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レビュー『建設M&A』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建設M&A 日経BP 日本M&Aセンター

東証一部に上場している最も大手M&A仲介会社による書籍です。
弊社にも建設関係のM&Aの相談が多いため、読んでみました。

近年、供給過多構造事業承継難人手不足残業上限規制などの問題が山積みし、経営が立ちいかなくなる企業が増えています。
バブル絶頂の1992年度に84兆円のピークを迎えた建設投資額は、2010年に41兆円と底をつきました。
来年の2024年問題は、時間外労働の上限規制が建設業界でも適用され、働き方を抜本的に変えなければ対応できなくなります。
このような問題を解決に導く手法の一つがM&A(合併・買収)です。
M&Aにより「激甚化する災害を前に地域の守り手として強い企業になること」「DX投資を加速させて生産性の高い収益型企業になること」「公共事業依存型から新規事業も請け負える強い企業を作ること」への道筋を見つけてもらいたいと思います。

建設M&Aの件数はここ10年で10倍に増えている。また日本M&Aセンターの成約のうち、ここ5年ほどは4件に1件を建設M&Aが占めている。大半は非上場のオーナー系中堅・中小企業である。例えば成約に至った譲渡企業のおよそ50%は、売上高の規模が5億円までの企業で、同10億円までを含めると実に80%以上となる。

政策から見る新しい建設産業として、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)をはじめ、日本では一種のトランスフォーメーションブームが来ている。他業界と比べて生産性が低いことが課題の建設業界では、国土交通省が旗振り役となり、i-Contructionという施策を打ち出して、2016年頃から生産性を向上させる取り組みを推進してきた。国は2025年までに建設業における生産性を20%向上させる目標を立てているが、まだまだ生産性は低く、M&Aによれば他社の技術やシステムを享受できて生産性が飛躍的に上がる可能性もある。また総務や経理、財務などのバックオフィス業務の大幅な効率化につながった例は枚挙にいとまがない。

 

  • user 内田
  • time 2023年12月9日
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レビュー『地域コングロマリット経営』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地域コングロマリット経営』同文館出版 船井総合研究所

地方都市も含めた中堅・中小企業のコンサルティングを行っている、船井総研さんによる書籍。
国の政策の影響もあり、地方の中堅・中小企業が本業の収益力を失っている中で取るべき次の一手について書いております。

個人的には、複数事業を持つことは社長の力が分散され本業をないがしろにされるリスクがあり、あまりお勧めいたしませんが、一つの方法論として読んでみました。

地域コングロマリット経営とは
特定の地域で複数の事業体を持つ経営のこと。様々な事業を持つことで「ほかの事業にもプラスがもたらされる」「事業間でシナジーが生まれる」「各事業体を会社経営する経営者の役割を担える人材が多数育つ」。
人口減少に伴う労働力人口の減少マーケットの縮小は、多くの企業にとって強い逆風になっている。とりわけ地域(地方)においては、大都市への人材流出もあいまって一層苦しい。求人広告を出しても人材は集まらず、商圏人口が減り続ける中で成長が難しくなっている。事業が継続できなくなると地域から貴重な商品・サービスが消滅することもありうる。現実問題として、多くの地域で見られるシャッター通りなど、地域の生活インフラの衰退は著しい。
このような中で、地域コングロマリット経営は、逆風の中でも成長が見込める戦略であり、同時に地域活性化など社会問題の解決にも貢献する。

●中小企業は労働生産性は低く中堅企業化こそ活路
中堅企業化により「労働生産性(一人当り付加価値)」も増え、それが競争力の源泉になり、従業員や顧客、関係者へのメリットにつながる。財務省の統計では、例えばサービス業では20~49名の企業に対して、100~249名の中堅企業の労働生産性は1.5倍となっている。
求人」ついても有利に働く、なぜなら賃金(規模が大きいほど賃金が高い)、採用・育成(人事機能)、企業認知(知らない企業よりも知っている企業)の3点で優っているからだ。
資金調達力」についても、金融機関の立場に立てば、企業規模が大きいほうが(業績の好不調の審査基準はあるにせよ)経営は安定し融資をしやすい。
デジタル化」に規模が活きることもメリットであり、コピーコストが極端に低くなり、導入コストや環境整備、教育コンテンツ整備など、固定費的な性格のコストが大きいからこそ企業規模が活きてくる。

