済成長を持続しています。にもかかわらず日本では、グローバル人材としての活躍が期待される若者の海外志向は弱まっています。こうした認識の甘さは、競争を避ける日本の教育と無縁ではないと思います。しかし、古今東西、競争のないところに進歩は生まれません。北欧のような家族・地域貢献・地球環境への教育により世界のリーダーにもなれず、韓国のような詰め込み教育を徹底するでもなく、ぬるま湯の日本教育は劣っていきます。
借金増の日本のバラ撒き政策が日本の沈没を招くのは数の多い収入平均以下の人の要望ばかりを聞いて高収入企業・人から高い税金を取り、さらに平均が下がっていくから。そのような国は国際競争力を持ち得ないし、国全体がますます貧乏人なっていくのは必然です。天井を高める人、富を生み出す人々が元気でいて初めてバラ撒く資金が出てくるのです。国家レベルで「稼ぐ力」をつけたよい例が、1人当たりGDPで日本を抜いたシンガポールです。税率を安くしたら、世界中からマネーと優秀な人材が集まって繁栄し、結果として国家財政も潤った。ところが、日本の税制はその逆に、国民や事業の稼ぐ力を失わせ、皮肉なことに日本の財政をも危機に立たせている
ここ10数年、もてはやされているベンチャー企業を見ていると、残念ながら、草創期の松下電器産業やソニーのような「変化し続けようという姿勢」を感じる会社がほとんどありません。そもそも「自分たちのビジネスや商品で世の中を良くしたい」「社会を変えたい」といった志があまりにも希薄に見えて仕方がないのです。バブル前30年も前の1970年頃より若い人にとって「モノ」に対する憧れが強くなり、表面的な格好良さだけが重視され親や他人に甘えて買ってもらえれば満足し自立心が無くなりました。また、戦後数十年が経ち安定した時代に生まれ育ち、若者もハンガリー精神を無くしました他人任せにするばかりで、自ら答えを探したり行動する人もいません。
「企業は、社会の公器である」このドラッカーの言葉には、企業のあるべき姿が集約されています。顧客が望む新しい価値を提供し、社会に良い変革をもたらし雇用を創出し、従業員の自己実現を図る。ここから、自分は何をしたいのか、しなければいけないのかが見えてくるのではないかと思います。僕(柳井)はいつも社員たちに「未来は現在よりも必ず良くなると信じて、必死になれとハッパをかけています。
今の日本は少子高齢化が進み年々人口が減少し経済も停滞しています。であるならば、企業は日本には期待せず、日本を飛び出して新しい市場を開拓するしかないでしょう。重要なのは「慣れない海外は不安だ」という恐怖心を払拭して、とにかく一歩を踏み出すことです。そのためには、グローバル化に対応できる人材育成が不可欠、外部に丸投げせずGEのように毎週社長がリーダー候補と会食したり、サムスンのように海外に1年間住まわせるなど、時間と費用を掛けること。
教育の本質を「どの企業も欲しがるような人材」を育成する方向へと転換すべきです。これまでのような受験を念頭に置いた画一的な教育を行う高校や、勉強をしなくても卒業できる大学は全く論外で、実務経験がなく学者に過ぎない教授が自分の得意分野の話をするだけの今の大学は無用の長物です。リーダーシップについては、位が上がってからつければいい、と考えている人がいますが違います。育つ教育の過程で身につけるものなのです。例えばヨーロッパのある有名企業では、一流大学を出ているだけてば採用せず学業以外の特筆すべき経験が大切で、リーダーシップを取った経験が22歳までに5つないと採用しないのです。なぜなら、リーダーシップを取る傾向がある人は、人生で必ずそれを反復するからです。日本も、リーダーシップのある問題解決型の人材を育成する教育に力を入れるべきです。
  • user 内田
  • time 2025年1月11日
  • tag
  • comment 4