【本】『DIE WITH ZERO』
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内田
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2025年10月4日
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本
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『DIE WITH ZERO』ダイヤモンド社 ビル・パーキンス
「死ぬときに資産をゼロにする」という考え方。多くの人が老後の不安からお金を貯め込み、結果として使わないまま人生を終えてしまう。死後に多額のお金が残るということは、その分、生きている間にできたはずの経験や喜びを逃したことになるということ。これは、お金を稼ぐことや貯めることばかりに囚われがちな現代人への強い警鐘でもあります。
人生は経験の合計だ。あなたが誰であるかは、毎日、毎週、毎月、毎年、さらには一生に一度の経験の合計によって決まる。だからこそ、この人生でどんな経験をしたいのかを真剣に考え、それを実現させるために計画を立てるべきだ。そうしなければ、社会が敷いたレールの上をただ進むだけ、死にたどり着いても自分自身で選び取ったものではない。残念ながら、そんな人生を生きている人が多い。彼らは人生という名の井戸から毎日ポンプで水を汲んでいるが、小さなコップでしか受けていない。コップはすぐにいっぱいになり、水が溢れてしまう。こうして喉の渇きを十分に潤せないまま時は過ぎ、人生の終わりを迎えるのだ。なんともったいないことだろうか。
「人生でしなければならない一番大切な仕事は、思い出づくりです。最後に残るのは、結局それだけなのですから」
現代の社会では、勤勉に働き、喜びを先送りすることを美徳とする生き方の価値が持ち上げられすぎているということだ。アリとキリギリスのうち、キリギリスはもう少し節約すべきだし、アリはもう少し今を楽しむべきだ。その中間にある最適なバランスをみつけるべきだ。
投資によって人生にリターンをもたらす経験はさまざまだ。何かを学ぶ、スキーをする、子どもたちの成長を見守る、旅行をする、友人と美味しい食事を楽しむ、世の中を変えるための活動をする、コンサートを鑑賞する―私たちはそのような経験をするために金を稼ぐ。その経験に金を使えば、記憶の配当によって、金融商品への投資と同じようにリターンが得られる。多くの人は、何のために稼ぎ、金を貯め、投資するのかを忘れているように見える。何のために貯金しているのかと尋ねると、多くの人は「老後のため」と答える。もちろん、それは正しい、私たちは将来のために老後資金を貯め、それを増やすために投資すべきだ。老後にひもじい思いはしたくないし、子どもたちに金銭的なサポートもさせたくもない。だが、年を取れば取るほど、行動に移せる経験の種類は減っていく事もまた事実だ。だが、老後で何より価値が高まるのは思い出だ。だからあなたには出来るだけ早く経験に十分な投資をしてほしいと考えている。
でも、仕事が好きだから問題。仕事を愛し、仕事そのものを充実した人生の経験とみなす人がおり、それは本当に素晴らしい。だが、仕事に情熱を捧げる人であっても「財産ゼロで死ぬ」を目指すべきであることに変わりない。たとえばダンスが生きがいの人でも、四六時中踊り続けるわけにはいかない。それに20代、30代の頃はまだしも、40代、50代、60代になれば、ダンスに捧げる時間の割合も減っていくことが考えられる。もちろん年を取ってもダンスに費やす時間を変えず、ずっとその愛する仕事で金を稼ぎ続けたいと考える人もいるだろう。だがその場合でも、稼いだ金を使うことをおろそかにすべきではなく、ダンサーとして稼いだ金を使って、贅沢な旅行をしたり、パーティーを開いたり、ライブを観たりすればいい。どれだけ仕事を楽しんだとしても、稼いだ金を使わないのなら、それはやはり無駄になる。スーパーマリオに例えれば、せっかくライフを獲得したのに、そのライフをわざわざ捨ててしまうようなものだ。
中年期にはお金で時間を買うべきです。バランスの取れた充実した生活を送るために、お金で時間を買う事も大切である。これは特に、ある程度の収入はあるが、時間は足りていない中年期の人たちにとって効果が高い。その典型例は掃除や洗濯など家事がある。私は、収入が少なかった20代の頃から、アウトソーシングを積極的に利用してきたため、土曜日の朝はアパートの部屋を掃除するのではなく、セントラルパークでローラーブレードをして遊んだり、ブランチを楽しんだりすることができた。今ではそんなふうに金を使った自分に感謝している。生涯消えることのない、楽しい週末の思い出をたくさんつくれたからだ。資金に余裕があるほど、このアプローチを採用すべきであり、時間は金よりもはるかに希少で有限だ。私自身、常に金を時間に換える方法を模索している。1日は24時間しかない。だが、工夫次第で自由な時間を最大限増やすことができる。お金を払って面倒な雑事から自分を解放するということは、マイナスの人生経験を減らし、プラスの人生経験を増やすことになる。これで、幸福感が増さないはずがない。
オーストラリア人のブロニー・ウェアは、長年、緩和ケアの介護者として数多くの患者を看取ってきた。彼女は、余命数週間の患者たちに人生で後悔していることについて聞いていた。そのなかで聞いた最大の後悔は「勇気を出して、もっと自分に忠実に生きればよかった」であった。他人が望む人生ではなく、自分の心の赴くままに夢を追い求めればよかった、と。人々は、自分の夢を実現できなかったことを後悔していた。自分の心の声に耳を傾けず、誰かに用意された人生を生きていると、人生の最後に大きな後悔を抱くのかもしれない。ウェアが2番目に多かったのは、「働きすぎなければよかった」だ。さらに働きすぎは後悔しても、一生懸命に子育てを後悔する人はいなかった。多くの人は、働きすぎた結果、子どもやパートナーと一緒に時間を過ごせなかったことを後悔していたのだ。自分が死ぬ時の事を考える、人は終わりを意識すると、その時間を最大限に活用しようとする意欲が高まり、人の幸福度が高まる。
タイムバケットというツールを使おう。まず、現在をスタート地点にして、予測される人生最後の日を70歳などゴール地点にする。そこまでを、5年または10年の間隔で区切り、これがやりたいことを入れるタイムバケット(時間のバケツ)となる。次に重要な経験、すなわちあなたが死ぬまでに実現させたいと思っていること(活動やイベント)について考える。私たちは誰でも夢を持って生きている。だが、単に頭で考えているだけでなく、実際にそれをすべて書き出すことが大切だ。「死ぬまでにやりたいことリスト」に期間を設定すると見えてくるのは、物事にはそれを行うための相応しい時期がある、という事実だ。また、期間を明確にすることで、同じ期間での両立が難しい「やりたいこと」があることに気づくかもしれない。具体的な計画を立てなければ、いつまでたっても実現しないものがあることもわかるだろう。
45~60歳に資産を取り崩し始めよう。資産は人生の終わりにゼロ付近まで低下し、その前のいずれかの時点でピークに達する。そして最適な資産のピークは45~60歳の間となる。収入のピークが資産のピークに大きく影響する。多ければピークの時期は早くなるし、少なければ遅くなる。