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レビュー『社長はメンタルが9割』
『社長はメンタルが9割』 押野満里子 かんき出版
社長はつらいよ がなくなります マイナス思考に飲み込まれないために が謳い文句の一冊。
社長が努力と根性で苦しんで、会社が成長する時代は終わりました。これからの時代は、社長が自己犠牲のスパイラルに陥らず、自分の感情と向き合い、感謝と信頼によって経営する会社が成長します。
・弱みを見せる
「自分の欠点をさらけ出す人ほど、人から愛される」という法則があります。
だからこそ社長が普段見せない弱みを見せる本音は、そのギャップが社員に響きます。
メンバーに本音で接してもらうために、率先してダメな自分を正直にさらけ出すようにしていきます。
素直な人のもとに素直な人が集まります。
・まわりの人を信用する
意見が違う相手は会社にとって貴重な存在。
「社長の器」という言葉があります。「自分と異質なものを受け入れる心の大きさ」も、その器を大きくします。リーダーになったら、違うタイプの人をどんどん受け入れて、化学反応を起こさないと、強い会社は作れないことでしょう。
社長として社員を率い、会社を成長させるためには、意見や価値観が異なる相手を白黒はっきりさせないグレーゾーンに置くことも大切です。
・感情のコントロール
マイナスの感情を持ってもいい、と自分に許可をしてコントロールしないで吐き出しましょう。そこから、怒りの原因が自分のこだわりや好みだったとわかると、「わざわざ相手に伝えるまでもないかな」と思えてきます。
未来がどうなるか、誰にもわかりません、心配するあまり、社員の時間をいたずらに奪ってしまうのは、最善な経営とは言えません。どうせ妄想するなら、楽しいイメージを持って妄想しましょう。
やったけれど結果が出なかった自分を肯定してあげること、なんならダメだった自分について「ダメだっていいじゃん」くらいに認めてあげてあげる(できていることにクローズアップする)ことがスタートです。
・後継者が育たないことへの不安
「最高の指導者ほど、何も言わない」という言葉あります。スーパーマン社長ほど、つい、何でも自分でやってしまったり、的確すぎるアドバイスをしてしまったりして、社員の自主性を奪ってしまうようです。アドバイスが悪いのではなく、アドバイスはあくまで相手が主体になるようにしないと、ただの命令や指示になってしまいます。社員の自主性を重視して、良い所を伸ばして、やる気に火をつける、それが伸びる会社の社長さんのあり方です。会社の理念とかDNAだけは引き継いでもらって、新規事業は次の世代に任せてみることが会社を存続させるコツです。
・社員が辞めていくことの痛み
人事も自分で担当されている社長さんが、よく「自分が採用した社員が辞めていく時には、とても胸が痛む」ということを話されます。でもそれは「人が辞めていくことは寂しい」「自分の会社にいることが相手にとって正しいことだ」という思い込みでしかありません。なぜなら、この会社で働き続けるよりも、ほかの会社へ行ったほうが、その人にとって幸せなのかもしれないからです。その人の本当の幸せを考えて「ここじゃないかも」と考えたら、別に辞めていくことをネガティブにとらえる必要はありません。さらに言えば、相手が会社を辞めたのは「自分(社長)の力が足りなかった」わけでもありませんし、自分の会社が否定されたわけでもありません。たまたま、自分の会社と合わない人が来てしまっただけのことです。
・社長という仕事はたくさんの人たちを幸せにできる仕事
どうか「頑張る」のをやめてください。「社長なのに」なんて、自分を責めないで「ダメな自分のままでいい」「プライドや見栄があったっていい」と自分を認めてあげてください。人は、まず、自分を認めて、安心しないと、フラットな気持ちで、自分を変えることができません。「まず、自分の感情が幸せになることで、自然と周りを幸せにすることができる」という感情と結果の法則を思い出してください。そうなれば、お金はあとからついてきます。そして、どうか、今の自分があたたかい気持ちで、幸せだなと思える、そんな生き方をしてください。時代は目に見える地の時代から、自分の感情や信念、信頼や感謝など目に見えないものが大事な風の時代に入りました。頑張って、どこにでもある結果を作る時代から、溢れる「想い」で、自分にしかできない結果を作る時代へ。
- 内田
- 2022年3月5日
- 本
- 0
レビュー『21 Lessons』
『21 Lessons』ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社
多くのビジネスマンが読んだ『サピエンス全史』で有名な歴史学者ハラリさんの最新作ということで読んでみました。
今日の世界で何が起こっているのか。ドナルド・トランプの躍進は何を意味するのか?フェイクニュースの蔓延に対して打つ手はあるのか?自由民主主義はなぜ危機に陥っているのか?神は復活したのか?新たな世界大戦が到来するのか?どの文明が世界を制するのか?西洋の文明か、中国の文明か、イスラムの文明か?ナショナリズムは不平等と気候変動の問題を解決できるか?