●中堅企業が地域に資する
中堅企業とはざっくりと売上が100億円以上、中堅企業予備軍で30億円以上と考えられる。
都道府県の中堅企業が占める比率を見ると、賃金との関係性が見られ、中堅企業が多いと、賃金が高い傾向がある。この背景には、中堅企業が地域の経済にとって中心的な役割を果たしていることで、雇用や所得の安定につながっていることが考えられる。
この規模感になると、地域で知られる企業になり、ブランディングも如実に変わってくる。地域からの信頼も厚くなり、従業員はその企業に属していることを誇りに感じ、経営者は地域の有力者としての責任と同時に大きな夢を描くことも可能となる。

●地域コングロマリット経営は時流に沿う
金融庁OB日下智晴氏は今日の時流に沿う理由を4つ挙げる。ひとつ目は地域の人々を守るという視点で、都市圏だと企業と消費者ははっきりと分かれていることが多いが、地方はそれが一体となっているため、地域で事業を営むことは従業員の雇用を守ると同時に、その商品サービスを利用する消費者の生活を守ることにつながる。2つ目は税収の安定であり、同じ人口規模で地域コングロマリット企業のある地域とない地域では、前者の方が税収が安定するという。3つ目は経営人材であり、経営能力の豊かな人材はそれほど多くいるわけではない中で、マーケットが大きくなっていた高度成長期であればそれなりに出来ていたとしても、顧客ニーズの多様化・世の中の複雑化した今日では、真の経営者が必要になる。多くの経営者がそれぞれの事業をやるよりも、経営人材が複数の事業をやるほうが成功確率は高い。4つ目はそんな経営人材だからこそ金融機関も融資しやすく、昔のような融資先数を争うのでなく、しっかりとした経営人材に融資をするようになってきているため、本業と異なる事業進出でも金融機関は融資がしやすい。

●持続的な成長のために新規事業参入は必須
地域コングロマリット経営を進めるうえで、何はなくとも始まらないのが新規創業であり、現在あるのが単一事業のみであれば、まずは新規事業をスタートさせなければならない。
多くの企業が新規事業に参入するのは、率直に言って、それが成長につながるからであり、逆に成長企業では新規事業が次々と生まれているとも言えるだろう。2000年代から注目されてきたIT企業のひとつにサイバーエージェントがあるが、同社の2022年の売上高は7106億円、営業利益691億円、もはや多方面に成長し、この成長の秘訣が新規事業の創出であることは間違いない。企業の成長曲線として、第一本業で成長した後に踊り場を迎えるが、そこから第二本業で成長することが大切になるのである。

 

  • user 内田
  • time 2023年12月2日
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レビュー『思考は現実化する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思考は現実化する』ナポレオン・ヒル きこ書房

作家の齋藤孝さんも薦めており世界で1億冊売れているという本ですが、10年ほど前にある方に薦められて読んでみました。

どんな逆境(失敗)にも、それと同等か、それ以上の利益の種子が含まれているのである。
という言葉が好きで、事務所内の若手にも入所式や個別に伝えることもあります。

何回も読み返しておりますが、特に「第9章 忍耐力を身につける」の所を一番読んでいると思います。

人は誰でも失敗しますし、それによって後ろ向きな気持ちや、もしかすると経済的その他の理由で立ち直れなくなりそうな時もあるでしょう。
それでも、実は失敗にはそれ以上の利益の種子が含まれている、と知ることが出来ると勇気が湧いてきます。
但し、これはあくまでも「種子」なので、土に植えて水や肥料を上げて、ずっと育てていくことで芽が出て、いつか花が咲くかもしれない、ということです。逆境(失敗)が無いと、種子すら手に入れることが出来ない、とも言えます。

書籍より引用
どのような最低の失敗であっても、そこから何の利益も得られない、ということはないのである。その失敗も別の面での成功に結び付けるのは当人の心構え次第なのだ。たとえそれを成功と結びつける接点がほとんどなくても、まったくないということはない。
大多数の人はたった一回の挫折で、敗北が身に染みついてしまうことが調査からわかった。敗北は、環境や境遇から生じるのではなく、人々が過去から引きずっている敗北感から生じるものだと調査からわかった。
成功した人々は、未来形で話をする。彼らの目は過去にではなく、常に未来に注がれている。彼ら成功者は常に「上向き」の話をしていた。失敗を後ろに置いてくれば、失敗はついてこないことを知っていたからだ。彼らの態度には妬みがなく、常に他人から学び取ろうとする心構えしか存在しなかった。

