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レビュー『若手育成の教科書』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若手育成の教科書~サイバーエージェント式 人が育つ抜擢メソッド』 曽山哲人(サイバーエージェントCHO)

サイバーエージェントのCHO(最高人事責任者)の方が書いた著書ということで読んでみました。

〇どの企業も悩む「若手が育たない」問題
・声
マネジャー人材がいない、リーダー候補が不足している。いざマネジャーに昇格させても、なかなかうまくいかない。以前より若手が受け身になっている。さまざまな企業の人事担当者などから、このような声を聞くことがあります。
また、若手社員からも、もっと成長したいけれどその機会が今の会社にはない。新入社員のころは研修も多く学ぶことがあったが、入社2年目の今、リモートワークで放置されている、など多くの悩み相談を受けます。
・若手育成で一番大切なこと
私はさまざまな若手社員を見てきましたが、共通して言えるのは、みんな成長意欲があることです。最初は全員、やる気があって意欲もある、それが続かないことが問題なのです。若手が成長したいと思う理由は、自信を手にしたいからです。つまり若手育成で最も大切なことは、自信を持たせることなのです。
・自信とは
若手は例えば上司から「このスマホの設定わかるかな」と言われれば「これですね」と躊躇せず上司のスマホを操作してくれます。上司よりもできる自信があるから迷わず行動できるのです。若手の言う「自信」とは、「どんな人たちともやっていける自信」「自分で稼げる自信」「誰かのためになっているという自信」「家族との時間を優先しても仕事はしっかりできている自信」といえます。
・育てるのではなく育つ仕組み
今の時代に必要とされているのは、部下を細かくあれこれ管理するクロスマネジメントではなく、必要に応じて適切なタイミングで支援(サポート)をおこなうことです。社員が自らの判断で積極的に仕事を進める、「自分」で「走っていける」環境(自走環境)をつくることが大切です。
〇「言わせて、やらせる。」で人は育つ
・自走環境、自走の四つのサイクル
①抜擢:期待をかけられることで自走のスイッチがONになる。
②決断:覚悟を決める。意思決定によって、自らの決断経験を増やしていく。
③失敗:成長には欠かせないもの。必要不可欠なプロセスと理解する。
④学習:失敗を次の経験に活かすための内省。次のステージのために準備する。
・なぜマイクロマネジメントではダメなのか
具体的に「こうしなさい」と上司が部下に指導する、残念ながら、これでは人は育ちません。それどころか、上司からあれこれ言われることで、やる気もどんどん低下し、やがて自分の頭で考えることをやめてしまい、上司に言われるとおりにしか動かない、受け身の人間になってしまいます。マイクロマネジメントは、細かければ細かいほど、部下は思考停止に陥ってしまいます。
一方で、「言わせて、やらせる。」であれば、若手は自分の頭で考えて話しますし、主体的に働きます。この「自分で考えて、自分で動く」という自走環境でサイクルを回していくことで、人はとてつもないスピードで成長します。
・育て上手と育て下手を決定的に分ける差
育て下手な人はダメ出しばかりで自信を削っていきます。「君はこれだけしていればいい」と自分のやり方を押し付ける人も同様。若手は委縮してしまい、これでは自信がつくことはありません。
思いつきや気まぐれで仕事を振るのもNGです。忙しい職場で起こりがちなのは「そういえば、これやって」「あれもお願い」と矢継ぎ早にあれこれ仕事を若手に振ってしまうこと。部下からすれば仕事の全体像が見えず、数をこなしても仕事を理解したという実感がわきません。
では懇切丁寧に事細かにやり方を教えてくれたらどうでしょう、実はこれが最も多い育て下手、若手に教えすぎてしまう上司です。何もかも教わることで、思考停止になってしまい、若手は成長しません。「〇〇さんがいなければ、私はまだまだ何もできない」と劣等感を覚える若手は少なくありません。
育て上手な上司は、若手に自ら考えさせたり経験させたりして、何かあったときだけサポートします。
・若手の成長に意思表明が欠かせない理由
できる根拠もないのに「やります」と言った人が、「やる」。そうすると、だんだんとできるようになる。言ってしまえば、それだけなのです。本人が自ら抜擢を促し(セルフ抜擢)、「自走サイクル」を回しているからです。自分でたくさん決断し、失敗を経験しているので、短期間で爆発的な成長を遂げているのです。最初の一歩である意思表明がいかに大事であるかがわかります。「周囲のサポートや応援が増えること」「周りから認められる」など意思表明のメリットをしっかり伝えることが大切です。
・普段から自分の言葉で話させる