テクノロジーにはすばらしい期待を持てるとはいえ、むしろこの本では脅威と危険を際立たせたく、物事がとんでもない方向に進みうる可能性について説明する。
今日、生命を設計しなおし作り変える力を、AIとバイオテクノロジーが人間に与えつつある。
(以下、19章~21章の抜粋。)
●教育(変化だけが唯一不変)
今日私たちは、2050年に中国や世界のその他の国々がどうなっているか、想像もつかない。人々が何をして暮らしを立てているかも、まったくわからない。今日子供たちが学ぶことの多くは、2050年までに時代遅れになっている可能性が高い。そのような世界では、教師が生徒にさらに情報を与えることほど無用な行為はない。生徒はすでに、とんでもないほどの情報を持っているからだ。人々が必要としているのは、情報ではなく、情報の意味を理解したり、重要なものとそうでないものを見分けたりする能力、そして何より、大量の情報の断片を結び付けて、世の中の状況を幅広く捉える能力だ。
それでは、私たちは何を教えるべきなのか?多くの教育の専門家は、学校は方針を転換し、「4つのC」すなわち「critical thinking(否定的思考)」「communication(コミュニケーション)」「collaboration(協働)」「creativity(創造性)」を教えるべきだと主張している。学校は専門的な技能に重点を置かず、汎用性のある生活技能を重視すべきといい、なかでも最も重要なのは、変化に対処し、新しいことを学び、馴染みのない状況下でも心の安定を保つ能力になるだろう。新しいアイデアや製品を考え付くだけでなく、何よりも自分自身で何度となく徹底的に作り直す必要がある。そのような世界で生き延び、栄えるには、精神的柔軟性と情緒的なバランスがたっぷり必要だ。自分が最も知っているものの一部を捨て去ることを繰り返さざるを得ず、未知のものにも平然と対応できなくてはならない。汝自分を知るべきだ。
●意味(人生は物語ではない)
人生の意味とは何か。どの世代も新しい答えを必要する。なぜなら何を知っていて何を知らないかは変わり続けるからだ。人はほぼ例外なく物語を語ってもらうことを期待している。宇宙のドラマの中で自分がどんな役割を果たすのかを説明してくれる物語を求める。その役割の中で、私は何か自分より大きいものの一部となり、自分の経験や選択のいっさいに意味が与えられる。一つしかアイデンティティを持たないという人はまれだ、たんにイスラム教徒だけ、あるいはイタリア人だけ、はたまた資本主義者だけ、という人はいない。宇宙は私に意味など与えてくれない、私が宇宙に意味を与えるのだ。それが宇宙における私の使命だ。私には決まった運命もなく自分自身の運命を自由に創り出せる。
ブッダの教えによると、宇宙の基本的な現実は、万物は絶えず変化していること、永遠する本質を持つものは何一つないこと、完全に満足できるものはないことだという。苦しみが現れるのは、私たちがこれを正しく認識しそこなっているからだ。というわけで、ブッダによれば、人生には何の意味もなく、人々はどんな意味も生み出す必要はないという。私たちが何かをしていることこそが問題なのだ。必ずしも身体的な意味ではなく、精神的な意味で、だ。
●瞑想(ひたすら観察せよ)
人の誕生から死まで持続するものなどあるのだろうか?体は刻々と変化し、脳も刻々と変化し、心も刻々と変化し続ける。その瞬間が過ぎ、次の一瞬が始まるときに何が起こるかを理解できれば、死の瞬間に何が起こるかも理解できる。たった一回の呼吸の間、自分を本当に観察できれば、すべてが理解できるだろう。だが、瞑想を数時間してみただけで、自分をほとんど制御できないことがわかる。
