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レビュー『成功者の告白』

 

 

 

 

 

 

 

 

成功者の告白』 講談社α文庫 神田昌典

サラリーマンをしていた主人公タクが、起業家として成功していく過程をマイナスの部分を包み隠さず書かれていて、
ストーリー仕立てで興味深い本でした。

仕事熱心な成功者のプライベートな部分に焦点を合わせれば、英雄像は色褪せて、親子断絶・家庭内離婚・愛人騒動・家庭内暴力・不登校・引きこもり・うつ病等、機能不全に陥っている家庭は珍しくない。
根底に流れるテーマは、ビジネスと家庭とのバランスを取りながら、いかに会社をスムーズに成長させるか、ということである。

起業をしてうまくいっていても、仕事のために家庭があるのではない、家庭が幸せになるために、仕事がある
そこを履き違えてはいけない。
妻の方も夫の成功を喜ばなければいけないとわかってはいても、感情は複雑で、夫だけが社会で認められ置いていかれることの不安もある。
あなたが思う以上に、仕事と家庭は密接に関連をしている
人間が集まると感情の場をつくる。それは家庭でも職場でも同じ。
ポジティブになるグループがあると、その動きとバランスを取るようにネガティブなグループができる。
社長がプラス思考で前向きになりすぎると、そのスピードの出しすぎを抑えるかのように、マイナス思考の人間が出てくる。

急成長企業は創業四年もすると八割方マネジメントの問題に直面し、社員が病欠しがち、遅刻しがち、社員が居つかない、配送上の問題、品質の低下、モラルダウン、社員が社長の悪口を言い出す、などなど。
この時期は会社の第二創業期で、家業から企業への生まれ変わる契機。
お客様のクレームの質が変ってきており、怒りを受けた社員がその怒りを家庭に持ち帰り、自分に向けてしまう社員は病欠や退職をすることになる。
経営では、そこに集う人間が感情の場を形成してその動きを推し進めるため、社員や顧客の感情を大切にできるようソフト面のシステム化の必要がある。

働く場」自体を向上させていかないと問題が繰り返す。
能力がないからさっさとクビを切るという文化は、相手から奪うという文化でありそれは作らない方が良い。
これからの時代は、発想力を導く仏の経営が良いが、ただ優しさだけではだめで規律と厳しさも併せ持つべき。
子育てと同じで母親の愛という土台(相手を承認すること)の上に父親の規律(会社の憲法であるクレドを決めて繰り返し伝える)を持ってこないと、チーム体制の組み立てはできない。
クレドについては、自分の意見を言ってもらい価値観や行動様式を実際に応用するために、考える人間を作っていく。
会社で新しい試みを実行していくにあたって、反発が出た場合は、一対一で話し合う機会を持って、相手の怒っている理由に徹底的に耳を傾け、お互いにわだかまりを解消しておく必要がある。

 

  • user 内田
  • time 2022年10月22日
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レビュー『働き方5.0』

 

 

 

 

 

 

 

 

働き方5.0』 小学館新書 落合陽一

 

