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レビュー『同志少女よ敵を撃て』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同志少女よ敵を撃て』 早川書房 逢坂冬馬

本屋大賞を受賞した、1940年台の独ソ戦を舞台にした女性狙撃小隊のお話です。
2022年2月からのロシア-ウクライナ戦を思い浮かべてしまう、非常に心に残るお話です。

故郷の村が襲われ生き残ったセラフィマという少女が、女性狙撃小隊のイリーナから訓練され、各戦場にて狙撃の任務を遂行していきます。

最初から最後まで、戦争の凄惨さを見事に記した作品でありますが、特に後半、登場人物たちの言葉が印象的でした。
P356セラフィマの幼馴染-ミハイルの戦争は倫理や常識を狂わせるという言葉
「悲しいけれど、どれほど普遍的と見える倫理も、結局は絶対者から与えられたものではなく、そのときにある種の『社会』を形成する人間が合意により作り上げたものだよ。だから絶対的にしてはならないことがあるわけじゃない。戦争はその現れだ」

P374戦後に狙撃兵はどう生きれば良いか聞かれたリュドミラの言葉
「分かったか、セラフィマ。私は言った。愛する人を持つか、生きがいを持て。それが、戦後の狙撃兵だ。」

P467戦争後の元兵士についての記述
「戦争が終わった後、人を殺す術を身につけ、躊躇なく敵を殺す訓練を受け、実際に殺し、味方の死を見届け、ぎ虐殺を目撃し、あるいは殺戮者となり、ありとあらゆるこの世の地獄を体験した多くの兵士たちが、生身で日常に放り出される」
「殺される心配をせず、殺す計画を立てず、命令一下無心に殺戮に明け暮れることもない、困難な日常という生き方へ戻る過程で、多くの者が心に失調をきたした」

本当に、戦争はあってはならないものだと感じさせる作品でした。

 

 

  • user 内田
  • time 2022年11月19日
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レビュー『アンガーマネジメント』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンガーマネジメント』 日経文庫 戸田久美

何らかの出来事を体験したとき、その出来事に対して、わたしたちは自分の「〇〇であるべき」というコアビリーフで意味づけをします。
その意味づけによって、怒りを感じる人もいれば、まったく怒りを感じない人もいます。また、同じように怒りを感じたとしても、その程度が違うこともあります。
自分の持っているコアビリーフとうまく付き合えるようになることは、アンガーマネジメントではとても重要な取り組みです。

・対処法-6秒間をやり過ごす
カーッとなった時に、怒りにまかせて行動するのではなく、6秒間を何事もなく過ごせたら、売り言葉に買い言葉のような状況を回避することができます。6秒間をやり過ごすために数を数える方法であるカウントバックします。
・対処法-コーピングマントラ
心が落ち着く言葉を言い聞かせます。たとえば「なんとかなるさ」「大丈夫」という言葉はよく聞くフレーズですね。「死ぬこと以外はかすり傷」などでもなんでもいいのです。
・対処法-思考を止める
怒りを感じた瞬間に、頭の中に真っ白な用紙を思い浮かべて、頭の中を真っ白にします。
・対処法-深呼吸をする
怒りを感じたら、まず深呼吸してみるのも、とても有効な方法です。深呼吸することで、副交感神経が優位になり、心が安定します。

変えられること、変えられないことを分類してみましょう。コントロールできないけれども重要だと感じる場合は、悩ましいところなのですが、「変えられない現実を受け入れる」という判断をします。そして、現実を受け入れたうえで、この状況にこれ以上の怒りを抱えないため、自分が出来ることは何なのかを考えてみるのです。

怒りに巻き込まれたときは、相手の主観に惑わされないことが大切です。
相手の「べき」を否定して感情的に返してしまうと、相手の怒りが倍増します。ひどくなると、本来の議論から外れた感情のもつれまでに発展してしまうので注意が必要です。
相手の主観に巻き込まれないように「この人のいままでのキャリアのなかでは、これが正しかったんだ」と受け止めてから、俯瞰し相手の怒りを心の中で実況中継してみるといいでしょう。