瞑想をしてあるがままので現実を観察する中で、私が気づいたうちで最も重要なのは、自分の苦しみの最も深い源泉は自分自身の心のパターンにあるということだった。苦しみは外の世界の客観的な状況ではなく、それは私自身の心によって生み出された精神的な反応だ。これを学ぶことが、さらなる苦しみを生み出すのをやめるための最初のステップである。人間の心や自分自身の心、自分の内なる恐れや偏見やコンプレックスとの瞑想による対処法を理解すれば、効果的に行動したり協力したりすることが易しくなる。
- 内田
- 2022年2月19日
- 本
- 0
レビュー『日本のM&Aの歴史と未来』
『日本のM&Aの歴史と未来』(一社)金融財政事情研究会 きんざい
日本のM&Aの歴史を、中小企業M&Aを支えてきた人たちの言葉をもとに描いた書籍。
昨年まで、M&Aを行おうとする中小企業が安心して取引に参加できるよう、2020年には、中小企業M&Aガイドラインが策定され、2021年8月にM&A支援機関に係る登録制度が創設された。
民間のM&A支援機関では、2021年10月に自主規制団体が設立され、国は2021年4月に策定した「中小M&A推進計画」に沿って、官民で連携した各種の取り組みを進めていっている。
日本企業には、大企業に重くのしかかる生産性の低さという問題がある。
経済産業省が報告しているとおり、日本の大企業はコングロマリット化するほど生産性が低下する傾向がある。
その主な原因は、事業や子会社・関連会社の選択と集中が進んでいないためであり、日本経済と国民の生活を守っていくためには、事業承継によって中小企業の経営資源を残すとともに、生産性を上げる努力が必要である。
2005年の世界に占める日本のGDP(名目)の割合は10.1%、2019年には5.9%となった。
大企業ではなかなか収益性が上がらず、その大きな要因は「イノベーション」が起きていないことと考えられている。
アメリカやヨーロッパは年々付加価値の高いモノやサービスにシフトし、価格を引き上げておりイノベーションを起こし、価格競争から離脱した付加価値の高いサービスを生み出している。
日本でイノベーションが生み出せないのは「デジタル競争力」「設備投資と研究開発」「人材育成」の3つが弱い点にある。
営業利益が出ても設備投資と研究開発にまわさず、修士課程への入学を含めて個人が学ぼうとする意欲で遅れている。
M&Aによる生産性向上には次のようなものがある。
経営資源の統廃合、仕入れ交渉力の強化等によるコスト削減、販売チャネルの相互活用、製品ラインナップの補完。
自社にない人材、スキルノウハウの獲得。新たな企業文化の確保生成。不連続かつスピーディーな変革の実現。
M&Aアドバイザー先駆者-野村グループ後藤氏の話
大企業の論理、大企業の行動原理は、M&Aビジネスではまったくそぐわず、中小企業の行動原理、中小企業経営者の当事者意識のみがビジネスを生む。
和気あいあいの仲良しクラブでは、M&Aビジネスはできず、ハードネゴシエーションの世界だ。
ノンリスクを求めることは避けてほしい、徹底的にリスクテーキングを行っていただきたい。哲学的な表現になってしまうが、リスクを数多く持てばリスクは少なくなる。
情報の素早い処理と情報に対する素早い反応がこのビジネスのポイントとなるため、情報と案件は1日抱え込んこんだら腐ってしまう、需要対応では遅すぎるため需要創造が仕事となる。
M&Aが成立するためのポイントはいくつかある。
なぜ譲渡するのか、その理念と理由を明確にし、財務諸表をはじめ必要資料を十分に提供すること。
譲渡条件の決定に際しては、その対象会社が将来にわたって幸福になることを第1順位に置いて検討すること。
取引金融機関の全面的な理解と協力を得ながら、経営の継続の原則を大切にすること。
顧客に「やめたほうがいい」と言える胆力も必要となる。
地方創生とM&A
生活の質、クオリティ・オブ・ライフという意味では、大都市よりも地方の方がおそらく圧倒的に高い。
