Latest Posts
【TAPの仕事】肉牛決算コンサルティング(法人-税務編)
肉牛牧場の法人税申告書を作成していくときに注意すべきことを記載をしていきたいと思います。
まず最も大切なことは別表10において、肉用牛の免税(肉免)の申告書をしっかりと作成することです。
「肉免」とは、特定の条件を満たす肉用牛の売却所得に対して、所得税や住民税が免除される仕組みとなっています。
具体的には、家畜市場や認定された食肉卸売市場で肉用牛を売却し、売却証明書を税務申告時に提出することで、以下の条件に基づいて免税が適用されます:
・売却価格が1頭あたり100万円未満(交雑種は80万円、乳用種は50万円未満)。
・年間の売却頭数が1,500頭まで。
肉用牛の「売却証明書」という書類を市場や農協から集めます。その証明書で100万円以上(交雑種は80万円、乳用種は50万円)のものを除きます。
この金額を集計したものが申告書の20番「肉用牛の売却に関わる収益の額」に記載されます。
その対象牛に関わる肉用牛にどれだけの原価(飼料費・養畜費ほか)が掛かったかを計算します。
例えば決算年度の原価が5,000万円、全頭飼養日数が10万日の場合、1日1頭当り飼養単価500円となります。
肉免対象牛の飼養日数が7万日の場合、500円×7万日=3,500万円
と計算され、こちらが申告書の18番「肉用牛の売却に関わる原価の額」に記載されます。
租税特別措置法 第67条の3「農地法第2条第3項に規定する農地所有適格法人が、昭和56年4月1日から令和6年3月31日までの期間内の日を含む各事業年度において、当該期間内に次の各号に掲げる売却の方法により当該各号に定める肉用牛を売却した場合において、その売却した肉用牛のうちに免税対象飼育牛(家畜改良増殖法第32条の9第1項の規定による農林水産大臣の承認を受けた同項に規定する登録規程に基づく政令で定める登録がされている肉用牛又はその売却価額が100万円未満(その売却した肉用牛が、財務省令で定める交雑牛に該当する場合には80万円未満とし、財務省令で定める乳牛に該当する場合には50万円未満とする。)である肉用牛に該当するものをいう。以下この条において同じ。)があるときは、当該農地所有適格法人の当該免税対象飼育牛の当該売却による利益の額(当該売却をした日を含む事業年度において免税対象飼育牛に該当する肉用牛の頭数の合計が1,500頭を超える場合には、1,500頭を超える部分の売却による利益の額を除く。)に相当する金額は、当該売却をした日を含む事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。」
-
内田
-
2025年5月10日
-
TAPの仕事
-
2
【TAPの仕事】令和7年3月期決算業務にあたって
月に一回弊社ではビズアップ総研(e-jinzai for accout)を見て勉強と記録を行っております。
ただ、このe-Learningは12月~5月の繁忙期は任意となっております。
今月は3月決算法人の決算月で、会計事務所の法人決算業務の最も忙しい時期とも言われています。
今回の3月決算対策で「中小企業向け優遇税制 & 圧縮記帳・特別償却の実務」という動画を見ました。
この動画の中で租税特別措置法の色々な内容も載っておりました。
3月決算を行う上では、まずこういった動画や税務通信で網羅的に重要論点を見直すと良いでしょう。
TAPの会計と税金のチェックリストを漏れなく使って、各ポイントを見ていけるようにしましょう。
4月中にすべての決算資料を揃えられれば良いのですが、もしも出来ていない場合はGW明けの5月10日までには全ての資料を集められるようにしましょう。
そして、資料がそろったお客様の決算からどんどん終わらせていき、できれば5月10日までに決算を完了していきます。(40日以内ですと賞与時に加算がされます。)
ここで上記動画にも出てくる注意すべき論点を3つだけ記載します。
・賃上げ税制
今回の3月決算から賃上げ税制で使いきれなかった税額控除が5年間、繰り越せるようになります。仮に赤字でも賃上げ税制を適用するようにしましょう。(参考ページ)
・減価償却資産の特別控除/特別償却
中⼩企業経営強化税制(措法42条の12の4)または中⼩企業投資促進税制(措法42条の6)は漏れなく適用するようにしましょう。(参考ページ)
・⽋損⾦の繰戻し還付請求(法法80条1項)
机上での税務調査が必ず行われるとなってはおりますが、私はこれまで何回もこちらの還付請求後に実地調査を受けたことは一度もありません。お客様に10年間の繰越欠損金とともに説明をしながら、特に今後利益が出ない可能性が高い場合には還付請求した方が良いでしょう。(参考ページ)
