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円安と飼料代を考える
こちらの三菱UFJ国際投信の表を見ていっても、この3年間でどれだけの円安が進んだかが良く分かります。
対ドルで見ていきますと、
3年前の2020年(R3)11月は「1ドル105円」ほどだったのが、
ロシアのウクライナ進行がはじまった2022年2月以降は「1ドル115円」から更に円安が進み、
日本とアメリカの金利差、貿易収支赤字が進んでいく中で2022年10月には「1ドル150円」を超え、
為替介入により2023年1月は「1ドル129円」でスタートをしたかと思ったら、
アメリカでインフレが長期化し金利差が拡大、2023年5月に「1ドル140円」、6月には「1ドル145円台」となり、
アメリカの長期金利が日銀の想定を上回るスピードで上昇し2023年10月には「1ドル151円」まで進みました。
この円安ドル高の背景には、日本の経済的な国力の衰退に原因があると言われております。
これは日本国内の家計に影響し、輸入価格の上昇は冬場を迎える電気・ガス料金などエネルギー価格に影響する可能性があるほか、食料品の値上げがさらに続き、年間10万円以上の負担が増えます。
北海道の十勝の畜産農家さんが、ここ数年赤字が続いている背景には、この円安の影響が大きいです。
搾乳の酪農業や、肉用牛の農家さんで牛さんが食べるエサ代金に影響する配合飼料の価格は、まさにこの円安が進んだ時期に大きく高騰しました。
北海道の多くの畜産農家さんは販売価格を決めることができません。
生乳の価格は指定団体が決めることになり自分たちで上げることもできず、肉牛の価格も主に市場で決められることになります。
そのような中でコストの半分以上を占めることもある、エサ代(飼料費)が以前より5割以上増えてしまうと、どんなに頑張って経営をしても赤字になってしまいます。
このような情勢の中で、営農をやめてしまう農家さんも増え、またやめたくても借金が多くやめられない農家さんも数多くいらっしゃいます。
10年ほど前からはじまった農林水産省管轄の畜産クラスター事業は、牧場大規模化のために補助金を多額に出しましたが、補助金以外の借入金が大きく残ってしまう結果にも繋がっております。
そのような中で、近くで飼料代等コストの数字を見させていただく中でいくつか考えることがあります。
・飼料代を下げられる思い切った方策を取れないか
飼料の中身を思いっきり見直すことで飼料代を下げられる可能性があります。仕入れ先のエサ会社を変更することも考えられます。資料専門のコンサルタントを入れることも一つの手です。粗飼料を収穫する畑を増やし、自給飼料を増やすことも飼料代削減につながります。
・頭数を減らすことはできないか
仮に何をやっても一気に飼料代を減らせないならば、(今後の飼料相場も見据えながら)牛を飼えば飼うほど赤字でそれを避けられないならば、一時的に飼養頭数を減らすことも赤字削減につながるかもしれません。但し、ここは将来的に再び増頭させることができるかにも注意しなければなりません。
・飼料代以外のコストが減らせないか
牛さんが食べるエサのコストはこれ以上どうしても減らせない、としたら他のコストを限界まで落とすしかありません。人を雇っているならば苦しい時期のリストラとして辞めていただく。飼料中の添加剤、敷料費や薬品代金などを減らすことができないか。電力費を大手から別の業者に変えて変えられる可能性は無いかなど。
こういった厳しい情勢だからこそ自分たちの牧場の数字には徹底的に向き合っていただきたいと思います。
- 内田
- 2023年12月16日
- 北海道・十勝・札幌
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