レビュー『税理士はいかにミスと向き合うべきか』
- 内田
- 2023年9月9日
- 本
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『税理士はいかにミスと向き合うべきか』 清文社 白井一馬(税理士)
税理士業務の中で起こり得る実務上の致命的な判断ミスを防ぐために、税法の基本と趣旨を理解できるよう制度を分析し、失敗事例の実務への活かし方を検討している書籍。
・税理士は有効なアドバイスをしてくれないのか
顧問税理士は何も提案してくれない、 有効な投資や経営判断のアドバイスをしてくれないと書かれた書籍 を見かけます。
それを読んで微妙に劣等感を持つ税理士は多いのではないでしょう か。
しかし考えてみてください、 そういった人たちが勧める投資や節税で失敗した納税者がどれほど 多いことか。
・税法のプロとしての倫理観
大胆な節税策は上手くいくこともありますし、 成功例だけが宣伝されがちです。
失敗するリスクに責任を感じない人たちは容易に勧めてくるでしょ う。
しかし、納税者に寄り添う顧問税理士は、 失敗するリスクを納税者に負わせるわけにはいきません。
人間的な厚みが言葉に力を持たせます。
・怖いのは過大申告
多くの税理士は過少申告を税務調査で指摘されることを不安に思い 、ついつい厳しい判断をしてしまいがちですが、 追徴課税される本税は、 当初申告で正しい処理をしていたとしても支払うべきものですので 損害ではありません。
勇気をもった処理と慎重なノミの心臓。
・難しい税法についていけないリスク
消費税の納税義務者の特例や特定新規設立法人、組織再編税制、 所得拡大促進税制、財産債務調書、国外財産調書、 電子帳簿保存法、など労力を要し、 条文も20年前の倍以上になっております。
すべて勉強して記憶すべきなのでしょうか、 そうではないのでしょう。
税法が難解になったからこそ基本と立法趣旨にさかのぼる理解が必 要になり、あの処理には違和感がある、 そのようなセンサーが働けばミスは未然に防げます。
・その他、消費税、事業承継税制、小規模宅地特例、株価圧縮、 組織再編税制、役員給与、DESについて事例を検討しています。