 

  • user 内田
  • time 2023年11月25日
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レビュー『心を熱くする スラムダンクの言葉』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心を熱くする スラムダンクの言葉』 齋藤孝 きずな出版

 

  • user 内田
  • time 2023年11月18日
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レビュー『アンダーグラウンド』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンダーグラウンド』 村上春樹 講談社文庫

村上春樹さんの新刊が出たタイミングで一緒に買いましたが、新刊よりこちらを先に読むことになりました。

1999年に発売された、オウム真理教による地下鉄サリン事件の被害者の方へのインタビューを収めた一冊。

地下鉄サリン事件が起きたのは、1995年3月20日の朝。
何も罪のない人たちが亡くなられたり、後遺症を持ったり、トラウマに長い間苦しめられたりと、本当に恐ろしい事件でした。
その事件のことは忘れてはいけない、だけれども世の中には何か暗く後ろ向きな思想や集団がいつ何どき現れるかは誰もわからず、社会の屈折した面を思い知らされます。

62人の関係者にインタビューを重ねた、村上春樹さんが真相に迫ったノンフィクションでしたが、特に印象的だったのは当時52歳、営団地下鉄の車掌さんであった豊田利明さんの言葉でした。

「私はオウムが憎いとは思わないようにしています。それはもう当局の人に任せちゃってます。私の場合は、憎いとかそういう次元はとっくに通り過ぎてしまっているんです。彼らを憎んだところで、そんなものは役にも立ちません。」
「オウムの報道もまず見ません。そんなものは見たってしかたないんです。それくらい見なくてもわかります。」
「オウムみたいな人間たちが出てこざるを得なかった社会風土いうものを、私はすでに知っていたんです。日々の勤務でお客様と接しているうちに、そのくらいは自然にわかります。」
「それはモラルの問題です。駅にいると、人間の負の面、マイナスの面がほんとうによく見えるんです。例えば私たちがちりとりとほうきを持って駅の掃除をしていると、今は掃き終えたところにひょいとタバコやゴミを捨てる人がいるんです。」
自分に与えられた責任を果たすことより、他人の悪いところを見て自己主張する人が多すぎます
憎しみは何も生み出しません

非常に大切で深い言葉と感じます。このような事件は二度と起きてはいけません。
世の中の良い所に目を向けて、世の中が良い方向に進んでいく後押しをしたいものです。

  • user 内田
  • time 2023年11月11日
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レビュー『不可能を可能にする 大谷翔平 120の思考』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不可能を可能にする 大谷翔平 120の思考』ぴあ

誰もが認める野球界のスーパースター大谷翔平の思考、ということで読んでみました。

13 変えなきゃいけないと思いました。今までの大事な試合で勝ちきれなかったのは自分の中に足りないものがあったからです。
大谷は自罰的な思考の持ち主だ。大一番でなかなか勝つことができない理由を自分の中に探し続けてきた。他罰的では成長がない。乗り越えるべき課題を前に、原因をほかへ求めるのは、自発的な行動を放棄することを意味している。子どもの可愛らしい甘えとは異なり、マイナスの要素を周囲に振りまきながら行う、大人の甘えである。

「20 今は、周りに何を言われても何も感じません。どちらかに絞るという感覚もありません。
大きな夢を叶える前に、未知の領域に挑戦したかった。高校から直接のメジャー挑戦を志し、当初は応じなかったファイターズとの入団交渉。球団から二刀流での育成を提案され、大谷の心が動いた。「誰ものやったことのない結果がついてくれば、ピッチャーとバッターを両方やってよかったと思えますし、そこを求めてやっていきたいと思います。」根拠のない出来る自信ではなく、出来るようにする。

「29 メンタルを切り替えるためのきっかけを常に求めている部分はあるかもしれません
大谷は読書の習慣もあり、小説、ビジネス書から漫画まで幅広く愛読している。大谷は自身をマイナス思考と分析する。読書は心の財産。本、映画など野球以外の様々なジャンルに接しながら、迷いから脱出する方法を模索する。そこには今の自分と照らし合わせ、進むべきヒントが隠されている。

「36 技術も筋力がないと出来ません。僕にはより必要になるんです。
大谷が持って生まれた身長193㎝の体格を思い通りに操るには、体に見合う筋力をつけることが重要だった。疲労の蓄積でシーズン中盤からパフォーマンスが落ちる点の克服、そして理想のフォームに到達するには筋力の必要性を感じていた。体重増で膝のケアに気を配ることも必要となるが、自分には何が足りないのかを常に模索する姿勢も挑戦へつながる。