「やっぱりAですよね。〇〇さんはどんなふうに解釈しましたか?」。部下にもう一度言ってもらう。ただこれだけですが、絶大な効果を発揮します。一回問いかけてあげるだけで、脳みそを使うアウトプット作業につながり、受け身だった人も、自然と自分の意見を言うようになり、そこから「こういうことをやってみたいです」といった、意思表明が生まれるのです。私がおすすめするのは「毎日5分の朝ミーティング」です、決まった時間に昨日やった仕事や今日やる仕事について話してもらい、それに対して「それはよかったね」「その動きはいいね」などと、ポジティブに反応すると「見てるよ」サインが伝わり、部下に安心感が生まれます。
・「やりたいです」と言える空気づくり
日々のコミュニケーションを意識的にポジティブなものにしていくことがポイントです。最も大切なのは、いざ本人が「やりたいです」と申し出たら「いいね」とその勇気を称賛することです。失敗しても責しない、失敗で得たものは何か聞く、失敗後に成功した人のストーリーを聞かせる、チームの失敗談を共有する、特に上司が積極的に自分の失敗を話すことは心理的安全性の観点から、とても有効です。
〇抜擢(ばってき)―「期待をかける」と自分から動き出す
・抜擢3原則
1.抜擢は成果を上げるためにおこなう 2.抜擢はすべてのメンバーにおこなえるし、おこなうべき 3.正しいやり方で抜擢すれば人は勝手に成長する。抜擢が足りていないかどうかは自社の抜擢履歴を洗い出してみると良い。(氏名、入社〇年目、抜擢内容、期日、気づき)
・抜擢とは期待をかけること
期待をかけ合うチームは自然と人が育ちます。「あなたはもっと成長できる」「君にこれができると思うから、お願いしたい」「あなたの力が必要だ」期待をかけていることは抜擢セリフで必ず相手に伝えます。
抜擢のミスリードに気を付けるため、若手を抜擢する際には「責任者として抜擢したのだから、立ち振る舞いにはきをつけるように」「周囲の手本となってほしいから、謙虚になってほしい」と勘違いするなとはっきり伝えましょう。
・抜擢前後はほめることで信頼残高を貯める
ほめゼリフの作り方は3つの切り口で考えるとよいです。1.発言の何が良いのか「会議でのあの発言、会社視点で良かったよ」 2.行動の何が良いのか「早い報告だったから、軌道修正が早くできたよ」 3.考え方の何が良いのか「複数の案を持ってきたのは、とても素晴らしいね。」。そして、叱る時もこの3つの切り口は同じです。
〇決断(けつだん)―「決断経験」で大きく成長する
・仕事とは決断の連続
抜擢だけしてあとは放置でもいいのかというとそういうわけにもいきません。抜擢はあくまで「自走サイクル」の起点。それに続く、決断経験をしてもらう必要があります。それは自分で決めると、自分で責任を取るようになり、自分で学びを増やせるからです。
仕事とは決断の連続です。上司からのメールにすぐ返信したほうがいいのか、内容を精査してから返信したほうがいいのか。こういった決断は意外と重要で、どちらを選ぶかで仕事の成果にも大きな差が生まれます。
ここで一番よくないのは、決断しないことです。決断に時間をかける人が一回決断する間に、5回、10回と多くの決断をおこなっている人もいるのです。それゆえ、抜擢した後は、部下自身に決断経験をしてもらい、その際にスピードを重視し、短時間で数多くの決断をおこなうよう促します。そのスピードを評価するため「すぐに行動に移したのはいいですね」「軌道修正が早くできてよかった」などのほめゼリフを使います。
・週1の振り返り面談で内省を強化
次の決断をより良質なものとするためにも内省は欠かせませんので、おすすめが定期的にメンバーと面談やミーティングを設けて、決断経験をしっかり積み上げているかを一緒に確認することです。決断経験を振り返り、そこから得た気づきを聞きます。決断経験を意識的におこなうことで気づきと学びを得て、さらに次の決断に活かすことができる。決断経験の量をおのずと増やすことができるだけでなく、「この1週間でたくさんの経験と学びを得た」と自身の成長も実感できる、まさしく一石三鳥です。
〇失敗(しっぱい)―「成長のプロセス」ととらえる
・失敗がなければ成長もない
誰しも失敗はしたくないものですが、ほとんどのチャレンジには失敗がつきものです。失敗はするものです。これが「自走サイクル」の中に失敗が組み込まれている理由です。ビジネスにおいてはなおさらで、一度も失敗せずに成功したという経営者の話は聞いたことがありません。むしろ、成長企業の経営者は最初から失敗ありきで物事を考えています。「失敗は成功の母」というように、一つひとつの失敗は成功するために不可欠な要素です。
・決断も失敗するのが当たり前
メンバーの決断もまた、失敗するのが当たり前です。経験が浅いメンバーは特に失敗を恐れやすく、決断に余計な時間をかけてしまいます。そうなると当然、決断のサイクルを回すまでにも時間がかかり、決断の質はいつまでも上がらないままです。ですので、事前に「失敗をしてもいいんだ」というメッセージを伝えましょう。おすすめは対話の中でシミュレーションをさせることです。マネジャーは答えやアドバイスを告げるのではなく、質問を投げかけます。「Aという方法でやってみた場合、どんな状況が起こりうるかな?」「Aの方法でやってみた場合の、流れをシミュレーションしてみよう」
