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レビュー『イーロンマスク 上』

  • user 内田
  • time 2024年1月20日
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イーロン・マスク 上』 ウォルター・アイザックソン 文藝春秋

ここ数年、世界富豪ランキングの上位に入っているイーロン・マスクの初の伝記。
存命時に伝記が出ること自体が凄いことです。

「上」巻はイーロンの祖父の時代から彼自身の誕生から、スターリンクの手前まで。

アフリカで生まれ育ったイーロンが8歳の時に、離婚をした父母や祖父も皆リスクと取る性格とのことでそれを受け継いでいるようでした。
父は精神が不安定で時に言葉の暴力も振るい妄想にとらわれ、心を痛め付けられ、それがイーロン自身の現在の性格にもつながっているようです。
「人とは、父親の期待に添えるようにと生きているか、父親の失敗を償おうと生きているかだと言った人がいる。私が苦労してきたのは、このせいなのではないだろうか」~バラク・オバマ元大統領
本人も自身がアスペルガーであることを、後には、おおっぴらに語ったり、それこそジョークのネタにするようになり、それは子ども時代のトラウマが拍車をかけ、どうしても空気を読むのは下手。

イーロンはブライアンストン高校に通い、プレトリア男子校を卒業しました。 17歳になった1988年、Pretoria Boys高校で大学入学資格を得た後、カナダへの移住までの5カ月間、地元のプレトリア大学に通い、物理学と工学を学びました。
このころには、人生の目標が出来ていた。「人間に大きな影響を与えることがしたいと考えました。思いついたのは三つ。インターネットと持続可能エネルギーと宇宙旅行。

イーロン・マスクが24歳で起業したZip2の経営には、実の弟であるキンバル・マスクも携わりました。さらにイーロン・マスクは4年後の1999年、あのコンパックにZip2を3億700万ドルで売却し、同時に現ペイパルの前身でもあるXドットコムを起業しています。

イーロンの行動は本当にはちゃめちゃ、毎晩遅くまでコーディングを続けて、昼間は昼間で荒々しく気遣いがない。1999年にXドットコムを設立したときも、毎日いらついた様子で事務所をうろつき皆をイラつかせ、もちろんほぼ毎晩机の下で寝て泊まり込み。いまも当時もそうだが、イーロンのやり方は、ありえない締め切りを設定し、なんとか間に合わせろと発破をかける。

ペイパルが軌道に乗って来た時にあまりにも身勝手なイーロンに対して、クーデターが起こりCEOから降ろされることになったが、負けた現実を直視できる。ビジョナリーだが周囲とうまく折り合えない。

イーロンはリスクを追い求める男。彼が作った2社、スペースXとテスラを見ればわかる。シリコンバレーの常識ではどちらもクレイジーな賭け。ですが、うまくいった。イーロンは、ほかの人にはわからない何かをリスクについてわかっているのだろう。

イーロンが宇宙開発を、特に火星に行きたかったのには3つの理由があった。
技術は必ず進歩すると限ったものではない。進歩は止まるかもしれず、後退することさえありうる。月には行けた、でも、スペースシャトル計画は中止となり、進歩は止まった。「月までしか行けなかった、それ以上はあきらめたと子どもたちに言うのでしょうか」
2つ目に、か弱い地球になにごとかあっても、ほかの惑星にも住むようになっていれば人類の文明と意識は生き残れると思うから。
3つ目は精神的なもので、イーロンが冒険者の家系であること、ティーンエージャーのとき、開拓者精神を旨とする国に行こうと決めたこと。

課題を解決していくだけの人生などつまらない。彼はそう感じていた。大いなる夢を追うことも必要だ、と。「それがあればこそ、朝、起きられるというものです。」

スペースXでのロケット開発の中、イーロンも若手技術者も毎晩遅くまで仕事をしては、自分のコンピュータでシューティングゲームをプレイしたり、携帯電話で会議をしたり、デスマッチに突入して朝3時までプレイを続けたり。ゲームをすることが狂っている。
「気が狂いそうな切迫感をもって仕事しろ」とイーロンはよく言う。切迫感は役に立つ。だがこれには歯の側面もある。
イーロンは諦めない、粘り強く前に進み続ける。2回目の打ち上げ失敗について、どうしてそんなに楽観的になれるのか尋ねられた時「楽観的?悲観的?そんなことは知らん。やる。やり遂げる。地獄なんぞものともせず必ずやりとげると神に誓うんだ。」それがイーロンの答えだった。2008年のリーマンショック後の一年は崖っぷちで本当にひどい一年だった。

2008年のイーロンは友人たちからお金を借り、毎晩、ぶつぶつぶつぶつ独り言を言ってたし、手足を振り回して叫ぶこともあった。それを見るのはとても怖かったと二人目の妻タルラは言う。「心臓発作でも起こすんじゃないかと心配で心配で。夜驚症と言うんでしょうか、寝ているのに突然叫びだし、私にしがみついてきたりするんです。恐怖ですよ。彼は追い詰められていて、私はびくびくでした。」トイレで吐くこともあったという。「内臓に来てしまって、叫んでは吐いてました。私はトイレで横から彼の頭を支えてあげました。」ストレス耐性が高いイーロンも、2008年は、もう少しで限界を超えるところまで行ってしまったのだ。「帽子からうさぎを出すような魔法をこなさなければならない、一度ならず二度、三度と繰り返さなければならないのです。そんな状況で、毎日毎日、朝から晩まで仕事をしていました。」とイーロンは言う。めちゃくちゃ太ったかと思うと、一気に痩せ細る。背中は丸くなり、足の指に力が入らなくて歩きにくい。そんな状態でも、イーロンはすさまじい集中力で精力的に仕事を進めた。首つり縄が目の前にぶら下がったことで、いつも以上に集中できたのだ。
その後、4度目の打ち上げが成功しNASAより16億ドルの契約を取り付ける。

イーロンの採用面接も相当個性的。じっと見つめてきたかと思うと1分以上も黙ったりする。そして、候補者について知ろうと真剣になると、技術的なことを事細かにと問う。「相手の力量を評価するのに都合のいい神経回路を持っているようで、ほんの何点か尋ねただけでだいたいわかるんです」とイーロンは言う。

マスクが好きな言葉ー好きな概念でもあるーに「本気」がある。最初の会社では職場文化のあるべき姿をこの言葉で表現したし、それから30年近くも後、Twitterの家族主義文化をひっくり返す際にもこの言葉を使っている。

 

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