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レビュー『同志少女よ敵を撃て』

  • user 内田
  • time 2022年11月19日
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同志少女よ敵を撃て』 早川書房 逢坂冬馬

本屋大賞を受賞した、1940年台の独ソ戦を舞台にした女性狙撃小隊のお話です。
2022年2月からのロシア-ウクライナ戦を思い浮かべてしまう、非常に心に残るお話です。

故郷の村が襲われ生き残ったセラフィマという少女が、女性狙撃小隊のイリーナから訓練され、各戦場にて狙撃の任務を遂行していきます。

最初から最後まで、戦争の凄惨さを見事に記した作品でありますが、特に後半、登場人物たちの言葉が印象的でした。
P356セラフィマの幼馴染-ミハイルの戦争は倫理や常識を狂わせるという言葉
「悲しいけれど、どれほど普遍的と見える倫理も、結局は絶対者から与えられたものではなく、そのときにある種の『社会』を形成する人間が合意により作り上げたものだよ。だから絶対的にしてはならないことがあるわけじゃない。戦争はその現れだ」

P374戦後に狙撃兵はどう生きれば良いか聞かれたリュドミラの言葉
「分かったか、セラフィマ。私は言った。愛する人を持つか、生きがいを持て。それが、戦後の狙撃兵だ。」

P467戦争後の元兵士についての記述
「戦争が終わった後、人を殺す術を身につけ、躊躇なく敵を殺す訓練を受け、実際に殺し、味方の死を見届け、ぎ虐殺を目撃し、あるいは殺戮者となり、ありとあらゆるこの世の地獄を体験した多くの兵士たちが、生身で日常に放り出される」
「殺される心配をせず、殺す計画を立てず、命令一下無心に殺戮に明け暮れることもない、困難な日常という生き方へ戻る過程で、多くの者が心に失調をきたした」

本当に、戦争はあってはならないものだと感じさせる作品でした。

 

 

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