地方の活性化のためには必要な最大要素の一つは人材ですから、優秀な人が地元に来ないと地方はさらに疲弊していくのが目に見えている。
地方は企業の存続という視点だけではなく、成長戦略を展開しなければ、優秀な人材が戻ってくる可能性は上がらず、その戦略のためにもM&Aが有効である。
地方には大都会と同じ数だけ優秀な人がいるわけではないので、地方の中堅企業をバリバリ優秀な企業家に買収してもらい、企業価値を高め、周辺の経営者たちが刺激を受けて全体レベルが上がっていく。
「あれが経営か」「あれが成長戦略か」「俺たちも頑張らないと、一度勉強会やろうぜ」
- 内田
- 2022年2月5日
- 本
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レビュー『これからの飲食店 数字の教科書』
『これからの飲食店 数字の教科書』同文館出版社・東海林健太郎
ポストコロナ時代こそ、飲食店の事業者さんには活躍をしていただきたいところです。
客数を元にした数字を生かして、飲食店経営を成長させていくためのコツが書かれた書籍です。
〇客数アップ対策
商圏範囲を知る:徒歩のお客様は半径500m以内。車のお客様は半径2km以内。
常連客のお連れ様:再来店につながりやすく、だからこそ目の前のお客様を大事にする。
情報発信:味の記憶は24時間と短いので、SNSや口コミ情報にしておく。
お客様情報収集:いいお客様の情報を集めるため、3年くらい掛けて3回ほどの早めの還元とする。
〇客単価アップ対策
推奨:+ドリンク+トッピングなどの、声掛け推奨活動を行うと大幅な利益アップにつながる。
推奨タイミング:ファーストオーダー時(皿下げ時やラストオーダー時も)に理由とともに推奨する。
セット化:人件費や諸経費が増えずに利益金額の追加へ。(現状メニュー単価アップは慎重に。)
本日のおすすめ:希少性を伝え、そこから注文品数が増えていく。
〇原価低減対策
パートアルバイト人件費:売り上げ(客数)目標をターゲットにしながら、人件費率も考慮してシフトを組む。
食材過剰仕入れ:置く場所を決め、発注目安を決め、記録する。
廃棄ロス:1%のロスが3%~5%の売上につながることを知り、忙しい月ほどロス管理に気を付ける。
複数ポジション:複数ポジションを兼務できる状況を作り、最小シフトで回せればコストを抑えられる。
〇息の長いお店づくり
飽きられないお店:定番メニューを磨き、食べてほしい理由を伝え、記憶に残りやすくする。
変化をつける:定番メニュー定着後に、変化メニューを定期的に投入していく。
同時に行う:客数アップと客単価アップは(どちらかが落ちてはよくないので)両方を見ながら行う。
季節の恒例行事づくり:2か月サイクルイベント実施⇒3分の2は失敗するので、次年度に改善。
- 内田
- 2022年1月22日
- 本
- 0
レビュー『EQ 2.0』
『EQ2.0 心の知能指数を高める66のテクニック』 サンガ トラヴィス・ブラッドベリー
EQとは心の知能指数の意味で、他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能の高さを表します。
EQは仕事の成功にものすごく影響し、成功し充実した人生を送るためには出来る限りEQを伸ばした方がよい。
〇自己認識力を伸ばし人生にポジティブな変化を生み出すテクニック
1.自分の感情を「いい」か「悪い」かで見ない 2.感情の波及効果を観察する 3.居心地の悪さになれる 4.感情を身体で感じる 5.あなたの感情ボタンを押す人やものを知る 6.鷹の目で俯瞰的に自分を見る 7.感情を日誌につける 8.悪い気分に左右されない 9.いい気分にも左右されない 10.立ち止まって「なぜそう感じるのか」と自問する 11.自分の元々の価値観に立ち返る 12.自分自身を振り返る 13.本や映画や音楽の中に自分の感情を見つける 14.相手にフィードバックを求める 15.ストレスのかかった時の自分を知る