相手が怒りをぶつけてきた場合、「申し訳ありません」「恐れ入りますが」という言葉で寄り添い、「この人はわたしの気持ちをわかってくれた」と納得していただけて、解決に進むケースが多いです。クレーム対応では個人批判されたと思わずに、「わたしはお客様と組織の橋渡し役」という意識で対応しましょう。自己受容・自己肯定感や自尊感情を育むことは、卑屈な怒りを防ぐには有効だと思います。防衛的な怒り、卑屈な怒りを生み出さなくてすむようになるのです。

「スルー力」を鍛えることも有効です。まともに受け止めずに聞き流す力も必要です。
怒りの感情を、半日や1日くらい引きずる人がいますが、これは本当に時間の無駄です。アンガーマネジメントで目指すのは、自分や周囲の人が、長期的に心身ともに健康である選択ができることです。例えば会社の重役の期限が悪い時には、「奥さんにいろいろ説教されたんだな」「異国から来た人だな」などと思うようにしてみましょう。

相手の感情をコントロールしようとしてはいけません。「怒っている人をどうにかしたい」という人も多いのですが、そもそも怒っている人をどうにかすることはできません。ですから大切なのは、怒っている人に巻き込まれず、惑わされないことです。怒っている人を「なんとかしよう」と思うと余計に自分が不毛な怒りの渦中に身を置くことになるので、ときには割り切ることも重要なのです。上司などが不条理に怒っている時も「またあんな怒り方をしているけれどどうしたもんかなぁ」というような軽い感じで受け止めましょう。コントロールすることを諦めたほうが、気持ちも楽になると思います。

マネジメント層の方は、日ごろから穏やかな雰囲気でいること、ほがらかな佇まいでいることを心がけましょう。例えば、「今日は穏やかな自分を演じよう」と決めて過ごします、疲れてしまうので毎日行う必要はありません。1週間に一度でも「今日1日は穏やかな自分を「自分を演じよう」という日をつくるのがいいでしょう。表情を穏やかにし口角を上げて作り笑いをするだけでも自律神経が整いリラックスしてきます。もしも部下を叱るときも、要望と理由をセットで具体的な言葉で、相手の背景や心からの改善を思い浮かべながら伝えていきましょう。

 

 

  • user 内田
  • time 2022年11月5日
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レビュー『成功者の告白』

 

 

 

 

 

 

 

 

成功者の告白』 講談社α文庫 神田昌典

サラリーマンをしていた主人公タクが、起業家として成功していく過程をマイナスの部分を包み隠さず書かれていて、
ストーリー仕立てで興味深い本でした。

仕事熱心な成功者のプライベートな部分に焦点を合わせれば、英雄像は色褪せて、親子断絶・家庭内離婚・愛人騒動・家庭内暴力・不登校・引きこもり・うつ病等、機能不全に陥っている家庭は珍しくない。
根底に流れるテーマは、ビジネスと家庭とのバランスを取りながら、いかに会社をスムーズに成長させるか、ということである。

起業をしてうまくいっていても、仕事のために家庭があるのではない、家庭が幸せになるために、仕事がある
そこを履き違えてはいけない。
妻の方も夫の成功を喜ばなければいけないとわかってはいても、感情は複雑で、夫だけが社会で認められ置いていかれることの不安もある。
あなたが思う以上に、仕事と家庭は密接に関連をしている
人間が集まると感情の場をつくる。それは家庭でも職場でも同じ。
ポジティブになるグループがあると、その動きとバランスを取るようにネガティブなグループができる。
社長がプラス思考で前向きになりすぎると、そのスピードの出しすぎを抑えるかのように、マイナス思考の人間が出てくる。

急成長企業は創業四年もすると八割方マネジメントの問題に直面し、社員が病欠しがち、遅刻しがち、社員が居つかない、配送上の問題、品質の低下、モラルダウン、社員が社長の悪口を言い出す、などなど。
この時期は会社の第二創業期で、家業から企業への生まれ変わる契機。
お客様のクレームの質が変ってきており、怒りを受けた社員がその怒りを家庭に持ち帰り、自分に向けてしまう社員は病欠や退職をすることになる。
経営では、そこに集う人間が感情の場を形成してその動きを推し進めるため、社員や顧客の感情を大切にできるようソフト面のシステム化の必要がある。

