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レビュー『地域コングロマリット経営』

  • user 内田
  • time 2023年12月2日
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地域コングロマリット経営』同文館出版 船井総合研究所

地方都市も含めた中堅・中小企業のコンサルティングを行っている、船井総研さんによる書籍。
国の政策の影響もあり、地方の中堅・中小企業が本業の収益力を失っている中で取るべき次の一手について書いております。

個人的には、複数事業を持つことは社長の力が分散され本業をないがしろにされるリスクがあり、あまりお勧めいたしませんが、一つの方法論として読んでみました。

地域コングロマリット経営とは
特定の地域で複数の事業体を持つ経営のこと。様々な事業を持つことで「ほかの事業にもプラスがもたらされる」「事業間でシナジーが生まれる」「各事業体を会社経営する経営者の役割を担える人材が多数育つ」。
人口減少に伴う労働力人口の減少マーケットの縮小は、多くの企業にとって強い逆風になっている。とりわけ地域(地方)においては、大都市への人材流出もあいまって一層苦しい。求人広告を出しても人材は集まらず、商圏人口が減り続ける中で成長が難しくなっている。事業が継続できなくなると地域から貴重な商品・サービスが消滅することもありうる。現実問題として、多くの地域で見られるシャッター通りなど、地域の生活インフラの衰退は著しい。
このような中で、地域コングロマリット経営は、逆風の中でも成長が見込める戦略であり、同時に地域活性化など社会問題の解決にも貢献する。

●中小企業は労働生産性は低く中堅企業化こそ活路
中堅企業化により「労働生産性(一人当り付加価値)」も増え、それが競争力の源泉になり、従業員や顧客、関係者へのメリットにつながる。財務省の統計では、例えばサービス業では20~49名の企業に対して、100~249名の中堅企業の労働生産性は1.5倍となっている。
求人」ついても有利に働く、なぜなら賃金(規模が大きいほど賃金が高い)、採用・育成(人事機能)、企業認知(知らない企業よりも知っている企業)の3点で優っているからだ。
資金調達力」についても、金融機関の立場に立てば、企業規模が大きいほうが(業績の好不調の審査基準はあるにせよ)経営は安定し融資をしやすい。
デジタル化」に規模が活きることもメリットであり、コピーコストが極端に低くなり、導入コストや環境整備、教育コンテンツ整備など、固定費的な性格のコストが大きいからこそ企業規模が活きてくる。

●中堅企業が地域に資する
中堅企業とはざっくりと売上が100億円以上、中堅企業予備軍で30億円以上と考えられる。
都道府県の中堅企業が占める比率を見ると、賃金との関係性が見られ、中堅企業が多いと、賃金が高い傾向がある。この背景には、中堅企業が地域の経済にとって中心的な役割を果たしていることで、雇用や所得の安定につながっていることが考えられる。
この規模感になると、地域で知られる企業になり、ブランディングも如実に変わってくる。地域からの信頼も厚くなり、従業員はその企業に属していることを誇りに感じ、経営者は地域の有力者としての責任と同時に大きな夢を描くことも可能となる。

●地域コングロマリット経営は時流に沿う
金融庁OB日下智晴氏は今日の時流に沿う理由を4つ挙げる。ひとつ目は地域の人々を守るという視点で、都市圏だと企業と消費者ははっきりと分かれていることが多いが、地方はそれが一体となっているため、地域で事業を営むことは従業員の雇用を守ると同時に、その商品サービスを利用する消費者の生活を守ることにつながる。2つ目は税収の安定であり、同じ人口規模で地域コングロマリット企業のある地域とない地域では、前者の方が税収が安定するという。3つ目は経営人材であり、経営能力の豊かな人材はそれほど多くいるわけではない中で、マーケットが大きくなっていた高度成長期であればそれなりに出来ていたとしても、顧客ニーズの多様化・世の中の複雑化した今日では、真の経営者が必要になる。多くの経営者がそれぞれの事業をやるよりも、経営人材が複数の事業をやるほうが成功確率は高い。4つ目はそんな経営人材だからこそ金融機関も融資しやすく、昔のような融資先数を争うのでなく、しっかりとした経営人材に融資をするようになってきているため、本業と異なる事業進出でも金融機関は融資がしやすい。

●持続的な成長のために新規事業参入は必須
地域コングロマリット経営を進めるうえで、何はなくとも始まらないのが新規創業であり、現在あるのが単一事業のみであれば、まずは新規事業をスタートさせなければならない。
多くの企業が新規事業に参入するのは、率直に言って、それが成長につながるからであり、逆に成長企業では新規事業が次々と生まれているとも言えるだろう。2000年代から注目されてきたIT企業のひとつにサイバーエージェントがあるが、同社の2022年の売上高は7106億円、営業利益691億円、もはや多方面に成長し、この成長の秘訣が新規事業の創出であることは間違いない。企業の成長曲線として、第一本業で成長した後に踊り場を迎えるが、そこから第二本業で成長することが大切になるのである。

 

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