もはや、デジタル情報があふれ、人工物と自然物が垣根なく存在する環境が人間にとっての「新しい自然」です。
AIやロボットなどの進化もめざましいものがあります。
2017年頃からは、日本国内でもRPAがブームになりました。
ホワイトカラーの典型的なデスクワークをプログラムによって自動化して代行していくRPAは、工場で産業用ロボットがブルーカラーの仕事を代行するように、オフィスでホワイトカラーがやってきた仕事をこなしてくれますので、人間は努力の仕方を変えることを求められています
一方で、機械では代替されにくく、付加価値の高い能力を持つ人材もますます求められ、人材としての価値が高まっています。
AIやロボットが幅広い分野で進化し人間と共に働いていく時代イコール「働き方5.0」の時代は、人間がやるべきことの本質を考えこれからの世界を作るための考え方を提示する必要があります。
適切な課題設定を社会に創造するのが、機械に代替されない付加価値の高い人材=クリエイティブクラス の役割です。
シンギュラリティ(AIによる生活革命)と言えるほどの変化はまだ訪れていませんが、ウーバーイーツのようにシステムが人間の上司のように振る舞う場面は増えております。
そのような世界で、つぎの時代に向けてどんなことを学ぶべきか考えるのは本当に難しいことですが、「コンピュータには不得意で、人間がやるべきことは何か」を模索することが大事です。
いまの世界でホワイトカラーが担っている仕事は、ほとんどシステムが担うことになるかもしれませんが、システムになくて人間にある「モチベーション」に注目して、コンピュータを使いこなし「魔法をかけられる人」(システムを作る側)になれるかで大きな違いが生まれるでしょう。
いまでも多くの親は、我が子が「大企業の社員」になることを望んでいますし、学校教育も専門性を深めるよりも処理能力が高いジェネラリストを育てることを目指しているように思えます。しかし、いまの小中学生が将来「コンピュータに駆逐されない自立的な仕事」をできるようになるには、何でも水準以上にこなせるジェネラリストではなく、専門性を持つスペシャリストになることが必要です。
現代のリソースは脳の中だけにあります。もはや栄養のない情報だけでは満足できない世界になっており、自分にとって価値のある、美味しい肉や野菜のような情報を与え続けなければ、人々が満足しない世界になっています。誰にでも作り出せる情報の中には、価値のあるリソースはない。その人にしかわからない「暗黙知」や「専門知識にこそリソースとしての値打ちがあります。
  • user 内田
  • time 2022年10月8日
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レビュー『元彼の遺言状』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元彼の遺言状』 新川帆立 宝島社文庫

2021年度の第19回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。
作者の新川帆立(しんかわほたて)さんは東大法学部卒の弁護士で1991年生れ。
この若さでミステリー小説を書いて賞をもらうという点が凄いです。

作品にもその弁護士としての知識経験がふんだんに盛り込まれ、主人公の剣持麗子も大手法律事務所の20代弁護士です。
弁護士のお話は小説になりやすいですし、海外ドラマのSUITのようにドラマティックです。
大手法律事務所の内情もわかりますし、作品に出てくる村山弁護士のように町の小さな法律事務所の弁護士像もよく描かれています。

こちらの作品はミステリー作品で殺人事件も出てきますが、私が注目したのは経済小説の要素も入っていた点です。
作品では大手製薬会社-森川製薬の御曹司・森川栄治が亡くなるところから物語がはじまるのですが、その森川製薬の経営や株式について、詳細に書かれていきます。
株式の相続は現代の中小企業でも大きな課題となっておりますが、上場している大手企業の場合も同様に複雑な話になりがちです。

経営陣としてはあまり良からぬ人たちに株式がわたってほしくないですし、会社にある程度の影響を与えるには自分が株式を取得したいと考えます。
また、具体的なM&Aの話が出てくるあたりも経済小説チックなのですが、株式譲渡契約書や法務DD報告書の話も出てくる所も身近に感じました。

新川帆立さんは現在は弁護士業務は行わず、小説家業をメインで行われているようで、今後の活躍が楽しみです。

 

 

  • user 内田
  • time 2022年9月24日
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レビュー『口腔ケアと酸素ルームで100歳まで健康に生きる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口腔ケアと酸素ルームで100歳まで健康に生きる

 

弊社スタッフのご親族のお客様が酸素ルーム事業を開業されたので、行きましたところ、こちらの本がありましたので読ませていただきました。
酸素ルームの感想から書きますと、60分ほど体内に酸素を入れることで、疲労が取れてリラックスができ、美容効果も高いそうです。
実際に60分ほど使ってみて、疲れも取れて首肩の痛みも和らぎました。
以下、書籍より。
酸素ルームに入ると、時間の経過とともに徐々に手足などの末梢部の血流量が増大し、交感神経のはたらきを抑制して、副交感神経のはたらきを高めることで自律神経のバランスが正されます。
酸素ルーム滞在後は、赤血球中のヘモグロビンが酸素と結びついたきれいな丸となり、一つひとつが独立して血液がサラサラになり不用物を流してくれます。
監修をお願いしました神戸大学藤野英巳教授と日本気圧バルク工業の共同研究で、NK細胞が短時間で増加することが確認されました。NK細胞とは、リンパ球に含まれる免疫細胞で、人体に侵入した外敵などの異常細胞を攻撃、殺傷する能力を備えている細胞です。
  • user 内田
  • time 2022年9月10日
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レビュー『若手育成の教科書』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若手育成の教科書~サイバーエージェント式 人が育つ抜擢メソッド』 曽山哲人(サイバーエージェントCHO)