決断の失敗で責任を取る必要はありません。その代わりに「自走サイクル」の失敗の次のステップである「学習」に進めばいいのです。若手社員に望むことは成功でも失敗でもなく、成長です。
・挑戦した敗者にこそセカンドチャンスを与える
失敗を経験した人は、次に活躍する可能性が非常に高い人でもあります。「失敗→認識→内省」という失敗サイクルを回すことで、失敗経験を経験値に格上げすることができます。
「取り返しのつかないような失敗をしてしまった」と自信を完全に失ってしまうのは問題です。そこで、「抜擢された人が挑戦に失敗してもやり直せる」というセーフティネットを張っておく必要があります。具体的には「セカンドチャンスを与える」ことです。言葉にすることで、セカンドチャンスは会社と社員の約束になります。言葉にしておかないと、「本当にまたチャンスをもらえるのかな?」と疑心暗鬼になり、抜擢された人は決断することを恐れてしまうでしょう。セカンドチャンスの約束をしていなければ、文化や風土にはなりえません。社長の藤田は「失敗者は、挑戦した結果で失敗しているから、ちゃんとねぎらってね」と折に触れて私に話します。私は「ねぎらい面談」を活用します。撤退したプロジェクトのリーダーは、みんな、くやしそな顔をします。そのようなリーダーには、1.「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけます。そして2.「チャレンジしてくれて本当にありがとう」と、チャレンジしたことに対する感謝を伝えます。その後に振り返りと未来へのお話をします。
〇学習(がくしゅう)―課題を見つけて次の抜擢につなげる
・学習のための面談は「相手の話を9割聞く」でちょうどいい
「自分で育つ、自走人間をつくる」ことが目的ですので、相手の話を聞き切りましょう。上司である自分のほうが経験は豊富だからと、ついアドバイスをしたくなってしまう気持ちはわかりますが、「学習」の基本は「内省」ですので、上司がおこなうのは質問を投げかけることだけです。本人の口から失敗の理由が語られ、「こうすべきだった」という反省もある。ここまで理解していれば、次に同じ失敗を繰り返す可能性が低いことは、話を聞いただけで十分わかったと思います。上司が先回りして「〇〇すべきだったね」などと言う必要はないのです。答えは本人の中に必ずあるからです。学習とは、自ら答えを導き出す過程そのもの。そこにアドバイスなどいりません。また面談では、本人が素直に自分のことを語ることに意味があります。「今回の失敗は、Aさんにとって、どんな意味があると思いますか」と今回の失敗の意味を聞く、そして「今の自分が、1年前に戻るとしたら、何をやりますか?」と後から成長した自分がタイムマシンに乗って1年前に戻ったら、どのような決断をするか、自分への指導を考えてもらう、ことも有効です。
・良い面談には次の「抜擢」がある
面談は、必ず若手の学習を助ける場として活用できますが、陥りがちなのが過去ばかり話してしまうことです。もちろん「良かった・悪かった」を見ることは問題ありません。しかし、それ以上に大事なのは、未来を話すことです。明るい未来が見えてくれば、自然と期待感は高まりますので、面談では期待をセットで伝え、一緒に未来を考えましょう。人は期待されると、前向きになりがんばれます。がんばると結果を出せるようになり、成長していきます。このサイクルで、人はどんどん成長していきます。
次の抜擢を考える際にぜひやっていただきたのが「大化けイメトレ」です。10年後にどんな人になっているか、大成功しているとしたらどうなっているか、世界で有名になっているとしたら、どう紹介されるか。こうした質問を投げかけ、未来の大きな可能性を、面談を通じて部下と一緒に探りましょう。目標を明るい未来につなげていき、その目標により本人が自走できるようにしていきましょう。
・「抜擢カルチャー」を社内に浸透させる
伸びるポストをみんなで探して、そこにもっと人を充てていく。本人の強み×伸びる仕事=大きな成果。ポジションありきで、人をアップして、動かしていくことが大切です。なぜなら、人ありきで抜擢を考えすぎてしまうと、どうしても「今ある伸びないポストに人を充ててしまう」というリスクがあるからです。私たちは「抜擢は足りているか」を常に気にしていますが、人の成長だけに気を取られてしまうと、会社の成長・成果がおろそかになってしまう恐れもあります。「抜擢」が組織に活力を与え、人材育成の可能性をさらに高め、経営にも「大きな成果」という形でインパクトを与えるものであると、強く実感しています。「抜擢」を全社員に浸透させたい、「言わせて、やらせる」を個々人でも実践してほしいという願いから、「抜擢のしくみ」ではなく、あえて「抜擢カルチャー」という言い方をして、普段から自然と誰もが取り入れていくものと話しています。
  • user 内田
  • time 2022年9月3日
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