レビュー『豆の上で眠る』
- 内田
- 2022年6月4日
- 本
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『豆の上で眠る』湊かなえ 新潮文庫
イヤミスの女王といわれる湊かなえさんの作品で、新卒の事務所スタッフさんに薦められて読んでみました。
「~衝撃の姉妹ミステリー~幼い頃に誘拐され二年後に帰還した姉ー妹だけが感じる違和感」
というキャッチコピーでしたが、主人公の妹と姉の心模様の描き方がさすが湊かなえさんという内容で、
田舎町の何気ない風景がありありと描かれておりました。
題名の「豆の上で眠る」自体がいったいどのような意味なのだろうかと感じる所ですが、
こちらは19世紀にデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが発表した、いわゆる「アンデルセン童話」のひとつ『えんどうまめの上にねたおひめさま』がモチーフになっているからです。
このアンデルセン童話が、主人公-安西結衣子にとって、2歳上の姉である万佑子との思い出と結びついた、特別な一編となっています。
最終章で明らかにされる真相はあまりにも強烈で、代表作『告白』にも見られるような、いま見えている世界がガラガラと崩れ落ちるような、絶望的な墜落感を読者に感じさせるところが、さすが湊かなえ作品という所です。
そして最終ページの最後の文章「本ものって、何ですか―。」という言葉に対して、読者は答えに窮することになります。