サイバーエージェントのCHO(最高人事責任者)の方が書いた著書ということで読んでみました。

〇どの企業も悩む「若手が育たない」問題
・声
マネジャー人材がいない、リーダー候補が不足している。いざマネジャーに昇格させても、なかなかうまくいかない。以前より若手が受け身になっている。さまざまな企業の人事担当者などから、このような声を聞くことがあります。
また、若手社員からも、もっと成長したいけれどその機会が今の会社にはない。新入社員のころは研修も多く学ぶことがあったが、入社2年目の今、リモートワークで放置されている、など多くの悩み相談を受けます。
・若手育成で一番大切なこと
私はさまざまな若手社員を見てきましたが、共通して言えるのは、みんな成長意欲があることです。最初は全員、やる気があって意欲もある、それが続かないことが問題なのです。若手が成長したいと思う理由は、自信を手にしたいからです。つまり若手育成で最も大切なことは、自信を持たせることなのです。
・自信とは
若手は例えば上司から「このスマホの設定わかるかな」と言われれば「これですね」と躊躇せず上司のスマホを操作してくれます。上司よりもできる自信があるから迷わず行動できるのです。若手の言う「自信」とは、「どんな人たちともやっていける自信」「自分で稼げる自信」「誰かのためになっているという自信」「家族との時間を優先しても仕事はしっかりできている自信」といえます。
・育てるのではなく育つ仕組み
今の時代に必要とされているのは、部下を細かくあれこれ管理するクロスマネジメントではなく、必要に応じて適切なタイミングで支援(サポート)をおこなうことです。社員が自らの判断で積極的に仕事を進める、「自分」で「走っていける」環境(自走環境)をつくることが大切です。
〇「言わせて、やらせる。」で人は育つ
・自走環境、自走の四つのサイクル
①抜擢:期待をかけられることで自走のスイッチがONになる。
②決断:覚悟を決める。意思決定によって、自らの決断経験を増やしていく。
③失敗:成長には欠かせないもの。必要不可欠なプロセスと理解する。
④学習:失敗を次の経験に活かすための内省。次のステージのために準備する。
・なぜマイクロマネジメントではダメなのか
具体的に「こうしなさい」と上司が部下に指導する、残念ながら、これでは人は育ちません。それどころか、上司からあれこれ言われることで、やる気もどんどん低下し、やがて自分の頭で考えることをやめてしまい、上司に言われるとおりにしか動かない、受け身の人間になってしまいます。マイクロマネジメントは、細かければ細かいほど、部下は思考停止に陥ってしまいます。
一方で、「言わせて、やらせる。」であれば、若手は自分の頭で考えて話しますし、主体的に働きます。この「自分で考えて、自分で動く」という自走環境でサイクルを回していくことで、人はとてつもないスピードで成長します。
・育て上手と育て下手を決定的に分ける差
育て下手な人はダメ出しばかりで自信を削っていきます。「君はこれだけしていればいい」と自分のやり方を押し付ける人も同様。若手は委縮してしまい、これでは自信がつくことはありません。
思いつきや気まぐれで仕事を振るのもNGです。忙しい職場で起こりがちなのは「そういえば、これやって」「あれもお願い」と矢継ぎ早にあれこれ仕事を若手に振ってしまうこと。部下からすれば仕事の全体像が見えず、数をこなしても仕事を理解したという実感がわきません。
では懇切丁寧に事細かにやり方を教えてくれたらどうでしょう、実はこれが最も多い育て下手、若手に教えすぎてしまう上司です。何もかも教わることで、思考停止になってしまい、若手は成長しません。「〇〇さんがいなければ、私はまだまだ何もできない」と劣等感を覚える若手は少なくありません。
育て上手な上司は、若手に自ら考えさせたり経験させたりして、何かあったときだけサポートします。
・若手の成長に意思表明が欠かせない理由
できる根拠もないのに「やります」と言った人が、「やる」。そうすると、だんだんとできるようになる。言ってしまえば、それだけなのです。本人が自ら抜擢を促し(セルフ抜擢)、「自走サイクル」を回しているからです。自分でたくさん決断し、失敗を経験しているので、短期間で爆発的な成長を遂げているのです。最初の一歩である意思表明がいかに大事であるかがわかります。「周囲のサポートや応援が増えること」「周りから認められる」など意思表明のメリットをしっかり伝えることが大切です。
・普段から自分の言葉で話させる
「やっぱりAですよね。〇〇さんはどんなふうに解釈しましたか?」。部下にもう一度言ってもらう。ただこれだけですが、絶大な効果を発揮します。一回問いかけてあげるだけで、脳みそを使うアウトプット作業につながり、受け身だった人も、自然と自分の意見を言うようになり、そこから「こういうことをやってみたいです」といった、意思表明が生まれるのです。私がおすすめするのは「毎日5分の朝ミーティング」です、決まった時間に昨日やった仕事や今日やる仕事について話してもらい、それに対して「それはよかったね」「その動きはいいね」などと、ポジティブに反応すると「見てるよ」サインが伝わり、部下に安心感が生まれます。
