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【本】レビュー『反知性主義』

  • user 内田
  • time 2026年7月18日
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反知性主義』森本あんり 新潮選書

経済的にも防衛力的にも世界一の国-アメリカ。その国の一部

思想の根底にあるもの。
反知性主義(アンチ・インテレクチュアリズム)」は、「専門知識や学歴をタテにして、上から目線で社会を支配しようとする『エリートの権威』に対する反発」のことですが、現在のドナルド・トランプの政治スタイル、および彼を熱狂的に支持する人々のマインド(精神構造)に直結しています。

アメリカは、キリスト教ピューリタン(清教徒)が作った国であり、彼らの信仰の根底には「神との契約(契約神学)」があります。
すなわち、シンプルなギブ・アンド・テイク:「人間が正しく信仰を尽くせば(義務)、神は現世での成功や救済を与える(祝福)」という、非常に明快なビジネス的な契約関係とエリート(教会や学者)の排除:「神と自分」が直接契約しているため、間に挟まる小難しい神学者や教会組織の権威(=知性)は不要であり、むしろ邪魔な存在とされました。

ドナルド・トランプはこの「契約(ディール)」の権化として支持を集めていき、下記の2つの特徴があります。
「難解な言葉」ではなく「契約」で話す: トランプ氏は、ワシントンの政治エリートや学者たちが使う難解な政策論理(=インテレクチュアリズム)を徹底的に嫌い、「壁を作る」「アメリカを再び偉大にする」といった、誰でもわかる明確な言葉を使います。これは支持者にとって「不透明な理屈ではなく、わかりやすい契約の提示」に映ります。
持者との「直接契約」: トランプ氏は自身の著書『トランプ自伝(The Art of the Deal:取引の芸術)』が示す通り、自身を「最高の交渉人」と位置づけました。支持者に対し、「俺に投票すれば、お前たちに利益(雇用や国境の安全)を引っ張ってくる」という極めてシンプルなギブ・アンド・テイクの『契約』を持ちかけました。

アメリカや世界で言われる「知性」とは何なのでしょうか。「インテリゲンチア」という言葉がロシア語系の由来であることからもわかるように、それは社会の改良や革命に関心をもつ左翼知識人を指す言葉として登場しました。「インテリ」と略して今日使われるこの用法は、しばしばエリート主義への揶揄を伴っております。知識人として生きることは、どうしてもある種の矛盾が伴い、彼らは自分自身はエリートでありながら、民主的な大義を信じていることが多いからです。自分が大衆を教育し啓蒙する立場にある事を自覚しながら、あまりにもそれが進みすぎると、自分たちとの差が無くなってしまうことを危惧もしております。

反知性主義が、なぜアメリカのキリスト教を背景にして生まれ、先鋭化していったのでしょうか。アメリカは中世なき近代であり、宗教改革なきプロテスタンティズムであり、王や貴族の時代を飛び越えていきなり共和制になった国です。こうした伝統的な権威構造が欠落した社会では、知識人の果たす役割も突出しており、反知性主義はそれと同時に生まれた双子の片割れなのです。双子は、相手のふるまいを常にチェックしながら成長しまして、他の国で知識人が果たしてきた役割を、アメリカではこの反知性主義が果たしてきたということです。

アメリカは、一方では欲望全開で何でもありのフロンティア社会であり、かつ同時に禁欲的で厳格な法律をもったお上品の国である。都会には売春と飲酒と賭博が蔓延する一方で、プロテスタント的・中流階級的な倫理観(真面目に働き、無駄遣いをせず、自分の力で成功を目指すのが正しい生き方)は他のどの国よりも強いのです。そしてアメリカでは、敬虔が道徳主義に道をゆずり、アメリカ社会が「宗教の国」から「世俗的なサクセスストーリーの国」へと変化していったのです。

 

 

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