「49 そうすれば、ベストの自分が出てくる。
自分の可能性にかけている。見つけたいもんがあるからこそ、努力を続けられるのだ。大谷にとって、それは「新しい自分」「違う自分」。それらを自覚していない「自分」だが、もう一つ現在進行形で実感が出来る「ベストの自分」がある。人は自分自身をなかなか裏切れない。大谷の発言の中に「自分」という単語が多い理由は、常に内面と向き合っているためだ。栗山英樹監督も”自分自身との約束は絶対に守らなくてはいけない”という信念がある。大谷は監督より開幕投手を言い渡されたとき、日本一になることを自分自身と約束するように促された。

「59 あそこで打つ内川さんはさすがです
マウンドにいる時、打席に立つ時、そしてベンチにいる時間。二刀流の大谷にとってその全てがステップアップのきっかけをつかむチャンスである。オールスターの際に、球界きっての好打者から学び取りたい。「見ててすごいと思ったことは取り入れていきたい」、見るもの全てが日々是勉強。謙虚な姿勢が多くの情報を目に映してくれる。

「65 イラっときたら、負けだと思っています
20代にして、すでに大人の風格を身に着けている。負けず嫌いでストイック。お酒を飲んでハメを外すことは無く、睡眠時間は1日7時間を確保する。年俸はサラリーマンの生涯年収を既に稼いでいるが、お小遣いは月10万円。声を荒げて他人に怒ることはなく、笑顔を絶やさない。「イラッときたら負け」。対処法は、大人でもなかなか出来ない領域。セルフコントロールが大谷メンタルを支えている。

「71 他人がポイっと捨てた運を拾っているんです
経営者であれ、スポーツ選手であれ、究極までやり尽くそうとすると、掃除に向かう傾向が強い。逆に言えば、掃除をおろそかにする一流はいない。大谷は高校時代から、当時の目標「160キロ」「8球団からドラフト1位」にたどり着くために必要な要素として「ゴミ拾い」を挙げていた。プロ入り後は2014年に引退した稲葉篤紀のゴミ拾いが手本になった。技だけが優れていても、一流になれない。ちっぽけなゴミ一つにも人生観が繁栄される。

「81 自分自身が日本一の取り組みをしなくてはいけないと思っています
「日本一になる」という約束を2度、交わしたことがある。1度目は高校生の時。チームとして甲子園で優勝することを目標とし、そのためには何をすべきかを考え、まずは取り組む姿勢、内容を日本一に充実させるべきだと考えた。2度目は2016年2月6日。故・ベーブルース氏の誕生日に監督室へ呼ばれ、栗山英樹監督から手紙を書くように言い渡された。「今年、日本一になります」1度目の約束は実現できなかったが、2度目の約束は果たした。まだ見ぬ未来でも、大谷はきっと自分の約束を実現しようとするはずだ。

「103 先入観は可能を不可能にする
高校時代に「好きな言葉」として挙げたフレーズだ。これは伝説のボクサー、故・モハメド・アリ氏による名言の一説「不可能とは、自力で世界を切り開くことを放棄した臆病の言葉だ。不可能とは、現状に甘んじるための言い訳にすぎない。」大谷にとっては、岩手・花巻東時代の指導者・佐々木洋監督に伝授された言葉だという。アリ氏の名言には続きがある。「不可能とは可能性だ」。未知の領域に挑戦し続ける大谷はそれを体現している。

「107 好きでやっていることなので、基本的には何を言われても気になりませんでした。
ファイターズは、個々人に合った育成プログラムを実施することも強みだが、大谷に関してはともに手探りしながら、調整方法を確立してきた。大谷は調整法が難しいとは口にしても、決して苦しい、つらいという言葉は発してこなかった。自分がやると決めたこと。苦しかろうが、つらかろうが、やり続ける。決断するとしたら、その先に見えた未来で決めればいい。

120 僕は、もっともっと、出来ると思います。
誰よりも、自分が自分に期待をしている。その期待を裏切りたくないからこそ、走り続けることが出来る。理想が高ければ高いほど、苦しみは大きい。「日本一の取り組み」を目指すだけに「納得いかないことはたくさんあります。練習しかない」とさらなる修業を積むつもりだ。大谷の「もっともっと」をこれからも長く、見続けられる我々は幸せだ。