・「やりたいです」と言える空気づくり
日々のコミュニケーションを意識的にポジティブなものにしていくことがポイントです。最も大切なのは、いざ本人が「やりたいです」と申し出たら「いいね」とその勇気を称賛することです。失敗しても責しない、失敗で得たものは何か聞く、失敗後に成功した人のストーリーを聞かせる、チームの失敗談を共有する、特に上司が積極的に自分の失敗を話すことは心理的安全性の観点から、とても有効です。
〇抜擢(ばってき)―「期待をかける」と自分から動き出す
・抜擢3原則
1.抜擢は成果を上げるためにおこなう 2.抜擢はすべてのメンバーにおこなえるし、おこなうべき 3.正しいやり方で抜擢すれば人は勝手に成長する。抜擢が足りていないかどうかは自社の抜擢履歴を洗い出してみると良い。(氏名、入社〇年目、抜擢内容、期日、気づき)
・抜擢とは期待をかけること
期待をかけ合うチームは自然と人が育ちます。「あなたはもっと成長できる」「君にこれができると思うから、お願いしたい」「あなたの力が必要だ」期待をかけていることは抜擢セリフで必ず相手に伝えます。
抜擢のミスリードに気を付けるため、若手を抜擢する際には「責任者として抜擢したのだから、立ち振る舞いにはきをつけるように」「周囲の手本となってほしいから、謙虚になってほしい」と勘違いするなとはっきり伝えましょう。
・抜擢前後はほめることで信頼残高を貯める
ほめゼリフの作り方は3つの切り口で考えるとよいです。1.発言の何が良いのか「会議でのあの発言、会社視点で良かったよ」 2.行動の何が良いのか「早い報告だったから、軌道修正が早くできたよ」 3.考え方の何が良いのか「複数の案を持ってきたのは、とても素晴らしいね。」。そして、叱る時もこの3つの切り口は同じです。
〇決断(けつだん)―「決断経験」で大きく成長する
・仕事とは決断の連続
抜擢だけしてあとは放置でもいいのかというとそういうわけにもいきません。抜擢はあくまで「自走サイクル」の起点。それに続く、決断経験をしてもらう必要があります。それは自分で決めると、自分で責任を取るようになり、自分で学びを増やせるからです。
仕事とは決断の連続です。上司からのメールにすぐ返信したほうがいいのか、内容を精査してから返信したほうがいいのか。こういった決断は意外と重要で、どちらを選ぶかで仕事の成果にも大きな差が生まれます。
ここで一番よくないのは、決断しないことです。決断に時間をかける人が一回決断する間に、5回、10回と多くの決断をおこなっている人もいるのです。それゆえ、抜擢した後は、部下自身に決断経験をしてもらい、その際にスピードを重視し、短時間で数多くの決断をおこなうよう促します。そのスピードを評価するため「すぐに行動に移したのはいいですね」「軌道修正が早くできてよかった」などのほめゼリフを使います。
・週1の振り返り面談で内省を強化
次の決断をより良質なものとするためにも内省は欠かせませんので、おすすめが定期的にメンバーと面談やミーティングを設けて、決断経験をしっかり積み上げているかを一緒に確認することです。決断経験を振り返り、そこから得た気づきを聞きます。決断経験を意識的におこなうことで気づきと学びを得て、さらに次の決断に活かすことができる。決断経験の量をおのずと増やすことができるだけでなく、「この1週間でたくさんの経験と学びを得た」と自身の成長も実感できる、まさしく一石三鳥です。
〇失敗(しっぱい)―「成長のプロセス」ととらえる
・失敗がなければ成長もない
誰しも失敗はしたくないものですが、ほとんどのチャレンジには失敗がつきものです。失敗はするものです。これが「自走サイクル」の中に失敗が組み込まれている理由です。ビジネスにおいてはなおさらで、一度も失敗せずに成功したという経営者の話は聞いたことがありません。むしろ、成長企業の経営者は最初から失敗ありきで物事を考えています。「失敗は成功の母」というように、一つひとつの失敗は成功するために不可欠な要素です。
・決断も失敗するのが当たり前
メンバーの決断もまた、失敗するのが当たり前です。経験が浅いメンバーは特に失敗を恐れやすく、決断に余計な時間をかけてしまいます。そうなると当然、決断のサイクルを回すまでにも時間がかかり、決断の質はいつまでも上がらないままです。ですので、事前に「失敗をしてもいいんだ」というメッセージを伝えましょう。おすすめは対話の中でシミュレーションをさせることです。マネジャーは答えやアドバイスを告げるのではなく、質問を投げかけます。「Aという方法でやってみた場合、どんな状況が起こりうるかな?」「Aの方法でやってみた場合の、流れをシミュレーションしてみよう」
決断の失敗で責任を取る必要はありません。その代わりに「自走サイクル」の失敗の次のステップである「学習」に進めばいいのです。若手社員に望むことは成功でも失敗でもなく、成長です。