働く場」自体を向上させていかないと問題が繰り返す。
能力がないからさっさとクビを切るという文化は、相手から奪うという文化でありそれは作らない方が良い。
これからの時代は、発想力を導く仏の経営が良いが、ただ優しさだけではだめで規律と厳しさも併せ持つべき。
子育てと同じで母親の愛という土台(相手を承認すること)の上に父親の規律(会社の憲法であるクレドを決めて繰り返し伝える)を持ってこないと、チーム体制の組み立てはできない。
クレドについては、自分の意見を言ってもらい価値観や行動様式を実際に応用するために、考える人間を作っていく。
会社で新しい試みを実行していくにあたって、反発が出た場合は、一対一で話し合う機会を持って、相手の怒っている理由に徹底的に耳を傾け、お互いにわだかまりを解消しておく必要がある。

 

  • user 内田
  • time 2022年10月22日
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レビュー『働き方5.0』

 

 

 

 

 

 

 

 

働き方5.0』 小学館新書 落合陽一

 

もはや、デジタル情報があふれ、人工物と自然物が垣根なく存在する環境が人間にとっての「新しい自然」です。
AIやロボットなどの進化もめざましいものがあります。
2017年頃からは、日本国内でもRPAがブームになりました。
ホワイトカラーの典型的なデスクワークをプログラムによって自動化して代行していくRPAは、工場で産業用ロボットがブルーカラーの仕事を代行するように、オフィスでホワイトカラーがやってきた仕事をこなしてくれますので、人間は努力の仕方を変えることを求められています
一方で、機械では代替されにくく、付加価値の高い能力を持つ人材もますます求められ、人材としての価値が高まっています。
AIやロボットが幅広い分野で進化し人間と共に働いていく時代イコール「働き方5.0」の時代は、人間がやるべきことの本質を考えこれからの世界を作るための考え方を提示する必要があります。
適切な課題設定を社会に創造するのが、機械に代替されない付加価値の高い人材=クリエイティブクラス の役割です。
シンギュラリティ(AIによる生活革命)と言えるほどの変化はまだ訪れていませんが、ウーバーイーツのようにシステムが人間の上司のように振る舞う場面は増えております。
そのような世界で、つぎの時代に向けてどんなことを学ぶべきか考えるのは本当に難しいことですが、「コンピュータには不得意で、人間がやるべきことは何か」を模索することが大事です。
いまの世界でホワイトカラーが担っている仕事は、ほとんどシステムが担うことになるかもしれませんが、システムになくて人間にある「モチベーション」に注目して、コンピュータを使いこなし「魔法をかけられる人」(システムを作る側)になれるかで大きな違いが生まれるでしょう。
いまでも多くの親は、我が子が「大企業の社員」になることを望んでいますし、学校教育も専門性を深めるよりも処理能力が高いジェネラリストを育てることを目指しているように思えます。しかし、いまの小中学生が将来「コンピュータに駆逐されない自立的な仕事」をできるようになるには、何でも水準以上にこなせるジェネラリストではなく、専門性を持つスペシャリストになることが必要です。
現代のリソースは脳の中だけにあります。もはや栄養のない情報だけでは満足できない世界になっており、自分にとって価値のある、美味しい肉や野菜のような情報を与え続けなければ、人々が満足しない世界になっています。誰にでも作り出せる情報の中には、価値のあるリソースはない。その人にしかわからない「暗黙知」や「専門知識にこそリソースとしての値打ちがあります。
  • user 内田
  • time 2022年10月8日
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レビュー『元彼の遺言状』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元彼の遺言状』 新川帆立 宝島社文庫

2021年度の第19回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。
作者の新川帆立(しんかわほたて)さんは東大法学部卒の弁護士で1991年生れ。
この若さでミステリー小説を書いて賞をもらうという点が凄いです。

作品にもその弁護士としての知識経験がふんだんに盛り込まれ、主人公の剣持麗子も大手法律事務所の20代弁護士です。
弁護士のお話は小説になりやすいですし、海外ドラマのSUITのようにドラマティックです。
大手法律事務所の内情もわかりますし、作品に出てくる村山弁護士のように町の小さな法律事務所の弁護士像もよく描かれています。

