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レビュー『元彼の遺言状』
『元彼の遺言状』 新川帆立 宝島社文庫
2021年度の第19回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。
作者の新川帆立(しんかわほたて)さんは東大法学部卒の弁護士で1991年生れ。
この若さでミステリー小説を書いて賞をもらうという点が凄いです。
作品にもその弁護士としての知識経験がふんだんに盛り込まれ、主人公の剣持麗子も大手法律事務所の20代弁護士です。
弁護士のお話は小説になりやすいですし、海外ドラマのSUITのようにドラマティックです。
大手法律事務所の内情もわかりますし、作品に出てくる村山弁護士のように町の小さな法律事務所の弁護士像もよく描かれています。
こちらの作品はミステリー作品で殺人事件も出てきますが、私が注目したのは経済小説の要素も入っていた点です。
作品では大手製薬会社-森川製薬の御曹司・森川栄治が亡くなるところから物語がはじまるのですが、その森川製薬の経営や株式について、詳細に書かれていきます。
株式の相続は現代の中小企業でも大きな課題となっておりますが、上場している大手企業の場合も同様に複雑な話になりがちです。
経営陣としてはあまり良からぬ人たちに株式がわたってほしくないですし、会社にある程度の影響を与えるには自分が株式を取得したいと考えます。
また、具体的なM&Aの話が出てくるあたりも経済小説チックなのですが、株式譲渡契約書や法務DD報告書の話も出てくる所も身近に感じました。
新川帆立さんは現在は弁護士業務は行わず、小説家業をメインで行われているようで、今後の活躍が楽しみです。
- 内田
- 2022年9月24日
- 本
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