・挑戦した敗者にこそセカンドチャンスを与える
失敗を経験した人は、次に活躍する可能性が非常に高い人でもあります。「失敗→認識→内省」という失敗サイクルを回すことで、失敗経験を経験値に格上げすることができます。
「取り返しのつかないような失敗をしてしまった」と自信を完全に失ってしまうのは問題です。そこで、「抜擢された人が挑戦に失敗してもやり直せる」というセーフティネットを張っておく必要があります。具体的には「セカンドチャンスを与える」ことです。言葉にすることで、セカンドチャンスは会社と社員の約束になります。言葉にしておかないと、「本当にまたチャンスをもらえるのかな?」と疑心暗鬼になり、抜擢された人は決断することを恐れてしまうでしょう。セカンドチャンスの約束をしていなければ、文化や風土にはなりえません。社長の藤田は「失敗者は、挑戦した結果で失敗しているから、ちゃんとねぎらってね」と折に触れて私に話します。私は「ねぎらい面談」を活用します。撤退したプロジェクトのリーダーは、みんな、くやしそな顔をします。そのようなリーダーには、1.「お疲れ様でした」とねぎらいの言葉をかけます。そして2.「チャレンジしてくれて本当にありがとう」と、チャレンジしたことに対する感謝を伝えます。その後に振り返りと未来へのお話をします。
〇学習(がくしゅう)―課題を見つけて次の抜擢につなげる
・学習のための面談は「相手の話を9割聞く」でちょうどいい
「自分で育つ、自走人間をつくる」ことが目的ですので、相手の話を聞き切りましょう。上司である自分のほうが経験は豊富だからと、ついアドバイスをしたくなってしまう気持ちはわかりますが、「学習」の基本は「内省」ですので、上司がおこなうのは質問を投げかけることだけです。本人の口から失敗の理由が語られ、「こうすべきだった」という反省もある。ここまで理解していれば、次に同じ失敗を繰り返す可能性が低いことは、話を聞いただけで十分わかったと思います。上司が先回りして「〇〇すべきだったね」などと言う必要はないのです。答えは本人の中に必ずあるからです。学習とは、自ら答えを導き出す過程そのもの。そこにアドバイスなどいりません。また面談では、本人が素直に自分のことを語ることに意味があります。「今回の失敗は、Aさんにとって、どんな意味があると思いますか」と今回の失敗の意味を聞く、そして「今の自分が、1年前に戻るとしたら、何をやりますか?」と後から成長した自分がタイムマシンに乗って1年前に戻ったら、どのような決断をするか、自分への指導を考えてもらう、ことも有効です。
・良い面談には次の「抜擢」がある
面談は、必ず若手の学習を助ける場として活用できますが、陥りがちなのが過去ばかり話してしまうことです。もちろん「良かった・悪かった」を見ることは問題ありません。しかし、それ以上に大事なのは、未来を話すことです。明るい未来が見えてくれば、自然と期待感は高まりますので、面談では期待をセットで伝え、一緒に未来を考えましょう。人は期待されると、前向きになりがんばれます。がんばると結果を出せるようになり、成長していきます。このサイクルで、人はどんどん成長していきます。
次の抜擢を考える際にぜひやっていただきたのが「大化けイメトレ」です。10年後にどんな人になっているか、大成功しているとしたらどうなっているか、世界で有名になっているとしたら、どう紹介されるか。こうした質問を投げかけ、未来の大きな可能性を、面談を通じて部下と一緒に探りましょう。目標を明るい未来につなげていき、その目標により本人が自走できるようにしていきましょう。
・「抜擢カルチャー」を社内に浸透させる
伸びるポストをみんなで探して、そこにもっと人を充てていく。本人の強み×伸びる仕事=大きな成果。ポジションありきで、人をアップして、動かしていくことが大切です。なぜなら、人ありきで抜擢を考えすぎてしまうと、どうしても「今ある伸びないポストに人を充ててしまう」というリスクがあるからです。私たちは「抜擢は足りているか」を常に気にしていますが、人の成長だけに気を取られてしまうと、会社の成長・成果がおろそかになってしまう恐れもあります。「抜擢」が組織に活力を与え、人材育成の可能性をさらに高め、経営にも「大きな成果」という形でインパクトを与えるものであると、強く実感しています。「抜擢」を全社員に浸透させたい、「言わせて、やらせる」を個々人でも実践してほしいという願いから、「抜擢のしくみ」ではなく、あえて「抜擢カルチャー」という言い方をして、普段から自然と誰もが取り入れていくものと話しています。
  • user 内田
  • time 2022年9月3日
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レビュー『メンタルが強い税理士にどうなればなれますか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンタルが強い税理士にどうなればなれますか?』 飯田真弓 中央経済社