こちらの作品はミステリー作品で殺人事件も出てきますが、私が注目したのは経済小説の要素も入っていた点です。
作品では大手製薬会社-森川製薬の御曹司・森川栄治が亡くなるところから物語がはじまるのですが、その森川製薬の経営や株式について、詳細に書かれていきます。
株式の相続は現代の中小企業でも大きな課題となっておりますが、上場している大手企業の場合も同様に複雑な話になりがちです。

経営陣としてはあまり良からぬ人たちに株式がわたってほしくないですし、会社にある程度の影響を与えるには自分が株式を取得したいと考えます。
また、具体的なM&Aの話が出てくるあたりも経済小説チックなのですが、株式譲渡契約書や法務DD報告書の話も出てくる所も身近に感じました。

新川帆立さんは現在は弁護士業務は行わず、小説家業をメインで行われているようで、今後の活躍が楽しみです。

 

 

  • user 内田
  • time 2022年9月24日
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レビュー『口腔ケアと酸素ルームで100歳まで健康に生きる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口腔ケアと酸素ルームで100歳まで健康に生きる

 

弊社スタッフのご親族のお客様が酸素ルーム事業を開業されたので、行きましたところ、こちらの本がありましたので読ませていただきました。
酸素ルームの感想から書きますと、60分ほど体内に酸素を入れることで、疲労が取れてリラックスができ、美容効果も高いそうです。
実際に60分ほど使ってみて、疲れも取れて首肩の痛みも和らぎました。
以下、書籍より。
酸素ルームに入ると、時間の経過とともに徐々に手足などの末梢部の血流量が増大し、交感神経のはたらきを抑制して、副交感神経のはたらきを高めることで自律神経のバランスが正されます。
酸素ルーム滞在後は、赤血球中のヘモグロビンが酸素と結びついたきれいな丸となり、一つひとつが独立して血液がサラサラになり不用物を流してくれます。
監修をお願いしました神戸大学藤野英巳教授と日本気圧バルク工業の共同研究で、NK細胞が短時間で増加することが確認されました。NK細胞とは、リンパ球に含まれる免疫細胞で、人体に侵入した外敵などの異常細胞を攻撃、殺傷する能力を備えている細胞です。
  • user 内田
  • time 2022年9月10日
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レビュー『若手育成の教科書』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若手育成の教科書~サイバーエージェント式 人が育つ抜擢メソッド』 曽山哲人(サイバーエージェントCHO)

