レビュー『一切なりゆき』
- 内田
- 2020年2月22日
- 本
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『一切なりゆき~樹木希林のことば~』 樹木希林・著 文春新書
2018年9月にご逝去された樹木希林さんの言葉が載った著書。150万部以上販売されているそうです。
らしい言葉がたくさん並べられていて、第1章から第6章までそれぞれ印象に残った言葉を書いてみます。
第1章 生きること より
「しっかり傷ついたりヘコんだりすれば、自分の足しや幅になる」(「この女性の軌跡」(2001年7月))
人として生まれたからには善も悪も欲も全部ひっくるめて、ちょっと削ぎ落したところで着地したいというのはある。
第2章 家族のこと より
「私がしっかり土台をつくっておきさえすれば、この家族の絆はなくならない」(「オカンと裕也と娘・也哉子と」2007年5月)
少々大黒柱がひしゃげても、歪んでいても、土台さえしっかりしていれば家は何とか立っていられる。だから、自分の結婚生活についても、私がしっかり土台をつくっておきさえすれば、この家族の絆はなくならないと信じられたのかもしれません。
第3章 病のこと、カラダのこと より
「病というものを駄目として、健康であることをいいとするだけなら、こんなつまらない人生はないだろう」(「全身がん 自分を使い切って死にたい」2014年5月)
一つのものに表と裏があるように、物事には善の面もあれば、悪の面もあるとわたしは思うんです。そういう東洋的な考え方が自分の体の中に入ってきて、宇宙の大きなものに対して働きかけるような祈りという行為に感応していく。それが総体的にひとりの人間となって生き生きしてくるんじゃないかという感覚なんです。
第4章 仕事のこと より
「俯瞰で見ることを覚え、どんな仕事でもこれが出来れば、生き残れる」(「この人の言葉は宝物だ!」2002年8月)
私はお仕事で関わっている人達を、自分も含めて俯瞰で見るようにしているんです。そうすると自分がその場でどんな芝居をするべきかがよく分かる。
第5章 女のこと、男のこと より
「相手のマイナス部分がかならず自分の中にもあるんですよ」(「表紙の人 樹木希林」2015年7月)
どの夫婦も、夫婦となる縁があったということは、相手のマイナス部分がかならず自分の中にもあるんですよ。それがわかってくると、結婚というものに納得がいくのではないでしょうか。ときどき、夫や妻のことを悪く言っている人とみると、「この人、自分のこと言ってる」と、心の中で思っています(笑)
第6章 出演作品のこと より
「人間が老いていく、壊れていく姿というのを見せたかった」(「女優魂の渾身と自由 ヌードよりも恥ずかしい」2018年6月)
入れ歯を外したのよ。映画『万引き家族』で。髪の毛もだらぁと長くして、気味の悪いおばあさんでしょう?~ 人間をいかにして自分の身体を通して表現するか。それが役者の仕事なんだけれど、『万引き家族』がパルムドールを受賞したのは、個々の人間がどうやってそこまで生きてきたかを、丹念に見ながら積み重ねていった結果なんじゃないかと思う。