  • user 内田
  • time 2023年11月4日
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レビュー『論語の活学』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

論語の活学』 安岡正篤 プレジデント社

非常にわかりやすく論語の考え方を書いた名著。
印象的だった内容を抜粋させていただきます。

●君子の条件-誠実(内的規範)と礼(外的規範)
「子曰く、質、文に勝てば則ち野。文、質に勝てば則ち史。(雍也第六)」
人間も木と同じ。少し財産だの、地位だの、名誉だの、というようなものが出来て社会的存在が聞こえてくると、懐の蒸れといっしょで、いい気になって、心理を聞かなくなる。道を学ばなくなる。つまり風通しや日当りが悪くなるわけです。したがって人間はやはり、真理を学び、道を行ずることがどうしても必要であり、これを忘れると駄目になる。

●政治の要諦-率先して骨折ることに倦むことなかれ
「子曰く、之に先んじ之を労す。益を請う。曰く、倦むこと無かれ。(子路第十三)」
政治家というものは、何よりもまず民衆の先頭に立って骨を折らなければいけない。そうして彼らをねぎらうことを忘れてはならない。倦むことなかれ=途中で嫌になってはいかんぞ ということ。人間というものは、自分の思うようにならぬと、つい嫌になりがちであります。これは政治家に限らず、およそ人に長たる者の常に注意しなければならずことであります。

●怒りを移さず、過ちを繰り返さない
「孔子答えて曰く、顔回なる者あり、学を好み、怒りを移さず、過ちをふたたびせず。(雍也第六)」
怒りを移さず、過ちを繰り返さない、なかなかできないこと。たいていは腹立ちまぎれに他に当たってしまう。ああ、自分が不忠であったと反省する人は意外と少なく、小事にその人間がよく現れるといいますが、そのとおりで、何でもない些細なことにその人の性格がよく出るものであります。

●人の世の本質-共に立ち難く、共に権るべからず
「子曰く、共に学ぶべし、未だ共に道をゆくべからず。(子穿第九)」
人間が生活するに当たって一番大事なことは何かと言うと、まず道をつけること。道がなければ歩けない。一堂に会して共に学ぶという事は、志さえあれば誰でもできることです。複雑な世の中に処して共に権ってゆく段階となると、夫婦の考え方や為さんとするところが違って、いろいろと問題が起こる。しっくりと呼吸が合うようにやってゆくには、双方がよほど修養しないといけない。

●傲慢でケチな人間は論ずるに足りない
「子曰く、もし周公の才の美有るも、驕且つ稟ならしめば、その余は観るに足らざるのみ。(泰伯第八)」
周公のような人間の理想、革命・建設の大いなる手腕を備えた偉大な人間であっても、驕且つ稟ならしめば駄目になってしまう。例えばスターリンや毛沢東は、ある意味才の美を具えておる、偉大である。しかし、驕且つ稟であり仁の反対、徳がない。それでは他の事がいくらよくできても、論ずるに足りない。

●燃えている人間は理想像を抱く
「甚だしいかな、吾が衰えたるや。久しきかな、吾れ復夢に周公を見ざるなり。(術而第七)」
人間は熱烈な理想に燃えておれば、自ずから理想像を抱くようになるものでありまして、これは実に人間らしい尊いことである。

●悪にいかに対応すべきか
悪は非常に強いものである。悪は、何事によらず攻撃的で、人を責める。いかに対応すべきか、泣き寝入りをするのは全くお話にならぬ意気地ない態度です。偽善的で立派な理由をつけてその意気地なさをごまかそうとするのも良くない。
神武型、人間の道を重んずるがゆえに、悪を憎んで断固としてこれを封ずる態度がふさわしい。人を憎むと言っても人間をにくむのではなく、その人間の行う悪をにくむのである。その人間を憐れんで、悪から解放してやるのです。

●慈悲・仁愛の心
人が万物と生を同じうするところより生じる共感を愛と申します。知を頭脳の論理とすれば愛は心腹の論理である。万物と共に生き万物と一体となって、天地の大徳である「生」を育てようとする徳を「仁」と申します。
人間は必ずしも知の人でなくてよろしい。才の人でなくてもよろしい。しかし、どこまでも情の人・愛の人でなくてはなりません。

  • user 内田
  • time 2023年10月28日
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