サイバーエージェントのCHO(最高人事責任者)の方が書いた著書ということで読んでみました。

〇どの企業も悩む「若手が育たない」問題
・声
マネジャー人材がいない、リーダー候補が不足している。いざマネジャーに昇格させても、なかなかうまくいかない。以前より若手が受け身になっている。さまざまな企業の人事担当者などから、このような声を聞くことがあります。
また、若手社員からも、もっと成長したいけれどその機会が今の会社にはない。新入社員のころは研修も多く学ぶことがあったが、入社2年目の今、リモートワークで放置されている、など多くの悩み相談を受けます。
・若手育成で一番大切なこと
私はさまざまな若手社員を見てきましたが、共通して言えるのは、みんな成長意欲があることです。最初は全員、やる気があって意欲もある、それが続かないことが問題なのです。若手が成長したいと思う理由は、自信を手にしたいからです。つまり若手育成で最も大切なことは、自信を持たせることなのです。
・自信とは
若手は例えば上司から「このスマホの設定わかるかな」と言われれば「これですね」と躊躇せず上司のスマホを操作してくれます。上司よりもできる自信があるから迷わず行動できるのです。若手の言う「自信」とは、「どんな人たちともやっていける自信」「自分で稼げる自信」「誰かのためになっているという自信」「家族との時間を優先しても仕事はしっかりできている自信」といえます。
・育てるのではなく育つ仕組み
今の時代に必要とされているのは、部下を細かくあれこれ管理するクロスマネジメントではなく、必要に応じて適切なタイミングで支援(サポート)をおこなうことです。社員が自らの判断で積極的に仕事を進める、「自分」で「走っていける」環境(自走環境)をつくることが大切です。
〇「言わせて、やらせる。」で人は育つ
・自走環境、自走の四つのサイクル
①抜擢:期待をかけられることで自走のスイッチがONになる。
②決断:覚悟を決める。意思決定によって、自らの決断経験を増やしていく。
③失敗:成長には欠かせないもの。必要不可欠なプロセスと理解する。
④学習:失敗を次の経験に活かすための内省。次のステージのために準備する。
・なぜマイクロマネジメントではダメなのか
具体的に「こうしなさい」と上司が部下に指導する、残念ながら、これでは人は育ちません。それどころか、上司からあれこれ言われることで、やる気もどんどん低下し、やがて自分の頭で考えることをやめてしまい、上司に言われるとおりにしか動かない、受け身の人間になってしまいます。マイクロマネジメントは、細かければ細かいほど、部下は思考停止に陥ってしまいます。
一方で、「言わせて、やらせる。」であれば、若手は自分の頭で考えて話しますし、主体的に働きます。この「自分で考えて、自分で動く」という自走環境でサイクルを回していくことで、人はとてつもないスピードで成長します。
・育て上手と育て下手を決定的に分ける差
育て下手な人はダメ出しばかりで自信を削っていきます。「君はこれだけしていればいい」と自分のやり方を押し付ける人も同様。若手は委縮してしまい、これでは自信がつくことはありません。
思いつきや気まぐれで仕事を振るのもNGです。忙しい職場で起こりがちなのは「そういえば、これやって」「あれもお願い」と矢継ぎ早にあれこれ仕事を若手に振ってしまうこと。部下からすれば仕事の全体像が見えず、数をこなしても仕事を理解したという実感がわきません。
では懇切丁寧に事細かにやり方を教えてくれたらどうでしょう、実はこれが最も多い育て下手、若手に教えすぎてしまう上司です。何もかも教わることで、思考停止になってしまい、若手は成長しません。「〇〇さんがいなければ、私はまだまだ何もできない」と劣等感を覚える若手は少なくありません。
育て上手な上司は、若手に自ら考えさせたり経験させたりして、何かあったときだけサポートします。
・若手の成長に意思表明が欠かせない理由
できる根拠もないのに「やります」と言った人が、「やる」。そうすると、だんだんとできるようになる。言ってしまえば、それだけなのです。本人が自ら抜擢を促し(セルフ抜擢)、「自走サイクル」を回しているからです。自分でたくさん決断し、失敗を経験しているので、短期間で爆発的な成長を遂げているのです。最初の一歩である意思表明がいかに大事であるかがわかります。「周囲のサポートや応援が増えること」「周りから認められる」など意思表明のメリットをしっかり伝えることが大切です。
・普段から自分の言葉で話させる
「やっぱりAですよね。〇〇さんはどんなふうに解釈しましたか?」。部下にもう一度言ってもらう。ただこれだけですが、絶大な効果を発揮します。一回問いかけてあげるだけで、脳みそを使うアウトプット作業につながり、受け身だった人も、自然と自分の意見を言うようになり、そこから「こういうことをやってみたいです」といった、意思表明が生まれるのです。私がおすすめするのは「毎日5分の朝ミーティング」です、決まった時間に昨日やった仕事や今日やる仕事について話してもらい、それに対して「それはよかったね」「その動きはいいね」などと、ポジティブに反応すると「見てるよ」サインが伝わり、部下に安心感が生まれます。