-
内田
-
2025年5月3日
-
TAPの仕事
-
6
【TAPの仕事】肉牛決算コンサルティング(法人-会計編②)
TAPにも相当数の和牛繁殖農家さんのお客様がいらっしゃいます。
TAPでは和牛繁殖農家さんについてのYoutubeも発信しておりますので、宜しければご覧ください。
【和牛繁殖で300万利益を増やすにはこれ!】和牛繁殖農家子牛の事故を防ぐには!これで子牛の命を救える!【牧場経営】会計士と元牧場経営者が語りました。【公認会計士、牧場M&A】
会計的にも和牛繁殖の場合には、「繁殖牛」という固定資産が出てくるのが、素牛(もとうし)生産や肥育(ひいく)生産のみの牧場さんとは異なる所です。
決算書上では、販売用の素牛(もとうし)や肥育牛(ひいくぎゅう)は左上の「流動資産」に載り、子牛を産むための繁殖牛は土地などと同じにように左下の「固定資産」に載ります。
ちなみに搾乳用の酪農牧場の「搾乳牛」も左下の固定資産に載ります
繁殖農家さんの会計をマスターするためには、牛の成長に伴う動きをしっかりと把握すると良いです。
産まれた後:「育成牛」のような科目名でしばらく流動資産に載っております。(オスもメスも)
素牛販売時:「育成牛売上」のような科目名で損益計算書に載り、そのまま育成牛科目分は消えます。(オスの時が多いですがメスの時もあります)
種付出産時:「繁殖牛」のような科目で流動資産から固定資産へ移動します。(メスだけ。簡便的に24カ月経過時に移動させるときも多いです。)
決算時:「減価償却費」が6年かけて計上され繁殖牛科目は減額していきます。(メスだけ。搾乳牛は4年償却です。)
死亡時:「死亡原価」のような科目で固定資産に残っていた価格が損益計算書-売上原価に振り替えられます。(稀に特別損失の時もあります。)
販売時:「販売原価」のような科目で固定資産に残っていた価格が損益計算書-売上原価に振り替えられます。(6年以上繁殖用にいると利益が出やすいです。)
いかがでしょうか、複雑そうに見えて一つずつ見ていくと牛さんの一生を追う形でわかりやすいのではないでしょうか。
-
内田
-
2025年4月26日
-
TAPの仕事
-
1
【雑感】トランプ関税
今月の日本経済新聞にトランプ関税の記事が載り注目して読んでみました。
今後、継続的に米国の高関税が発動され続けますと、日本経済も大きな打撃を受けかねません。
北海道から農産物・海産物・自動車部品などを輸出をしていく流れがある中で輸出量が減っていき、日本の物づくり技術を活かした自動車輸出なども減少していく可能性があります。
日本の対米輸出が減少し、4兆~5兆円程度の経済的損失が見込まれているようでもあります。
アメリカ市場への依存度が高い事業者にとっては、アメリカ市場からの依存を下げて他の国に拠点を移したり、逆にアメリカでの現地生産を行うことで関税の影響を回避し、競争力を維持することが可能かもしれません。
日本のマーケットが縮小する中では、アメリカ市場以外での多角化を図っていく事も必要になるのかもしれません。
これは大企業だけでなく中小企業も越境ECのツールも使って、外国の需要を取り込んでいかないといけません。
また、アジア市場は成長が期待されておりますので、輸出や現地サービスを通じて新たな顧客層を獲得していくことが出来るかもしれません。
-
内田
-
2025年4月19日
-
趣味・雑感
-
2
【TAPの仕事】肉牛決算コンサルティング(法人-会計編①)
弊社では毎年、肉牛農家の決算を数十件か関与させていただいております。
肉牛農家さんは規模が大きい所が多く、クミカンを使っていない場合もあり、12月決算以外の法人も多いです。
肉牛事業は商流が最初つかみにくく、また肉用牛の免税などの特殊な税務もあるため好んで関与する会計事務所も多くないと言われますが、弊社では創業以来、JAや畜産農協からの御紹介も多く、関与件数も多い方かと思います。
肉牛農家さんでも現金取引をたくさん行っていただいている所もあり、現金出納帳を付けていただくようにしております。(数枚の領収書しかない場合は、それだけで入力をしていただくこともあります。)
牧場内で使う消耗品や飲み物代(厚生費)、接待交際費などは現金から払う事が多いかと思います。
クレジットカードを使っていれば、それをそのままAPI連携で取り込んだり、入力をしていただきます。
肉牛農家の売上は肉用牛です。種類は黒毛和牛、ホルスタインオス(まれにメスの時もあり)、その交雑種(F1)の三種類が多いでしょう。