 

第1章 税務調査がしんどい

・新規の顧問先が税務調査に選ばれてしまった!
「税理士事務所をおたくに変えたら、そのタイミングで税務調査が来るってどういうことなんですか」って言われてしまいました、というご相談。税理士事務所をよく変える経営者は何らかの問題を抱えていることが多く、調査にも選ばれやすいのです。税務調査の前にゆっくりとこれまでの経緯を聞き取りするリハーサルの時間を取りましょう。実際に調査を行う場所で、事務所側から調査官の目で質問をして、お客様の人生を聞いて距離感がグッと縮まることにもなります。また、調査官の過去の勤務先や上司の系統も先に調べておくと有効です。
・調査官とのやりとりが難しい
ほとんどの場合は調査官の言葉遣いな丁寧です。でも、その内容は核心を突いています。お客様の調査で一番避けたいのは現況調査、ガサガサと会社の中を家探しされるのって誰だって嫌だと思うのです。なので、それを始めようという言動を始めたら良いタイミングで助け舟を出しましょう。「私どもの方で確認して、後日に書面で回答をさせていただきますので、現況調査は勘弁いただけませんか。」
修正金額についても、調査官から増差所得内訳書として出してくる金額がありますが、グレーを黒として出してくるケースも多く、事務所側で試算をしてお客様に寄り添った気持ちで調査官と交渉することが大切です。「今後は私どもの方で、しっかり指導させていただきますので、今回の調査ではこの位の金額にしていただけないでしょうか。」

 

第2章 事務所の人間関係がしんどい

・面倒な作業を押し付けるパートのおばさん
自分は税理士の官報合格をしているのに、同じ事務所のパートさんが領収書を張り付ける作業を振ってくる、という相談。
でも下積み仕事は心がけ次第で成果が大きく変わります。調理師免許を取って就職したが皿洗いばかりやらされて、いやいやお皿を洗いながら日々過ごすのか、それともお皿に少し残ったソースを舐めて料理長の秘伝の味を研究するのか、という違いに似ています。
相談にあった領収書貼りの領収書には、必ず何らかのストーリーがあるはずです、与えられた仕事を単に領収書を貼り付けるだけの仕事と思うのか、それとも経営者の人となりを想像するピースを組み立て再現していると思うのか、同じ作業でも、取り組む姿勢が違うと、その先に見えるものは全く違ってきます。