・「やりたいです」と言える空気づくり
日々のコミュニケーションを意識的にポジティブなものにしていくことがポイントです。最も大切なのは、いざ本人が「やりたいです」と申し出たら「いいね」とその勇気を称賛することです。失敗しても責しない、失敗で得たものは何か聞く、失敗後に成功した人のストーリーを聞かせる、チームの失敗談を共有する、特に上司が積極的に自分の失敗を話すことは心理的安全性の観点から、とても有効です。
〇抜擢(ばってき)―「期待をかける」と自分から動き出す
・抜擢3原則
1.抜擢は成果を上げるためにおこなう 2.抜擢はすべてのメンバーにおこなえるし、おこなうべき 3.正しいやり方で抜擢すれば人は勝手に成長する。抜擢が足りていないかどうかは自社の抜擢履歴を洗い出してみると良い。(氏名、入社〇年目、抜擢内容、期日、気づき)
・抜擢とは期待をかけること
期待をかけ合うチームは自然と人が育ちます。「あなたはもっと成長できる」「君にこれができると思うから、お願いしたい」「あなたの力が必要だ」期待をかけていることは抜擢セリフで必ず相手に伝えます。
抜擢のミスリードに気を付けるため、若手を抜擢する際には「責任者として抜擢したのだから、立ち振る舞いにはきをつけるように」「周囲の手本となってほしいから、謙虚になってほしい」と勘違いするなとはっきり伝えましょう。
・抜擢前後はほめることで信頼残高を貯める
ほめゼリフの作り方は3つの切り口で考えるとよいです。1.発言の何が良いのか「会議でのあの発言、会社視点で良かったよ」 2.行動の何が良いのか「早い報告だったから、軌道修正が早くできたよ」 3.考え方の何が良いのか「複数の案を持ってきたのは、とても素晴らしいね。」。そして、叱る時もこの3つの切り口は同じです。
〇決断(けつだん)―「決断経験」で大きく成長する
・仕事とは決断の連続
抜擢だけしてあとは放置でもいいのかというとそういうわけにもいきません。抜擢はあくまで「自走サイクル」の起点。それに続く、決断経験をしてもらう必要があります。それは自分で決めると、自分で責任を取るようになり、自分で学びを増やせるからです。
仕事とは決断の連続です。上司からのメールにすぐ返信したほうがいいのか、内容を精査してから返信したほうがいいのか。こういった決断は意外と重要で、どちらを選ぶかで仕事の成果にも大きな差が生まれます。
ここで一番よくないのは、決断しないことです。決断に時間をかける人が一回決断する間に、5回、10回と多くの決断をおこなっている人もいるのです。それゆえ、抜擢した後は、部下自身に決断経験をしてもらい、その際にスピードを重視し、短時間で数多くの決断をおこなうよう促します。そのスピードを評価するため「すぐに行動に移したのはいいですね」「軌道修正が早くできてよかった」などのほめゼリフを使います。
・週1の振り返り面談で内省を強化
次の決断をより良質なものとするためにも内省は欠かせませんので、おすすめが定期的にメンバーと面談やミーティングを設けて、決断経験をしっかり積み上げているかを一緒に確認することです。決断経験を振り返り、そこから得た気づきを聞きます。決断経験を意識的におこなうことで気づきと学びを得て、さらに次の決断に活かすことができる。決断経験の量をおのずと増やすことができるだけでなく、「この1週間でたくさんの経験と学びを得た」と自身の成長も実感できる、まさしく一石三鳥です。
〇失敗(しっぱい)―「成長のプロセス」ととらえる
・失敗がなければ成長もない
誰しも失敗はしたくないものですが、ほとんどのチャレンジには失敗がつきものです。失敗はするものです。これが「自走サイクル」の中に失敗が組み込まれている理由です。ビジネスにおいてはなおさらで、一度も失敗せずに成功したという経営者の話は聞いたことがありません。むしろ、成長企業の経営者は最初から失敗ありきで物事を考えています。「失敗は成功の母」というように、一つひとつの失敗は成功するために不可欠な要素です。
・決断も失敗するのが当たり前
メンバーの決断もまた、失敗するのが当たり前です。経験が浅いメンバーは特に失敗を恐れやすく、決断に余計な時間をかけてしまいます。そうなると当然、決断のサイクルを回すまでにも時間がかかり、決断の質はいつまでも上がらないままです。ですので、事前に「失敗をしてもいいんだ」というメッセージを伝えましょう。おすすめは対話の中でシミュレーションをさせることです。マネジャーは答えやアドバイスを告げるのではなく、質問を投げかけます。「Aという方法でやってみた場合、どんな状況が起こりうるかな?」「Aの方法でやってみた場合の、流れをシミュレーションしてみよう」