売り先は様々なため、どちらに売り先があり、手数料や保険料(事故積立金)が控除されていないかに注意をして入力をしていきます。
比較的、売上取引の形は固定されるため、会計仕訳も定型仕訳を使うと良いことが多いです。
出荷伝票を見るとわかるのですが、消費税が8%のときと10%の時があります。肉として売られる牛さんは軽減税率のため8%、それ以外の子牛さんは標準税率となります。また最後に肉となる牛さんの皮も「原皮」代金として10%となります。
とにかく仕入(導入)から売上(出荷)までの流れを把握して、実態に合った形で会計に反映をさせることが大切ですね。
したがって、仕入のところも大切ですが、ここでは繁殖母牛から産まれてくる場合は除き、市場等から仕入れてくるケースのみ記載をします。(繁殖母牛の出てくる繁殖農家については②で記載をします。)
黒毛和牛の場合でも他の種類の場合でも、産まれて数週間(濡れ子)~数か月の初生牛を仕入れるケースがあり、ここから肉用肥育をする前段階の素牛(もとうし)で出荷をする素牛生産農家さんも北海道にはたくさんいらっしゃいます。(そこから九州・関西・東北などに出荷されブランド牛になっていきます。)
もちろん最後の肉になるまで肥育をして出荷される肉牛農家さんもいらっしゃり、一貫肥育農家と言われます。
ここで仕入で気を付けることは、仕入時に付随費用(購買手数料や運賃)を把握して、棚卸資産に計上をすることです。
この点は税務調査でも見られることですし、正しい会計決算書を作成するためには欠かせません。
牛の仕入とセットでとても重要なことが、在庫牛の管理方法です。
何も管理をされておらず決算の時だけかろうじて手書きの在庫一覧を書いていただけるような農家もありますが、多くはExcelで管理をしていらっしゃり、時にシステム会社に牛在庫管理ソフトを作ってもらったり、ファームノートやデザミスという牛さんの首に装着センターを付けて牛管理をしている農家さんもあります。
牛在庫一覧では、個体識別番号や生年月日・導入年月日・導入金額などをすべて入力をしていただき、そちらを元に決算書の在庫牛金額を計算をしていきます。
決算時の在庫棚卸では、飼料・敷料・薬・精液・肥料などをしっかりと数えていただくことも必須となってきます。
肉牛農家にとっての大きな費用は飼料代、養畜費、共済金でしょう。
飼料代もそういったエサをどのような取引先から購入しているか、どの程度在庫として置いているか、自己所有や賃借の畑からどれだけの自給飼料があるか、そのエサによってDG(Dairy Gain一日当り増体kg)が高いか、それによって一頭当り利益は出ているか、といった点につながっていきます。
養畜費も様々な内容があり、牛さんの寝床である敷料、病気を治す薬代金・診療代金(ここからも事故率を低めに抑えられているか影響します)、削蹄代金などがあります。
その他の費用では、他の業種でも出てくる減価償却費(機械関係投資)、修繕費、水道光熱費も多額になりがちです。
また補助金関係も様々ありますので、注意が必要です。
特にマルキン補助金と子牛補給金は内容を理解しながら、未収計上に注意しております。
上記以外の細かい点も次回以降の②で記載をしてまいります。
-
内田
-
2025年4月12日
-
TAPの仕事
-
2
【本】レビュー『コンビニ人間』
『コンビニ人間』 村田紗耶香 文春文庫
あるコンビニエンスストアにオープン当初よりアルバイトとして18年間勤める、30歳代半ばの女性が主人公。
アルバイトとして、そのような長い時間勤め続けることは周りからおかしな人とという見られ方をするが、本人ととっては、コンビニはシステム化がされ、全てを修復かして、自分を社会の一つの機能に変えてくれる場所。
その年齢になったら結婚をしているのが普通なのか、結婚をしていなければ正社員であることが普通なのか、恋愛はしなければいけないのか、主人公にはどのような普通がわからない。
それでも親や家族、旧友と話をするときに都合が良いから、自分の家に同じコンビニ少しいてすぐに辞めさせられたダメ男を居候させた。
口が滑って、一緒に住んでいることをコンビニで店長に言ってしまい、周りはなぜか盛り上がる。
36歳の独身のコンビニアルバイトの定員、しかも恋愛経験なし、毎日やけにはりきって声を張り上げて、健康そうなのに就職しようとしている様子もない。そんな自分を異物として陰で悪く言う。普通の人間っていうのは、普通じゃない人間を裁判するのが趣味。
そして、店員の皆がどんどん店員でなくなって自分に対してオスメスとしていじってきて、客だけが私を店員でありつづけさせてくれていた。妹も泣き出す。
そして…….