・事務所の合併で何となく雰囲気が悪い
二つの事務所を合併して税理士法人としたが、合併前別の職員同士の仲が悪くて、雰囲気が悪い、という相談。
何がいけないのか。職場の雰囲気をよくしたいと思う経営者は原因探しをしようとされるのですが、それは問題の解決にはなりません。まずは、それぞれの職員がどんな人なのか、お互いに知ることからはじめてみましょう。
所長などの上の人による面談は、あまり意味がありません。「今の仕事に特に不満はないですし、特に何も言う事はありません」と、当たり障りのないことを言って終わります。個別の面談は、傾聴力に長けたプロのカウンセラーに依頼するのが賢明です。
合併はトップ同士が合意し何も文句は無いだろうと思っていても、環境が変わることへのストレスがあります。言葉を交わさなくても、お互いのことがわかりあえるレクリエーションがおすすめです。

 

第3章 顧問先の経営者とのやりとりがしんどい

・ネット情報を鵜呑みにして、無理難題を言う
経営者の間では、いまだに、税務調査について、まことしやかに都市伝説のようなことが言われ続けているようです。そういったお客様には「ネットの上で、匿名のブログや、税理士の資格を持っていないのに、税務コンサルト名乗っているような人の話を鵜呑みにしてはいけませんよ」と忠告してあげることも必要かなと思います。
溢れすぎている情報を取捨選択して、適切な情報をお客様にお伝えすることも税理士の大切な仕事です。
お客様が求めているものは何なのか。そこのところを常に追求していけば、「無理」と思わず、今の状態で提供できるサービスを見つけることが出来ると思います。

・アドバイスをくれないから解約すると脅す
経営者は数字の組み立てを主な仕事とする税理士にアドバイスをしてほしいと本気で思っているのでしょうか。
アドバイスって何なん?ってことです。
私はカウンセリングをする際、「お話を聴かせていただくことはするけれど、具体的なアドバイスはあまりしませんが、それでも宜しいですか?」と念を押してからお話を聴くようにしています。
いざお話を伺ってみると、私から具体的なアドバイスがなくとも、お話をされるうちに、ご自身で具体的な解決の糸口を掴んで帰っていかれることがほとんどなのです。
すなわち、お客様は最初からご自身の中に答えを持っておられて、自分の気持ちを確認して整理したいということです。
話を聞くときに「聴かせていただく」というスタンスで、お客様の気持ちに寄り添うようにして、聴くことがポイントです。

  • user 内田
  • time 2022年8月20日
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レビュー『How Google Works~私たちの働き方とマネジメント~』3/3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

How Google Works~私たちの働き方とマネジメント~』 日経ビジネス人文庫 エリック・シュミット

あのGoogleの元CEO エリック・シュミットの著作という事で興味深く読みました。(3回に分けての投稿の3回目)

 

●コミュニケーション(とびきり高性能のルータになれ)
・こんにち最も成功を収めている経営者は、情報を囲い込んだりせず共有し、デフォルト状態を「オープン」な形として、失敗を恐れず高い目標を設定し、疑問を感じたら周囲と話し合えばいい。
・Googleでは取締役会の資料も全従業員と共有し、個々の社員の目標(OKR)もイントラネットで公開し、経営者も率先して目標について語る。
・リーダーに一番重要なのは悪い知らせであり(悪い知らせは日を追うごとに悪くなるため)、部下が身の危険を感じること無くトップに厳しい質問をできる環境を作っておくことが大切なのだ。(Googleではドリーというシステムで経営者がスクリーンに表示される質問を上から順番に答えなければならない。)
・会話はいまでも最も重要かつ効果的な手段でありそのきっかけを作るべきであり、Google屈指のリーダー-マリッサ・メイヤーも週に数時間の枠を設け、自分に話がある人は自由に訪ねて来られるようにした。
・リーダーは常に「コミュニケーション過剰」であるべきだ。仕事に限った話ではないが、何かを人に伝えたいと思ったら、たいてい二十回は繰り返す必要があり、数回言うだけでは、みんな忙しすぎておそらく気づかないだろう。
・経営陣にはたいてい好奇心が足りない。目の前の仕事をこなすことだけに集中して、コミュニケーションもなるべくビジネスライクに済ませようとする。だが優秀な社員(スマート・クリエイティブ)というのは興味の幅が広いので、あなたが伝えようとしてきたテーマにかかわる興味深い記事があれば自身の考えを入れて、正直かつ謙虚にシェアをしよう。
・取締役会の目的は、調和、透明性、助言である。取締役にはすべてを包み隠さず伝えなければならない。また(たとえ無視するつもりでも)取締役の助言には真摯に耳を傾けよう。一番好ましいのは、とにかく正直に情報を伝えることだ。取締役会では事務連絡で時間をつぶしたほうが経営者としては気が楽だが、ガバナンスや訴訟問題より、戦略やプロダクトを議論すべきである。
・インターネットの世紀で成功するベンチャー企業の定常状態はカオスであり、事業は常に業務プロセスを上回るスピードで進化しなければならない。そしてカオスのなかで必要な業務を成し遂げる唯一の手段は「人間関係」だ。社員と知り合い、関係を深めるのに時間をかけ、配偶者や子供の名前、重要な家族の問題といった細かな情報を覚えておこう。周囲を笑顔にすることも忘れずに。