〇自己管理力を高め、周囲の人を怒らせなくなり嫌われなくなるテクニック
1.正しく呼吸する 2.感情と理性を紙に書き出す 3.目標を公開する 4.10まで数える 5.とりあえず放っておく 6.自己管理の達人と話す 7.笑顔や笑い声を増やす 8.毎日問題解決の時間をとる 9.ひとりごとをポジティブにする 10.新しいスキルを身につけた自分の姿を思い描く 11.いい睡眠をとる 12.制約より自由に目を向ける 13.目の前の行為に集中する 14.関係者でない人と話す 15.出会うすべての人から学ぶ 16.スケジュールの中に充電時間を入れる 17.変化がすぐそこまで来ていることを認める。
〇他社認識力を高め、人間関係から企業利益まですべてに良い影響を与えるテクニック
1.挨拶するときに相手の名前を呼ぶ 2.ボディーランゲージを観察する 3.相手の気持ちに沿ったタイミングを見計らう 4.質問を準備しておく 5.メモをとりすぎず相手を観察する 6.集まりに前もって備える 7.頭の中を片付ける 8.過去未来でなく今に集中する 9.週に二度15分だけ職場の雰囲気を観察する 10.映画の中にEQを見る 11.傾聴の練習をする 12.カフェなどに人間観察に出かける 13.文化的なルールを見極める 14.正しく心を読めているか確かめる 15.他人の立場に立ち切る 16.全体像を見る 17.その場の雰囲気を読み取る
〇人間関係管理力を高め、良い関係を続けるための努力テクニック
1.素直に心を開き好奇心を持つ 2.自分なりの自然なコミュニケーションのスタイルを磨く3.仕草に気を付け相手を混乱させない 4.ちょっとした思いやりをお示す言葉を使う 5.フィードバックを素直に受け止める 6.信頼を築く 7.自由コミュニケーション政策を取り入れる 8.人間関係がよくなる怒り方を知る 9.どうにもできないことは自然にまかせる 10.相手の感情を認める 11.相手の気持ちをフォローする 12.気にかけていることを行動に示す 13.決定の理由を説明する 14.率直に建設的にフィードバックをする 15.意図と結果を一致することを確かめてから行動する 16.ちぐはぐな会話を和解で修復する 17.必要な厳しい対話を上手に交わす
- 内田
- 2022年1月8日
- 本
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レビュー『騎士団長殺し』
『騎士団長殺し』 新潮社 村上春樹
2017年に発刊された村上春樹さんの長編小説、4年ほどかけて上下巻(第1部507P・第2部541P)を読み終わりました。
村上さんの長編小説はけっこう読んでいますが2000年代に入ってからは、
『海辺のカフカ(2002年)』→『1984(2010年)』→『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(2013年)』
の順で読んできました。
村上春樹さんの作品を熱狂的に愛する人のことを”ハルキスト”と呼ぶそうですが、そこまで熱狂的ではなくても、学生時代から世界観や言葉が好きで読み続けています。
今回読んだ『騎士団長殺し』は、肖像画家の主人公「私」が、住んでいるアトリエの屋根裏で『騎士団長殺し』というタイトルの日本画を発見し、さまざまな不思議な出来事へと巻き込まれていく話です。
村上春樹さんの長編小説の主人公は、印象的な言葉を残すが多いのですが、今回の作品でもいくつかありました。
「大胆な転換が必要とされる時期が、おそらく誰の人生にもあります。そういうポイントがやってきたら、素速くその尻尾を掴まなくてはなりません。しっかりと堅く握って、二度と離してはならない。世の中にはそのポイントを掴める人と、掴めない人がいます。」(第1部p158・免色さん)
