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レビュー『騎士団長殺し』
『騎士団長殺し』 新潮社 村上春樹
2017年に発刊された村上春樹さんの長編小説、4年ほどかけて上下巻(第1部507P・第2部541P)を読み終わりました。
村上さんの長編小説はけっこう読んでいますが2000年代に入ってからは、
『海辺のカフカ(2002年)』→『1984(2010年)』→『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(2013年)』
の順で読んできました。
村上春樹さんの作品を熱狂的に愛する人のことを”ハルキスト”と呼ぶそうですが、そこまで熱狂的ではなくても、学生時代から世界観や言葉が好きで読み続けています。
今回読んだ『騎士団長殺し』は、肖像画家の主人公「私」が、住んでいるアトリエの屋根裏で『騎士団長殺し』というタイトルの日本画を発見し、さまざまな不思議な出来事へと巻き込まれていく話です。
村上春樹さんの長編小説の主人公は、印象的な言葉を残すが多いのですが、今回の作品でもいくつかありました。
「大胆な転換が必要とされる時期が、おそらく誰の人生にもあります。そういうポイントがやってきたら、素速くその尻尾を掴まなくてはなりません。しっかりと堅く握って、二度と離してはならない。世の中にはそのポイントを掴める人と、掴めない人がいます。」(第1部p158・免色さん)
「完成した人生を持つ人なんてどこにもいないよ。すべての人はいつまでも未完成なものだ。」(第2部p513・主人公)
「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない。でも少なくとも何かを信じることはできる」(第2部p528・主人公)
- 内田
- 2021年12月25日
- 本
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レビュー『チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃』
『チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃』WEILIN ZHAO 東洋経済新報社
アメリカのGAFAMに対抗するかのように、中国で急成長を遂げたチャイナテック。
1978年の鄧小平による改革・解放で沿岸部-深圳や厦門に経済特区を設け、2010年に日本を抜きGDP世界2位となった中国経済は、大量投資と輸出指導モデルが行き詰まり、イノベーションへの戦略転換を図った象徴がチャイナテック。
ここ最近、富の源泉が有形資産のモノから無形資産の情報に移りつつある中で、データを占有するプラットフォーマー企業が優位に立っております。
このチャイナテックの動向を見ることで世界の潮流を読み取ることができます。
・BATHとTDMP中国の巨大IT企業は「BATH」と呼ばれているBaidu(バイドゥ・検索)、Alibaba(アリババ・EC)、Tencent(テンセント・SNS)、Huawei(ファーウェイ・通信機器)の4社。BATHに続く中国の主要IT企業は「TDM」と呼ばれるToutiaoとTikTok(トウティアオ・ニュース配信、ティックトック・動画配信)、Didi Chuxing(ディディチューシン・ライドシェア)、Meituan(メイトゥアン・生活関連)、PDD(SNS型EC)。各社の時価総額はGAFAに迫る勢いである。
・研究開発と特許取得
研究開発費を重視するファーウェイの2010〜2019年の研究開発費の合計は、日本円にして約10兆円。ファーウェイの18万人以上の社員の約45%が研究開発に従事している。AIやブロックチェーンなど、「先端分野」に分類される10項目のうち、9項目の特許出願件数で2017年には中国が世界首位に立ちました。
・AIとブロックチェーン
AIの画像認識技術によるゴミの自動分別サービスの例。中国ではゴミの分別という習慣がつい最近までなかったこともあり、AIが新しい習慣に戸惑う人々をサポートする役割を果たしている。ブロックチェーンに関して、金融や物流、保険サービスのような分野において、国を挙げて研究開発・普及が進められている。「情報を改竄できない」という特徴を生かして様々な分野への活用が進んでいる。
・人口ボーナスが終わってるからこそのデジタルイノベーション
中国の高度成長期は既に終わっており、2019年のGDP成長率は6.1%で、1991年以降最低の水準(2007年14.2%。ここ数年は6~7%で推移)。高度経済成長の最中であるというのは誤った理解であるが、決して小さな数値ではない。
・デジタルマインド
日本社会がデジタルイノベーションを広く受容していくためには、よりポジティブな世論形成と、デジタルマインドの涵養が重要。高齢化が進み、デジタルネイティブ層の薄い日本においては、「若い人はテクノロジーに慣れてるけど」などと言っている場合ではなく、このまま衰退の一途を辿りたくないのであれば、趙氏の提言をリアリティある施策をもって実行に移していくことが欠かせない。
- 内田
- 2021年12月11日
- 本
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