●イノベーション(原始スープを生み出せ)
・イノベーションとは新しく意外性があり、劇的に有用なものでなければならない。Googleは毎年、検索エンジンに500件もの改良を加えていて、一つ一つが劇的に有用でなくても全体としてはそうなるので、それ自体一つでとびきり斬新でなくてもイノベーションになるという考え方は大切である。
・イノベーティブであろうとする企業は、まず創造に必要な多様な要素が自由自在に、これまでにない面白い形で衝突しあう環境、つまり種の起源で言う原始スープを生み出そう。また、そこから誕生したものが進化して生き残る時間と自由を与えよう。そしてCEOがCIO(最高イノベーション責任者)になる必要がある。
・新たなムーブメントを起こそうとするとき、最も重要なのは最初のフォロワーを獲得することであり、業務や地域の壁を超えて、全体に浸透させなければならない。新しいアイデアを思いつくだけの頭の良さと、それがうまくいくはずだと考えるだけの楽観主義を持ち合わせた人材を採用しよう。
・発想は大きく。その明らかなメリットは、それによってスマート・クリエイティブがはるかに自由になりやる気を奮い立たせ、制約がなくなる。また大きな賭けをするほど、(会社として失敗が許されなくなるため)成功のチャンスが大きくなる。反対に、どれも命とりにならないような小さな賭けをたくさんすると、凡庸なモノしか生まれない。
・優れた目標の特徴は、測定できること、発想を大きくと密接なかかわりがあり、全員が実践し、自分のパフォーマンスを評価でき、特別力を入れるべき分野ついてチームとして書かれている。
・Googleにはリソースの70%をコアビジネスに、20%を成長プロダクトに、10%を新規プロジェクトに充てる「70対20対10のルール」がある。イノベーションを奨励するときに一番やってはいけないのは時間や資金を与えすぎることである。
・Googleの20%ルール、それはエンジニアが仕事の20%を好きなプロジェクトに使うことを認める制度であり、専制的なマネジャーに対する牽制であり、社員に本来の業務以外に取り組むことを認める手段である。スティーブ・ジョブズの名言「ヒエラルキーではなく、アイデアによって経営すべきだ」を実践するのに役立つ。またGoogleでこの制度を実施してわかったのは、社員を信頼して自由を与えると、贅沢で実現性のないプロジェクトに時間を浪費するような者はほとんど出てこないということ。そして、このルールの最も重要な成果は、そこから生まれる新プロジェクトや新機能ではなく新しい試みに挑戦する経験を通じて、社員が学ぶことだ。

●おわりに(想像を超えるものを想像しよう)
・私たちは大いなる希望に満ちた時代に生きているが、同時に大いなる不安の時代でもあり、それはテレビ会社の経営者に限った話ではない。従来型企業は、選択を迫られているようだ。
・従来型企業には一つの選択肢がある。プラットフォームを活用し、最高のプロダクトを生み出し続けるような戦略を立てるのだ。その戦略をテコにスマート・クリエイティブを集め、彼らがとほうもないスケールで成功できるような環境を生み出せばいい。

  • user 内田
  • time 2022年8月6日
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