「完成した人生を持つ人なんてどこにもいないよ。すべての人はいつまでも未完成なものだ。」(第2部p513・主人公)
「この世界には確かなことなんて何ひとつないかもしれない。でも少なくとも何かを信じることはできる」(第2部p528・主人公)
- 内田
- 2021年12月25日
- 本
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レビュー『チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃』
『チャイナテック 中国デジタル革命の衝撃』WEILIN ZHAO 東洋経済新報社
アメリカのGAFAMに対抗するかのように、中国で急成長を遂げたチャイナテック。
1978年の鄧小平による改革・解放で沿岸部-深圳や厦門に経済特区を設け、2010年に日本を抜きGDP世界2位となった中国経済は、大量投資と輸出指導モデルが行き詰まり、イノベーションへの戦略転換を図った象徴がチャイナテック。
ここ最近、富の源泉が有形資産のモノから無形資産の情報に移りつつある中で、データを占有するプラットフォーマー企業が優位に立っております。
このチャイナテックの動向を見ることで世界の潮流を読み取ることができます。
・BATHとTDMP中国の巨大IT企業は「BATH」と呼ばれているBaidu(バイドゥ・検索)、Alibaba(アリババ・EC)、Tencent(テンセント・SNS)、Huawei(ファーウェイ・通信機器)の4社。BATHに続く中国の主要IT企業は「TDM」と呼ばれるToutiaoとTikTok(トウティアオ・ニュース配信、ティックトック・動画配信)、Didi Chuxing(ディディチューシン・ライドシェア)、Meituan(メイトゥアン・生活関連)、PDD(SNS型EC)。各社の時価総額はGAFAに迫る勢いである。
・研究開発と特許取得
研究開発費を重視するファーウェイの2010〜2019年の研究開発費の合計は、日本円にして約10兆円。ファーウェイの18万人以上の社員の約45%が研究開発に従事している。AIやブロックチェーンなど、「先端分野」に分類される10項目のうち、9項目の特許出願件数で2017年には中国が世界首位に立ちました。
・AIとブロックチェーン
AIの画像認識技術によるゴミの自動分別サービスの例。中国ではゴミの分別という習慣がつい最近までなかったこともあり、AIが新しい習慣に戸惑う人々をサポートする役割を果たしている。ブロックチェーンに関して、金融や物流、保険サービスのような分野において、国を挙げて研究開発・普及が進められている。「情報を改竄できない」という特徴を生かして様々な分野への活用が進んでいる。
・人口ボーナスが終わってるからこそのデジタルイノベーション
中国の高度成長期は既に終わっており、2019年のGDP成長率は6.1%で、1991年以降最低の水準(2007年14.2%。ここ数年は6~7%で推移)。高度経済成長の最中であるというのは誤った理解であるが、決して小さな数値ではない。
・デジタルマインド
日本社会がデジタルイノベーションを広く受容していくためには、よりポジティブな世論形成と、デジタルマインドの涵養が重要。高齢化が進み、デジタルネイティブ層の薄い日本においては、「若い人はテクノロジーに慣れてるけど」などと言っている場合ではなく、このまま衰退の一途を辿りたくないのであれば、趙氏の提言をリアリティある施策をもって実行に移していくことが欠かせない。
- 内田
- 2021年12月11日
- 本
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