-
内田
-
2025年4月5日
-
本
-
3
【本】レビュー『不動産×相続の教科書』
『不動産×相続の教科書』ダンコンサルティング株式会社 塩見 哲
いつも弊社の新人研修でお世話になっている社会保険労務士先生から頂いた本で、相続に力を入れている弊社にとっても大切な内容という事で読ませていただきました。上記リンク先は2019年版の書籍ですが、私の方では2024年10月発行の新版を読ませていただきました。
〇不動産相続の事前対策が必要な理由
相続の中でも不動産所有の占める割合が多い高齢者は事前の対応が必須になります。なぜならば、相続税負担のために相続人ファミリーの生活権の侵害につながる可能性があるからです。ただ、争続になると感情が先に立ち、相続税より目先の自分の利益を優先しがちになりますので、節税を考える前に必ず相続人らと本音の想いを語り合っておかなければなりません。節税戦略は仲間意識の高いファミリー間でこそ役割を果たせるという事です。
〇不動産相続の5つのポイント
1.不動産や企業は原則として継続していく宿命を帯びているが、その所有者又は経営者には寿命がある。
2.不動産事業や企業経営は継承後の新しい所有者が意思決定を持つため、相続においてはより戦略性が要求される。
3.いずれのケースも利害関係者全員の未来の幸せがベースとなり、その結果として社会に役立たなければならない。
4.どんな未来ビジョンがあるかを事前に示しておくべき姿勢が要求される。
5.目先の損得より優先させるべきものを考えておかなくてはならない。
〇実質2つだけの節税戦略
相続税の節税戦略は①資産(特に土地など不動産)の評価減②資産の移転(贈与・寄付・消費)③法定相続人(相続税法上の法定相続人)の数 の3つしかないが、このうち③は節税のためというより感情面に配慮した結果が節税につながったという程度のことです。したがって、実質的には①と②しかありません。
〇評価減の基本は本来の不動産価値を下げないこと
1.立地的要素:見える欠陥(不整形地、無道路地、傾斜地・・・)見えない欠陥(土壌内の汚染、埋蔵物、上下水道など)
2.環境的要素:隣地が墓地、工場やゴミ処理施設の臭気が強い、高速道路等高架があり日照や騒音障害など。
3.心理的要素:自殺マンション、境界争い、暴力団事務所入居ビルなど。
4.法律的要素:税法上の貸宅地や貸家建付地、相続人による小規模宅地特例やセットバック、震災特例法など。
〇相続不動産の会社への遺贈と生前贈与
相続不動産等を同族会社へ遺贈(遺言による贈与)すれば相続財産が減少するとともに、会社には相続税が課税されないため、(赤字会社は受贈益でも法人税が掛からない可能性があり)相続税の軽減対策には有利ではないかと言われています。ただこうした場合には、いくつかの問題が発生します。所得税法59条みなし譲渡の決まりにより「時価で譲渡したものとみなし」簿価より時価が高い場合にその差額に所得税が課税されます。(但し、当該課税は相続人の債務になるため、相続税法上の債務控除となる。)
〇所有者不明土地への対応法
2024年度に所有者不明土地に対しての新しい制度が誕生しました。所有者不明土地がすでに日本全土の22%にも達しています。その原因の多くは相続発生によるもので、今後年間に160万人~180万人の相続が毎年発生するだけに緊急を要し、対応法として民法や不動産登記法が改正されました。
1.土地建物の相続当期の義務化:相続開始から3年以内に誰がどれだけ相続するか登記し、登記しなければ10万円以下の過料。
2.相続人申告登記制度の新設:登記期限に間に合わない場合、相続人の氏名、住所などを登記
3.不動産所有者の住所、氏名変更登記を義務化:住所変更などを2年以内に登記、登記しなければ5万円以下の過料。
4.遺産分割協議の期間を設定:相続開始から10年を過ぎると原則法定相続分の割合で分ける。
5.土地所有権の国庫帰属制度を新設:国が一定の条件を満たす土地を引き取り、相続人が10年分の管理費を負担する。
-
内田
-
2025年3月29日
-
本
-
2