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【本】レビュー『心配性な人はうまくいく』

 

 

 

 

 

 

 

 

心配性な人はうまくいく』菅原道仁 三笠書房

エヌビディア創業者のジェンスン・フアン氏が自らを動かす最大の原動力を「成功への野心ではなく、失敗への恐怖(心配性)」であると語るエピソードは、ビジネス界でも有名。
過去に3度も破産寸前の危機を乗り越えてきた経験から、毎朝「あと30日で我が社は倒産するかもしれない」という感覚で目覚めると公言しています。そして現在も週7日、1日15時間働くという鉄血のスケジュールをこなしています。 周囲から「なぜそこまで働くのか」と問われた際、彼は率直にこう答えています。「エヌビディアが倒産することを心配するあまり、常に不安状態が続いているからだ。警戒を怠らないための簡単な方法などない。常に注意を払い続けるしかないんだ。この「心配だからこそ、自分の目で全てを把握していないと気が済まない」という性質は組織運営にも表れており、彼は中間管理職のフィルターを嫌い、今でも50人以上の直属の部下を持って直接状況を把握しています。

ただジェンスン・ファンのように、心配や不安がよい結果ばかりをもたらすわけではありません。心配で何も手につかない、不安で一歩を踏み出せないという「停滞」を引き起こすからです。だから、本書ではその心配や不安が引き起こす「停滞」から、自分を上手に開放し、心配や不安がもたらすポジティブな部分だけを上手に活用するコツを提示しております。不安なときこそ情報に触れない。不安なときは不安なことしか目につかず、情報というのはそういうふうに集まってくるものなので心配性で悩んでいる人が調べれば調べるほど、不安が雪だるま式に膨らむのは当然です。

「チャレンジしてもうまくいないだろう」という考え方が習慣化してしまっている人は、不安なときほど、いつも同じ行動・思考パターンで停滞します。行動がワンパターン化しているのです。停滞を脱するための行動を変えるといっても難しく考える必要はなく、例えば、こんなことで日常の習慣化している行動を変えてみましょう
・普段は見ないテレビ番組やネット動画を観てみる
・いつもとは違う道を使って帰宅してみる
・利き手と逆の手で歯を磨いてみる
・スマホの待ち受けを変えてみる
・コンビニでいつも買うものとは違うお菓子や飲み物を選んでみる

パニックに陥らない方法の一つが「回答をいったん保留する」ことです。相手には「スケジュールを確認するので、ちょっと待って」と伝えて、余裕があれば一晩以上、余裕がなければ1時間程度でも構わないので、回答をもらい、とにかく即レスをやめるのです。「すぐに返事をしなければ」というプレッシャーから自由になれば、冷静に自分の状況を見つめなおすことができます。その場では「これはいいかも」と思える提案でも、あとになって冷静に考えてみると「あれ、こちらに不利だな」という場合もあります。ですからどんなお話でも時間が許すなら、ひとまず回答を保留するようにしましょう。

色々な方法を試してみても、不安な気持ちがなかなか消えない場合は体調に問題がある可能性があり、こういうときはとにかく無理をせず、できるだけ休憩をとる、これに尽きます。ゆっくりと湯船につかってリラックスする、運動をして筋肉のコリをほぐす、専門機関を受診して痛みの原因に対処するなど、体のケアをしてみましょう。慢性的なストレスを抱え続けると、無意識のうちに「こんなにつらいのはなぜだろう。誰のせいだ」と原因を他人の中に探してしまうことがあります。必要以上に誰かを攻めたくなっている自分に気づいたら「体の不調のせいかもしれない」と考えることも必要です。

自分はいつかは死ぬことを覚えておくこと。それが、自分には失うものがあるという思考の罠に陥らないようにするための最良の方法である」こう語ったのは、アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズです。心配性な面を持っていた彼は、常に死を意識していました。「いつかは死ぬんだから、些末なことに囚われて迷っている時間はない」といつも感じていたからこそ、迷いのない決断ができのたでしょう。私の知人の会社経営者の方が言っていたのですが、その方は残りの人生であと何回夕食を食べられるかを計算したうえで、誰と一緒に夕食を食べられるかを決めているそうです。限りある時間を、自分にとって大切な人と過ごしたい。そのことを日々念頭に置くだけで、人生に対する感じ方がずいぶんと変わるのではないでしょうか。

心配性とは、決して克服すべき欠点ではありません。それは、未来をまっすぐに見つめようとする者だけが持つ、世界で最も繊細なセンサーです。これからの時代、求められるのはもはや、問題を楽観という名の蓋で覆い隠す力ではありません。気候、テクノロジー、人間関係、私たちが直面する課題は、明るく笑い飛ばせば済むほど単純なものではなくなりました。今、真に必要とされているのは、かすかなほころびに気づき、問題を定義し、解きほぐしていく力です。ポジティブシンキングは、ときに庭に咲いた雑草だを花だと言い張ります。けれど、雑草を認め、それを取り除かなければ、本当に咲かせたい花が根を張る場所はありません。心配性の人は、誰よりも早くその雑草に気づき、土を耕せる人です。だから私は、確信を持って伝えたい。心配性とは、これからの世界を生き抜くための最高の才能なのだと。

ただし、心配だけでは、人生という船は港から出られません。リスクを丁寧に数え上げ、緻密な地図を握りしめたまま、震えながら一歩を刻む、それが「アグレッシブ・ネガティブ」怯えながら、それでも進む人。震えながら、それでも筆を握る人。彼らこそが、歴史を、そして自らの運命を推し進めてきた本当の主人公なのです。

  • user 内田
  • time 2026年8月8日
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