決断の失敗で責任を取る必要はありません。その代わりに「自走サイクル」の失敗の次のステップである「学習」に進めばいいのです。若手社員に望むことは成功でも失敗でもなく、成長です。
・挑戦した敗者にこそセカンドチャンスを与える
失敗を経験した人は、次に活躍する可能性が非常に高い人でもあります。「失敗→認識→内省」という失敗サイクルを回すことで、失敗経験を経験値に格上げすることができます。
「取り返しのつかないような失敗をしてしまった」と自信を完全に失ってしまうのは問題です。そこで、「抜擢された人が挑戦に失敗してもやり直せる」というセーフティネットを張っておく必要があります。具体的には「セカンドチャンスを与える」ことです。言葉にすることで、セカンドチャンスは会社と社員の約束になります。言葉にしておかないと、「本当にまたチャンスをもらえるのかな?」と疑心暗鬼になり、抜擢された人は決断することを恐れてしまうでしょう。セカンドチャンスの約束をしていなければ、文化や風土にはなりえません。社長の藤田は「失敗者は、挑戦した結果で失敗しているから、ちゃんとねぎらってね」と折に触れて私に話します。私は「ねぎらい面談」を活用します。撤退したプロジェクトのリーダーは、みんな、くやしそな顔をします。そのようなリーダーには、1.「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけます。そして2.「チャレンジしてくれて本当にありがとう」と、チャレンジしたことに対する感謝を伝えます。その後に振り返りと未来へのお話をします。
〇学習(がくしゅう)―課題を見つけて次の抜擢につなげる
・学習のための面談は「相手の話を9割聞く」でちょうどいい
「自分で育つ、自走人間をつくる」ことが目的ですので、相手の話を聞き切りましょう。上司である自分のほうが経験は豊富だからと、ついアドバイスをしたくなってしまう気持ちはわかりますが、「学習」の基本は「内省」ですので、上司がおこなうのは質問を投げかけることだけです。本人の口から失敗の理由が語られ、「こうすべきだった」という反省もある。ここまで理解していれば、次に同じ失敗を繰り返す可能性が低いことは、話を聞いただけで十分わかったと思います。上司が先回りして「〇〇すべきだったね」などと言う必要はないのです。答えは本人の中に必ずあるからです。学習とは、自ら答えを導き出す過程そのもの。そこにアドバイスなどいりません。また面談では、本人が素直に自分のことを語ることに意味があります。「今回の失敗は、Aさんにとって、どんな意味があると思いますか」と今回の失敗の意味を聞く、そして「今の自分が、1年前に戻るとしたら、何をやりますか?」と後から成長した自分がタイムマシンに乗って1年前に戻ったら、どのような決断をするか、自分への指導を考えてもらう、ことも有効です。
・良い面談には次の「抜擢」がある
面談は、必ず若手の学習を助ける場として活用できますが、陥りがちなのが過去ばかり話してしまうことです。もちろん「良かった・悪かった」を見ることは問題ありません。しかし、それ以上に大事なのは、未来を話すことです。明るい未来が見えてくれば、自然と期待感は高まりますので、面談では期待をセットで伝え、一緒に未来を考えましょう。人は期待されると、前向きになりがんばれます。がんばると結果を出せるようになり、成長していきます。このサイクルで、人はどんどん成長していきます。
次の抜擢を考える際にぜひやっていただきたのが「大化けイメトレ」です。10年後にどんな人になっているか、大成功しているとしたらどうなっているか、世界で有名になっているとしたら、どう紹介されるか。こうした質問を投げかけ、未来の大きな可能性を、面談を通じて部下と一緒に探りましょう。目標を明るい未来につなげていき、その目標により本人が自走できるようにしていきましょう。
・「抜擢カルチャー」を社内に浸透させる
伸びるポストをみんなで探して、そこにもっと人を充てていく。本人の強み×伸びる仕事=大きな成果。ポジションありきで、人をアップして、動かしていくことが大切です。なぜなら、人ありきで抜擢を考えすぎてしまうと、どうしても「今ある伸びないポストに人を充ててしまう」というリスクがあるからです。私たちは「抜擢は足りているか」を常に気にしていますが、人の成長だけに気を取られてしまうと、会社の成長・成果がおろそかになってしまう恐れもあります。「抜擢」が組織に活力を与え、人材育成の可能性をさらに高め、経営にも「大きな成果」という形でインパクトを与えるものであると、強く実感しています。「抜擢」を全社員に浸透させたい、「言わせて、やらせる」を個々人でも実践してほしいという願いから、「抜擢のしくみ」ではなく、あえて「抜擢カルチャー」という言い方をして、普段から自然と誰もが取り入れていくものと話しています。
  • user 内田
  • time 2022年9月3日
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